警察からの取調べは拒否できる? 取調べの実態を弁護士が徹底解説

2020年05月12日
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警察からの取調べは拒否できる? 取調べの実態を弁護士が徹底解説

宇都宮地裁で行われた刑事事件裁判の際、取調べの録音・録画記録が事実認定に使われたことを不服として上告を行い争われていた事件に、令和2年3月6日、最高裁が判決を下しました。結論としては、取調べ中に自白をした録音・録画記録による有罪判決を問題視したうえで1審判決を違法としたものの、そのうえで無期懲役とした2審判決が確定したと報道されています。

刑事事件を犯してしまうと、捜査対象となり警察から厳しい取調べを受けることになります。しかし、一般的な日常生活において警察から取調べを受ける機会はないので、取調べでの対応に不安を感じる人がほとんどでしょう。

実際に、取調べへの対応や状況によっては、冒頭の事件のように不利な立場に追い込まれてしまう可能性は否定できません。そこで今回は、警察から取調べを受ける際の注意点や、逮捕されてしまった場合の対応について、宇都宮オフィスの弁護士が徹底解説していきます。

1、取調べとは?

日常生活において取調べを受ける事態に至ることはほとんどありません。そのため、警察による取調べがどのような形式で行われているのか、その実態はわかりにくいものです。

そもそも「取調べ」とは、警察や検察が起きた犯罪についての詳細や事情について話を聞くことを指します。「事情聴取」と呼ばれることもあります。

まず、取調べを受けるのは主に刑事事件の容疑をかけられた人(被疑者)か、事件を目撃した人や被疑者と関係性が深い人(参考人)です。取調べの最終的な目的は事件の解決ですから、被疑者に対する取調べは容疑の真偽を確かめるために行われます。

また、警察による取調べには強制の取調べと任意による取調べがあります。参考人として呼ばれる場合は、任意でやるケースがほとんどです。反対に、すでに逮捕状が出ている場合は逮捕という身柄拘束措置が取られたうえでの強制の取調べとなり、拒否することは難しいでしょう。

2、警察の取調べはどのように行われる?

「警察の取調べ」と聞くと、テレビドラマや映画でよくある非常に高圧的で怖いイメージが強いかも知れません。取調べは閉鎖的な空間で行われるため、実際の様子は取調べを受けたことがある人にしかわからないものです。そこで、ここでは警察機関で行われる取調べの様子について解説していきます。

  1. (1)取調べの雰囲気は?

    取調べは警察署の取調室で行われるのが一般的です。小さな部屋に机と椅子しかなく、閉ざされた空間の中で取調べを受けることに恐怖感を持つ方も少なくありません。

    また、警察の取調べは事件の解明に向けて行われる重要なものです。そのため、事件の真相を暴くために警察も熱心に取調べを行います。時には強引な手法で取調べを行うこともありますが、冤罪などの誘発を招く危険性などの理由から現在の取調べは録音、録画が行われるなどの可視化が進んでおり、以前よりも圧迫感のある取調べは減ってきているようです。

  2. (2)取調べ期間

    取調べ期間の長さは人によってさまざまです。なぜなら、任意同行から取調べを受ける中で容疑がはっきりとし、そのまま警察内で逮捕される場合も考えられるためです。反対に、取調べを受ける中で事件とは無関係とされ、すぐに釈放してもらえる可能性もあります。

    一概にはいえませんが、被疑者として逮捕された場合は刑事事件の手続きに従って警察・検察で最長72時間の取調べを受けます。その後、必要があれば勾留請求がなされ、最長で23日間の取調べを受けます。

3、警察の呼び出しを拒否することはできる?

警察から取調べを要求する通知を受けた場合、必ず取調べを受けなくてはならないかというと、実はその限りではありません。ここでは取調べを拒否できる条件を紹介します。

  1. (1)警察の取調べを拒否できる条件とは

    警察の取調べを拒否できるのは「任意同行」である場合です。

    もちろん、任意同行であれば、取調べを受けている最中に退席しても問題はありません。自分がどのような立場で呼ばれているのかが非常に重要になるため、同行要請があった際は事前に確認することが大切です。

  2. (2)取調べを拒否するとどうなる?

    任意同行や任意で出頭を促された場合は、原則的に取調べを拒否しても問題はありません。ただし、同行を拒否することで証拠隠滅を図る、逃亡をする可能性が高いと疑われると逮捕状が請求され逮捕されてしまう場合もあります。

    拒否はできますが、おとなしく従っておいた方が良いでしょう。

4、取調べの様子を録音することはできる?

自分が取調べを受ける際、強引な手口でウソの供述をさせられたり、無理やり自白をさせられたりしないように準備をすることは大切です。その中でも特に効果的といわれるのが、取調べの様子を記録することです。

  1. (1)取調べは録音できるか

    これまでに行われた警察による強引な取調べを防ぐために、刑事訴訟法に裁判員裁判の対象事件や検察官が独自で捜査をする事件の場合は、原則的に取調べの様子をビデオで録音・録画するという新しい規定が加わりました。それ以外の事件については自分で取調べの様子を録音する必要があります。

  2. (2)録音する際の注意点

    原則として、取調べの様子を録音することは違法行為ではないので、録音しながら取調べを受けることは可能です。ただし、隠れて録音していることが警察官に見つかると、録音をやめるよう注意されたり、録音したデータを削除されたりしてしまう可能性があります。

    必ず断りを入れてから堂々と録音しましょう。

5、取調べ中に逮捕される場合とは

警察による取調べは、事件の真相をはっきりするために行われるものです。そのため、事件の進行状況によって、被疑者の容疑が明確になり犯人と特定される場合があります。

  1. (1)取調べ中に逮捕される可能性はある?

    取調べ中に逮捕されることは、可能性として「ある」と考えておくべきでしょう。取調べにより容疑が明確になる、または外部からの証言や証拠が見つかり、犯人である疑いが強くなった場合などの場合、逮捕状が請求され逮捕されてしまう可能性があります。

  2. (2)取調べ中に逮捕されないためには?

    取調べをされることで不利な立場になってしまう場合もありえるでしょう。しかし、原則的に自白強要などの行為は許されません。

    不当な取調べを受けていると感じた場合は、まずは黙秘権を行使して弁護士を頼るようにしましょう。

6、警察から呼び出しを受けた場合、弁護士ができること

取調べは、本人と警察官で行われるため、非常に心細く不安が大きいものです。特に初めて取調べを受ける人は、早く帰りたいという思いから、不利になる陳述をしてしまう可能性があります。取調べの受け答えや注意点は、過去に取調べを受けたことがある人でない限り、イメージするのが難しいものです。

そこで、取調べが行われる前の段階から弁護士に依頼することをおすすめします。依頼を受けた弁護士は、まず、取調べの受け答えや今後の流れについて具体的なアドバイスを行います。また、依頼を受けたときは、任意取調べであっても弁護士が警察署まで同行することが可能です。取調室までは同席できないものの、途中で打ち合わせを挟みながら取調べに対応することができるでしょう。

また、警察に逮捕されてしまったら、逮捕直後から検察へ送致を行われて勾留の有無が決定するまでの3日間は、たとえ家族であっても面会(「接見」と呼ばれます)することはできません。しかし、弁護士のみ、この期間中であっても被疑者と接見することが認められています。弁護士は接見を通じて、取調べへの対応方法をアドバイスしたり、精神的な支えになったりすることができるでしょう。また同時に、警察や検察に対して、身柄拘束が長引かないよう働きかけるなどの弁護活動を行います。

7、まとめ

取調べは、逮捕されるかどうか、罪に問われるかどうかが決定する極めて重要な局面です。取調べ時の対応を誤ると、自分にとって不利な供述をとられたり、やってもいない容疑をかけられたりする可能性もゼロではありません。任意での動向や出頭が求められた時点で弁護士に相談することで、適切な受け答えのアドバイスを受けることができます。

警察からの取調べを受ける可能性があり、不安がある方は、ベリーベスト法律事務所 宇都宮オフィスにご相談ください。刑事事件についての知見が豊富な弁護士が、事件の早期解決に向けて、総合的なサポートを行います。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています