配偶者が大麻で逮捕! 刑務所へ入るの? これからどうなる?
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平成29年に栃木県で押収された大麻の量が過去最高となっており、ここ数年、大麻で逮捕される人は増加しています。現在の日本では、大麻などの薬物汚染がサラリーマンや主婦、学生などへも広がっている状況です。ある日突然、自分の家族が大麻で逮捕されたと連絡がくる可能性は高まっていると考えておいたほうがよいかもしれません。
しかし、自分の配偶者が大麻で逮捕されるとショックは大きく、これからどうなってしまうのか、残された家族にできることは何か気になるでしょう。
今回は、大麻で逮捕された配偶者の心配をしている方へ、大麻で逮捕されるとどうなるのか、残された家族はどのようなことができるのかについて、宇都宮オフィスの弁護士が解説します。
1、大麻で逮捕されるのはどのようなケース?
大麻で逮捕されるのは、大麻取締法に違反した場合です。具体的には以下のような行為をすると法律違反となります。
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(1)所持
所持とは自分が支配できる状態にあること、分かりやすく言うと、大麻を持っていたり保管していたりすることです。
大麻を所持していると罰せられますが、使用しても罰せられません。ただし、使用のために所持していると罰せられるので注意してください。規制の対象となっているのは大麻草やその製品であり、大麻の種子を所持していても罰せられることはありません。ただし、関税法等の法律に違反する可能性はあります。 -
(2)譲渡・譲受
対価としてお金をもらうかどうかとは関係なく、大麻を譲渡したり譲り受けたりすると大麻取締法で罰せられます。医療機関などが大麻を取り扱う場合は、行政から許可を受けているのであれば違法性はありません。
大麻取締法違反で罰せられるのは、大麻の売買に絡むケースがほとんどです。たとえば、自分で使用するために売人から大麻を購入したり、暴力団などが販売目的で大麻を購入したりというケースがよくあります。 -
(3)栽培
大麻の栽培は、苗や種の段階から行います。大麻は自然の状態でも育てることはできますが、他人に見つからないようにするため、室内で栽培するようです。室内で栽培する場合は、ライトを照射して明るさと暗さをコントロールするため、近隣の住民にばれることがあります。また苗が育ってくると、臭いが室外へもれて発覚することもあるようです。
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(4)輸出入
大麻取締法は、大麻を輸出したり輸入したりする国外犯を規制対象としています。ここでいう輸出入とは、正規の手続きを経ずに税関のチェックを免れる密輸のことです。公的機関などが正規の手続きにより輸出入するケースは処罰対象ではありません。
2、大麻で逮捕された後の流れと刑罰は?
大麻が原因で逮捕されたら、刑法犯と同様、刑事訴訟法で定められている手順に沿って、捜査を受け、罪を裁かれることになります。
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(1)大麻で逮捕される2つのパターン
大麻で逮捕される場合、以下の2つのパターンがあります。
●通常逮捕
通常逮捕では、警察官が逮捕令状を被疑者に提示し、容疑をかけられている犯罪名とその理由を告げてから逮捕します。客観的かつ合理性のある嫌疑と逮捕の必要性があると裁判官が判断した場合に限り、逮捕状が出されます。
たとえば、被疑者のアパートのベランダで大麻草を栽培しているのを、近隣の住民が発見して警察へ通報したケースなどで、通常逮捕に至る可能性が高いと考えられます。
●現行犯逮捕
大麻取締法に違反する行為を現に行っていたり、違反行為を目の前で確認できたりした場合、逮捕令状なしで現行犯逮捕されます。
たとえば、警察官が不審者と感じて職務質問し、持ち物を検査したところ、大麻が出てきた……というケースです。この場合、大麻を所持していることを目の前で確認されていることから、その場で、大麻取締法違反として現行犯逮捕されることになるでしょう。 -
(2)逮捕から刑罰が決まるまでの流れ
逮捕されると、あなたの家族は「被疑者」と呼ばれる立場となり、まずは警察で取り調べを受けます。警察は、逮捕してから48時間以内に取り調べを終え、検察へ送致してさらに捜査を進め、罪を裁く必要があるかどうかを決定する必要があります。
警察が検察へ事件と被疑者の身柄を送致すると、検察はさらに捜査を進めます。しかし、24時間以内に結論を出せず、引き続き身柄の拘束を行ったまま捜査を行う「勾留(こうりゅう)」の必要があると判断すれば、検察は裁判所へ勾留請求を行います。
勾留が決まれば、被疑者は原則10日間、最大20日間もの間、さらに拘置所や留置場で生活しながら、捜査に応じる必要があります。
なお、逮捕から勾留が決まるまでの最大72時間の間は、家族と被疑者の面会は制限されます。証拠隠滅や犯人隠避を防ぐための措置で、唯一自由な面会が行える立場となるのが、依頼された弁護士となります。依頼を受けた弁護士は、今後の流れや解決する手段について説明してくれたり、家族からのメッセージを伝言したりすることもあります。
なお、大麻取締法違反の場合、大麻の売人とのコンタクトや証拠隠滅の防止、繰り返し違反する可能性などを考慮して、勾留が決定される可能性が高い傾向があります。検察官は勾留期間中に捜査を終え、大麻取締法違反で起訴するかどうかを判断することになります。
もし、所持している大麻の量が少なかったり、被疑者に大麻を所持していたという認識がなかったりするケースでは、不起訴処分として釈放される可能性もあるでしょう。不起訴処分となれば、前科がつくことはありません。
しかし、起訴されると被疑者ではなく被告人となり、刑事裁判の手続きへと進みます。日本の検察は、証拠がしっかりそろわなければ起訴することはありません。そのため、起訴されれば、99%有罪となると考えてよいでしょう。 -
(3)科される刑罰
大麻取締法違反の刑罰は、行為態様によって異なります。さらに、営利目的があるかどうかによっても変わってきます。行為ごとの刑罰は、以下のとおりです。
●所持・譲渡・譲受
営利目的がなければ5年以下の懲役で処罰され、営利目的があれば7年以下の懲役および情状によって200万円以下の罰金で同時に処罰されます。
ただし、初めて大麻で逮捕されたのであれば懲役刑とならず、執行猶予がつく可能性があります。また、所持していた大麻がわずかなケースでは、起訴猶予となることもあるでしょう。
●栽培
営利目的がなければ7年以下の懲役で処罰され、営利目的があれば10年以下の懲役および情状によっては300万円以下の罰金で同時に処罰されます。
●輸出入
営利目的がなければ7年以下の懲役で処罰され、営利目的があれば10年以下の懲役および情状によっては300万円以下の罰金で同時に処罰されます。
3、家族が大麻に手を染めたとき、家族ができることは?
インターネット上で「有害ではない」などの記事が流布されていることから、気軽に大麻に手を出してしまう方も増えているようです。もし、あなたの配偶者が大麻を使用していたら、家族としてあなたができることを知っておきましょう。
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(1)逮捕されたら弁護士への相談を!
逮捕されると、最長で23日間にもわたって身柄を拘束される可能性があります。家族としては一刻も早く釈放してほしいと思うのと同時に、刑務所へは行かないで済むようにしたいと考えるのではないでしょうか。
そのためには、以下のことをする必要があります。- 勾留されないようにする
- 勾留決定に対する不服を申し立てる
- 起訴された後の保釈を申請する
- できるだけ量刑を軽くして実刑を避ける
しかし、逮捕から勾留が決まるまでの72時間は家族であっても本人と面会ができません。直接本人と会って話をして、状況の確認や反省を促すなど、直接的なアプローチを行えるのは、弁護士だけに限られています。また、警察や検察、裁判官などに対して意見を述べるなど、弁護活動を行えるのも、弁護士だけです。
まずは弁護士を依頼して、どうしたらよいのか相談してみることが、「家族ができる本人のためになること」のひとつとなるでしょう。 -
(2)薬物から遠ざけるためのサポート
大麻をはじめとした禁止薬物は、依存性が高いことで知られています。そのため、一度逮捕されると、その後も繰り返し逮捕されるケースが少なくありません。再び本人が罪を犯さないようにするためにも、まずは家族が、専門家のアドバイスに耳を傾けることも必要となるでしょう。
もちろん、再び薬物に手を出さないためには、本人が薬物から遠ざかる必要があります。しかし、依存性が強いこともあり、本人の意思だけでは難しいものです。「家族が薬物依存に対する正しい知識を身に着け、なによりも本人を治療につなげること」が、家族ができる最大の仕事になるだろうと考えられます。 -
(3)薬物更生施設へ入ることをすすめる
通院による治療や家族のサポートだけで薬物をやめることができない場合は、薬物更生施設へ入ることもひとつの方法です。入所することになれば、さまざまな制限を受けることになりますが、再び薬物に手を染めて逮捕されたり刑務所へ入れられたりすることを回避できる可能性が高まります。
4、まとめ
配偶者が大麻で逮捕されると、誰でもショックを受けて、不安になることでしょう。しかし、残された家族が早期釈放へ向けて行動を起こせば、社会復帰の時期も早まります。
特に、できるだけ早い社会復帰を目指すのであれば、長期にわたる拘束を避け、早期に治療を開始する必要があると考えられます。そのためには、家族のサポートが欠かせません。もちろん、家族だけがすべての負担を背負う必要はありません。弁護士に相談すれば、状況に応じたアドバイスが行えるだけでなく、適切な専門家を紹介することも可能です。
配偶者が大麻で逮捕されてお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 宇都宮オフィスで相談してください。刑事事件に対応した経験が豊富な宇都宮オフィスの弁護士が、早期解決を目指した弁護活動を行います。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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