支払い督促とは何か? デメリットはあるのか。弁護士が解説
- 支払督促
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裁判所が公表している司法統計によると、令和2年度において簡易裁判所で支払督促が発布された債務者数は、22万4582人でした。この統計からは、債権回収の手段として多くの方が支払督促という方法を利用していることがわかります。
人に貸したお金が返ってこないという場合には、法的手段として訴訟を検討する方も多いでしょう。しかし、訴訟手続きは、解決するまでに相当な期間を要することになりますので、訴訟手続きに踏み切ることをためらう方も少なくありません。このような場合には、支払督促を利用することによって、訴訟手続きよりも簡易かつ迅速に債権回収を実現することができる場合があります。
今回は、支払督促の利用方法やデメリットなどについて、ベリーベスト法律事務所 宇都宮オフィスの弁護士が解説します。
1、支払督促とは
支払督促とはどのような手続きのことをいうのでしょうか。以下では、支払督促の概要と支払督促のメリットについて説明します。
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(1)支払督促の概要
支払督促とは、金銭の支払い、有価証券・代替物の引き渡しを求める場合に限って、利用できる手続きです。
債権者の申立てに基づき、簡易裁判所にいる書記官が債務者に対して金銭の支払いなどを命令する制度であり、仮執行宣言付きの支払督促は判決と同様に強制執行をすることが可能になります。
支払督促の手続きには、支払いを求める金額の上限はありませんが、債務者から支払督促に対する異議が申立てられた場合には、支払督促の手続きは訴訟手続きに移行します。その場合には、訴額が140万円を超えているときは地方裁判所の訴訟手続きへ、訴額が140万円以下のときは簡易裁判所の訴訟手続きにうつることになります。 -
(2)支払督促のメリット
支払督促の手続きを利用すると、以下のようなメリットがあります。
① 裁判所に出向く必要がない
裁判所の手続きというと裁判所の法廷で原告と被告が向かい合って手続きを進めることを想像する方が多いかと思います。しかし、支払督促は、簡易裁判所の書記官による書類審査だけで金銭の支払い等を命じてもらうことができますので、訴訟手続きのように、当事者が審理のために裁判所に出頭する必要はありません。そのため、申立てから支払督促の送達まで非常にスピーディーに進みます。
また、自己の主張を立証するために証拠を提出しなければならない、ということもありませんので、非常に簡単な手続きだといえます。
② 手数料が通常の訴訟手続きの半分
通常の訴訟手続きでは、請求額(訴額)に応じて裁判所に手数料として印紙を納めなければなりません。たとえば、100万円の支払いを求める訴訟を提起する場合には、1万円の印紙を納めなければなりません。しかし、支払督促の場合には、裁判所に納める手数料が半分になりますので、上記の例では、債権者が負担しなければならない手数料は5000円で済むことになります。
金銭面での負担も少ないことが支払督促のメリットです。
③ 判決と同様に強制執行が可能
債務者が支払督促を受け取ってから2週間以内に異議を出さなければ、債権者は、支払督促に仮執行宣言を付すことを申立てることができます。仮執行宣言付きの支払督促に対しても同じく2週間以内に債務者から異議が出なければ、判決と同様に強制執行手続きを行うことができる状態となります。
迅速かつ簡単な手続きによって訴訟手続きによる判決と同様の効果を得ることができるというのが支払督促のメリットだといえます。
お金を貸しているにもかかわらず、貸した相手が「そのうち支払う」などと言って、なかなか支払ってもらえない場合には、支払督促を検討してみるとよいでしょう。
2、手続きの流れを解説
支払督促を利用する場合には、以下のような流れで進んでいきます。
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(1)支払督促の申立て
支払督促の手続きを利用する場合には、債務者の住まいがある土地を管轄する簡易裁判所に「支払督促申立書」という書面を提出します。支払督促申立書の用紙は、簡易裁判所の窓口に備え付けてありますし、裁判所のホームページ上からもダウンロードして利用することができます。
提出方法は、直接窓口に提出する方法だけでなく郵送などによる提出も可能ですので、一度も裁判所に行くことなく、手続きを完了させることもできます。 -
(2)書記官による書面審査、支払督促の送達
支払督促の申立書が提出されると、簡易裁判所の書記官が申立書の内容を審査します。記載の不備等の問題がなければ、書記官が支払督促を債務者に送達します。
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(3)仮執行宣言の申立て
債務者が支払督促を受け取った日から2週間以内に異議の申立てをしない場合には、債権者は、異議申立て期間である2週間を経過した日から30日を経過する前に、簡易裁判所に仮執行宣言の申立てが可能です。
仮執行宣言の申立てには、手数料の納付は不要ですが、送達のための郵便切手の納付が必要になります。 -
(4)仮執行宣言
仮執行宣言の申立てがなされると、簡易裁判所にいる書記官が仮執行宣言の申立ての内容を審査します。申立ての内容に問題がなければ、書記官が仮執行宣言付支払督促を債務者に送達します。
債務者が、仮執行宣言付支払督促を受け取った日から、2週間の間に異議の申立てをしなければ、仮執行宣言付支払督促は確定します。これにより、債務者の財産を対象として強制執行をすることが可能になります。
3、支払督促を検討する際のポイント。そのほかの債権回収方法
支払督促を申し立てるにあたって注意すべき事項もありますので、そのほかの債権回収方法も踏まえて手続きの利用を検討する必要があります。以下では、支払督促の注意事項とそのほかの債権回収方法について説明します。
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(1)支払督促の注意事項
支払督促は、通常の訴訟手続きに比べて簡易かつ迅速に行うことができるというメリットがありますが、以下の事項を踏まえて慎重に判断するようにしましょう。
① 債務者からの督促異議によって通常訴訟に移行する
支払督促は、簡単に早く債権回収ができる手段ですが、それは債務者から異議が出ないことが前提となります。債務者から支払督促に対して異議の申立てがあった場合には、支払督促は失効し、通常の訴訟手続きに移行します。
異議の申立ては、支払督促を受け取った日から2週間以内に異議があるという旨の書面を提出するだけでできてしまいます。
異議の申立てには特に理由は必要ありませんので、債務者の態度次第では、簡単に通常訴訟に移行してしまいます。債権の存在や金額に少しでも争いがある場合には、債務者から異議が出ることが予想されますので、争いのない事案か検討すると良いでしょう。
② 通常訴訟に移行すると管轄裁判所を選べない
支払督促は、債務者の住まいがある土地を管轄する簡易裁判所に申立てをすることで始まります。支払督促から通常訴訟に移行する場合には、同様に債務者の住所地を管轄する簡易裁判所または地方裁判所が管轄裁判所となります。そのため、債務者の住所によっては、債権者が遠方の裁判所に出廷しなければならない、という負担が生じます。
当初から、通常訴訟を提起していれば、債権者の住所地を管轄する裁判所に対して訴訟を提起することができますので、管轄裁判所を選ぶことができない、ということは支払督促のデメリットとして挙げられます。 -
(2)そのほかの債権回収方法
支払督促以外の債権回収方法としては、以下のものが挙げられます。ご自身の状況に合わせて、最適な方法を選びましょう。
① 少額訴訟
少額訴訟とは、60万円以下の金銭の支払いを請求する場合に限り、利用することができる簡易裁判所の手続きです。
少額訴訟は、通常の訴訟手続きとは異なり、原則として1回だけの審理で終了して、その日のうちに判決が言い渡されます。そのため、少額訴訟も支払督促のように簡易かつ迅速な債権回収方法であるといえるでしょう。
しかし、少額訴訟も、相手方の態度によっては通常訴訟に移行してしまうというデメリットがありますので、やはり争いのある事案では利用することが難しいといえます。
② 通常訴訟
債務者からの異議の申立てが予想されるような事案では、当初から通常訴訟を提起した方が解決までの時間を節約することができます。
通常訴訟の審理では、準備書面という書面に法律の要件に従い、事実を整理した主張を記載しなければならず、それを裏付ける証拠の提出も必要となります。裁判所は、当事者からの主張や立証を踏まえて判決を言い渡すことになりますので、判決の言い渡しまでは相当な期間がかかることになります。特に、争いのある事案では判決まで1年を超えることもあります。
③ 民事調停
民事調停は、裁判のように白黒をつけるのではなく、当事者同士の話し合いによって妥当な解決方法を探っていくという簡易裁判所の手続きです。
たとえば、貸したお金の返還を求める事案で、相手が借りたことは認めているものの返済方法について合意ができないという場合には、民事調停を利用してみてもよいかもしれません。民事調停では、調停委員が間に立って話し合いを進めてくれますので、当事者同士で話し合うよりもスムーズな話し合いを行うことができる可能性があります。
4、債権回収で弁護士ができること
債権回収でお悩みの方は、弁護士に相談をすることをおすすめします。
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(1)弁護士が債権者と交渉をすることで任意の支払いが期待できる
債権回収を行う場合には、まずは、債務者に対して支払いを求めることから始まります。しかし、債権者が支払いの催促をしたとしても真剣に応じてくれない場合もあります。
このような場合には、債権回収を弁護士に依頼をすることをおすすめします。弁護士が交渉をすることによって、債権者の債権回収にかける本気度を示すことができ、債務者に対して放置していると法的手段によって財産を差し押さえられてしまうかもしれない、というプレッシャーを与えることができますので、それによって債務者からの任意の支払いが期待できます。 -
(2)適切な法的手続きを選択して迅速な債権回収を実現できる
債権回収の方法としては、支払督促、少額訴訟、通常訴訟、民事調停などさまざまな手段があり、それぞれメリットとデメリットがあります。このようなメリットとデメリットを踏まえたうえで適切な手続きを選択しなければ、余計な時間と費用が生じてしまう可能性があります。
弁護士であれば、債務者の態度や交渉の経緯などさまざまな事情を考慮したうえで最適な債権回収手段を提案することができます。法的手続きをしなければならなくなったとしても、専門家である弁護士に任せることができますので、債権回収に要する負担は大幅に軽減されるといえるでしょう。
5、まとめ
支払督促は、簡単に早く債権回収ができる手段として、法的手続きに不慣れな方であっても簡単に利用することができます。しかし、支払督促にはデメリットもありますので、支払督促が向いている事案であるかは慎重に判断しなければなりません。そのため、支払督促の利用を検討されている方は、一度弁護士に相談をすることをおすすめします。
債権回収に関するお悩みは、ベリーベスト法律事務所 宇都宮オフィスにお任せください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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