離婚問題を行政書士に依頼するとどうなる? 弁護士との違いとは?
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離婚問題について、法律家のサポートを受けたい場合には、どのような業種に依頼すべきでしょうか。
法律問題なので、まずは弁護士が挙げられますが、法律を扱う士業はほかにもあります。
行政書士も、離婚問題を扱っている場合がありますが、弁護士に依頼する場合と比較して、どのような違いがあるかご存じでしょうか?
日本行政書士会連合会によると、令和3年4月1日現在、栃木県には、871人の個人行政書士と、10の行政書士法人があります。
今回は弁護士と行政書士の違いを、離婚問題を中心に解説します。
1、行政書士とは
行政書士とは、行政書士法に基づく国家資格者です。行政書士は、官公署に提出する、許認可などの申請書類の作成・提出手続きの代理、遺言書などの権利義務、事実証明および契約書の作成、行政不服申し立ての手続き代理などを行っています。
行政書士の業務は、以下の通りです。
●官公署に提出する書類の作成や手続きを代行する
官公署(各省庁、都道府県庁、市役所、区役所、町役場、警察署など)に提出する書類の作成や、これらの書類を官公署に提出する手続きの代行をします。その書類の大部分は許認可などに関するものです。
●権利義務に関する書類の作成
権利義務に関する書類とは、ある権利を発生させたり、消滅させたり、変更したい、という意思表示をする文書のことです。
権利義務に関する書類の例としては、契約書(贈与、売買、使用貸借、消費貸借、雇用、請負、委任、和解など)、念書、示談書、遺産分割協議書、内容証明、告発状、定款などがあります。
●事実証明に関する書類の作成
事実証明に関する文書とは、社会生活において、交渉をする場合に、その事項を証明するための文書のことです。
事実証明に関する書類の例としては、実地調査に基づく各種図面や各種議事録、会計帳簿、貸借対照表などがあります。
●書類作成に関する相談業務
行政書士は、上記各書類の作成とその代行だけでなく、書類作成についての相談に応じることもできます。また、書類作成の相談以外にも、会社の経営や法務相談、コンサルティング業務なども行うことがあります。
2、行政書士に離婚問題解決を依頼するデメリット
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(1)弁護士と行政書士の一般的な違い
弁護士の職務については、弁護士法に次のように定められています。
(弁護士の職務)
第3条 弁護士は、当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱によつて、訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務を行うことを職務とする。
2 弁護士は、当然、弁理士及び税理士の事務を行うことができる。
すなわち、弁護士は、訴訟事件、審査請求やその他の一般の法律事務という、法律的な仕事の全般を扱うことができ、その権限についての制限はありません。
他方で、行政書士については、先にご紹介したとおり、書類作成業務が中心的な業務となります。 -
(2)離婚問題に関する弁護士と行政書士の違い
●協議離婚の場合
協議離婚を行う場合、弁護士は、ご依頼者の方からの相談を聞いたうえで、相手方との交渉を行い、離婚協議書の作成などを行うことができます。
行政書士も、離婚協議書の作成や、そのための相談を行うことができます。しかし、行政書士は、相手方との交渉権限を持ちませんので、離婚協議書にどのような内容を記載するかということについて、ご自身で相手方との合意を形成しなけなければならないことになります。
また、行政書士は、ご依頼者の希望に沿った事項を離婚協議書に記載することができますが、高度な法律的な判断が含まれる離婚協議書の作成や、そのための法律相談を行うことができません。したがって、合意の内容の決定や、合意そのものの形成については、当事者が行わなければなりません。一般的に、行政書士が「代書屋」と呼ばれる理由は、この点にあります。離婚協議書は、その後長きにわたって影響を及ぼす文書となりますので、弁護士による高度な法律的な判断に基づいた、適切な助言を受けておくことをおすすめします。
●調停離婚、裁判離婚の場合
行政書士は、離婚調停の申立書や、離婚訴訟の訴状の作成、そのための法律相談を行うことはできません。当然、調停や訴訟において、代理人として手続きを進めることもできません。
これに対し、弁護士は、離婚調停、離婚訴訟のいずれについても書類作成、期日への出頭を含む法律事務に関する代理行為全般を行うことができます。
3、離婚の流れ
離婚手続きを弁護士に依頼した場合、大きく3つのステップに分けて進めていくことになります。
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(1)相手方との交渉
弁護士が、ご依頼者の方から離婚について依頼を受けた場合、まず、相手方にその旨を内容証明郵便などで通知し、今後は弁護士がやりとりの窓口となることを伝えます。
弁護士から、相手方に対してご依頼者の方が希望する離婚条件(親権や財産分与など)を伝え、相手方と協議を行います。
このように、弁護士が相手方とやりとりをしますので、ご依頼者の方が相手方と直接やりとりする必要はありません。そのため、相手方とやりとりすること自体がストレスになっている方や、自分で話をすると相手方に言いくるめられてしまいそうで不安という方も、心配する必要はありません。
弁護士が相手方と交渉を行い、離婚条件についてお互い合意ができた場合、交渉成立となり、その離婚条件で離婚することになります。決まった離婚条件については、離婚協議書や公正証書にしておくことになります。
交渉で離婚条件について合意に至らなかった場合には、次のステップである「離婚調停」を申し立てることになります。 -
(2)離婚調停
離婚調停(夫婦関係調整調停)とは、家庭裁判所で行う、離婚に関しての話し合いの手続きです。
話し合いといっても、依頼者の方と相手方が直接話すわけではありません。家庭裁判所の職員である調停委員を通じて、相手方にご依頼者の言い分を伝えるとともに、相手方からの言い分を伝え聞きます。
離婚調停では、離婚そのものだけでなく、親権者のことや、親権者とならない親と子どもの面会交流のこと、養育費のこと、財産分与や年金分割のこと、慰謝料をどうするかなど、離婚条件についても話し合うことができます。
離婚調停当日には、もちろん弁護士もご依頼者と同席します。そのため、自分の主張を法律上どのように裏付ければいいのかわからない、調停委員に自分の言い分をうまく伝えられない、調停なんて初めてでひとりでは不安という方であっても、安心して調停にのぞむことができます。
しかも、調停委員によっては、事情を詳しく知るために口頭ではなく、文書で事情説明をするよう求められたり、主張を裏付ける証拠を提出するよう求められたりすることもあります。争いに巻き込まれて、ただでさえ心中穏やかではない当事者が、証拠や文書を提出することは、大変な労力を伴います。弁護士は、このような手続きも当事者の代わりに行いますから、裁判手続を利用する場合は、弁護士に依頼する方が、はるかに合理的でしょう。
調停では、当事者双方が離婚することおよび離婚条件に合意すれば、調停成立となります。その後、役所に対して離婚届を提出することになります。調停によって離婚することを、調停離婚といいます。
他方、相手方が調停に出席しない場合や、出席しても離婚に応じない場合、離婚条件が整わない場合は、調停は不成立となり、終了します。この場合に離婚を請求するためには、次は離婚訴訟を提起する必要があります。 -
(3)離婚訴訟
離婚調停が不成立に終わってしまった場合には、次は離婚訴訟において、離婚を請求していくことになります。なお、離婚訴訟は、原則として、離婚調停を経た後でなければ、提起することができません。これを、調停前置主義といいます。
裁判上で離婚が認められるための要件は、民法に定められています。(裁判上の離婚)
第770条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
- 一 配偶者に不貞な行為があったとき。
- 二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
- 三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
- 四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
- 五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2 裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。
上記のとおり法律に定められている、離婚が認められる事由を「離婚原因」といいます。離婚訴訟では、この離婚原因が存在することを、離婚を求める側が立証していくことになります。
また、養育費や財産分与などの離婚条件についても、付随的請求として裁判の中で争うことになりますので、これらについても主張立証を重ねていきます。
裁判の場合にも弁護士さえ出頭すれば、尋問の場合などを除いては手続きを進められますので、出頭の負担はあまり存在しません。また、裁判は高度な法律知識と実務経験が必要となりますが、弁護士に依頼しておけば、ご依頼者の方にとって初めての裁判であっても、きちんと対応することができます。
4、弁護士に離婚問題解決を依頼するメリット
弁護士は、全般的に法律事務を扱うことができるので、離婚問題に関する手続きについても全面的にサポートを受けられます。また、弁護士が相手方との間に介入しますので、ご自身で相手方と話す必要がなくなるというのも大きなメリットです。
他方で、行政書士は、書類の作成業務はできるものの、それまでの合意に至る過程については本人が行うしかなく、相手方への交渉も含めて自力で行わなければならないことになります。
また、協議離婚が整わず、調停などに移行する場合には依頼することができないので、結局、弁護士を探さなければならないということにもなりかねません。
弁護士と行政書士は、扱う分野に重なりがあるものの、得意とする分野がそれぞれことなります。離婚問題については、広範なサポートが受けられる弁護士のほうがふさわしい場面が多いといえるでしょう。
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