逮捕された人に差し入れしたい! 場所・アイテム別マニュアル
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栃木県内には、宇都宮中央警察署をはじめとして全19の警察署が設置されており、管轄地域を分割して事件・事故の捜査がおこなわれています。各署には「留置場」が設置されており、刑事事件の被疑者として逮捕されると捜査を担当している警察署の留置場に収容されて、身体を拘束されるのが原則です。
身体拘束を受けている被疑者は、自由な行動が大幅に制限されます。家族・恋人・友人といった周囲の人が、着の身着のままで所持金もないまま逮捕されてしまった場合、「差し入れ」をしたいと考える方も多いはずです。
本コラムでは、逮捕されてしまった人との「面会」や「差し入れ」について、ベリーベスト法律事務所 宇都宮オフィスの弁護士が解説します。
1、逮捕された人との面会・差し入れはいつから可能?
家族・恋人・友人など、身の回りの大切な人が逮捕されてしまうと、今すぐにでも面会したい、早く必要なものを差し入れしてあげたいと考えるのは当然です。ドラマや映画といったフィクションの世界では、逮捕されてすぐに面会・差し入れができるかのような描写がありますが、実は正確ではありません。
刑事事件の被疑者として身体拘束された人は、まず警察の段階で48時間以内、検察官の段階で24時間以内の身体拘束を受けたのち、逮捕とは別に「勾留」による最大20日間の身体拘束を受けます。
弁護士以外の方が逮捕された被疑者本人との面会・差し入れを許可されるのは、勾留が決定したあとです。
そのため、逮捕の知らせを受けて「今すぐ面会したい」「早く差し入れをしてあげたい」と考えても、勾留を受けていない段階では面会・差し入れができません。
2、面会が制限される期間と理由
被疑者との面会・差し入れには制限があります。
いつ、どのようなタイミングで、なぜ制限されるのでしょうか?
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(1)逮捕直後の72時間は面会・差し入れができない
身体拘束された直後、警察段階の48時間以内と検察官段階の24時間以内、合計72時間以内の期間は、面会・差し入れが認められていません。この期間は、外部の人との面会に関する定めそのものが法律上にも存在しないため、「面会禁止」といったものではなく、そもそも面会や差し入れという制度の対象外です。
逮捕直後は、厳格な時間制限のなかで刑事手続きが進行するため、面会や差し入れといった権利が確保されていません。このタイミングで面会ができるのは、被疑者の弁護人や弁護人になろうとしている弁護士だけです。 -
(2)勾留後も「接見等禁止」がつくと面会できない
身体拘束から72時間が経過するまでに「勾留」が決定すると、釈放されないまま留置場で拘束されることになります。
勾留が決定したタイミングから外部の人との面会や差し入れが可能となりますが、検察官の請求によって「接見等禁止」が付されてしまった場合は、勾留決定後も面会が認められません。また、外部の人と通じることを禁止されるため、手紙の差し入れも不可となります。
ただし、日用品などの差し入れは可能なので、留置場の窓口を通じて渡すことができ、場所によっては、郵送や宅配便を利用して渡すことができます。また、接見等禁止を受けた場合でも弁護士であれば自由に面会できますので、差し入れをしたい物品があれば弁護士に預けて、渡してもらうという方法もあります。
3、差し入れの手続き|留置場・拘置所にわけて解説
刑事事件の被疑者は警察署の留置場において身体を拘束されますが、刑事手続きが進んで検察官が「起訴」に踏み切った場合は、被告人として「拘置所」に移送され、さらに身体拘束を受けることになります。
留置場・拘置所における差し入れの手続きを、それぞれ解説します。
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(1)留置場での差し入れ
留置場に収容されている人への差し入れは、面会の機会と併せて各警察署の留置場を直接持ち込む方法が一般的です。ただし、本人との面会中に直接手渡すことはできないので、留置場の窓口でチェックを受けたうえで担当官に差し入れ物品を預けることになります。
差し入れ可能な物品や一度に受け入れできる数量などの決まりがありますが、警察署によってそのルールは一律ではありません。直接差し入れをする場合は、窓口でチェックを受ける際に調整可能ですが、郵送・宅配便を利用する場合は事前に問い合わせてルールを確認しておいたほうがよいでしょう。
なお、ほとんどの警察署の留置場では、1日に面会が認められるのは1組のみとされています。 -
(2)拘置所での差し入れ
拘置所での差し入れも、基本的なルールは警察署の留置場と同じです。
栃木県内の拘置所は、宇都宮拘置支所・足利拘置支所・大田原拘置支所の3か所なので、移送先となった拘置支所を訪ねることになります。
留置場と同じで、本人に手渡しができるわけではなく、窓口でチェックを受けたうえで担当官に預けることになります。
4、差し入れができるもの・できないもの一覧
差し入れできる物品には制限があります。
ここでは、差し入れできるもの・できないものにわけて解説します。
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(1)差し入れできるもの
差し入れ可能な物品は次のとおりです。
- 衣類
- メガネ・コンタクトレンズ
- 歯ブラシ
- 雑誌や小説などの本
- 家族などの写真
- 手紙
- 便せん
- 現金
ただし、これらの物品でも無制限というわけではありません。
自傷や自殺を防止するため、衣類はヒモ・ベルトがないものに限られます。フードつきのパーカなども禁止されているので注意が必要です。雑誌や小説といった本も、自傷や自殺、逃亡の防止を図るため、ホチキスを外しておく必要があります。
ほかにも、写真は3枚程度、現金は3万円程度など、留置場によって数量の上限が決まっている場合があるので、事前の確認は必須です。
また、接見等禁止が付されていなければ手紙の差し入れも可能ですが、警察官が内容を確認したうえで、証拠隠滅などが疑われる内容だと判断されると渡すことができません。 -
(2)差し入れできないもの
差し入れには強い制限があるため、差し入れが禁止されている物品が多くあります。
- タオル
自傷・自殺を防ぐため、差し入れ禁止です。必要があれば留置場内で購入し、留置担当官が管理することになります。 - 靴
留置されている間は留置場でサンダルが貸し与えられるため、靴は差し入れできません。釈放されたときのための靴として差し入れが可能な場合もあるようですが、その場合は留置場に預けるかたちになります。 - シャンプー・ボディーソープ・チューブ入りの歯みがき粉など
内容物を確認できないため、危険物の持ち込み防止の観点から差し入れが禁止されています。同様の理由で、コンタクトレンズの保存液やパウチに封入されたワンデータイプのコンタクトレンズは差し入れが認められません。 - 飲食物
衛生的に保管することができないため差し入れできません。 - タバコ
警察庁舎は全館禁煙です。火災予防の観点からも差し入れが禁止されています。 - ゲーム類
カードゲーム・ボードゲーム・携帯ゲーム機などは、留置場内の風紀と規律を乱すおそれがあるため差し入れ禁止です。
留置場によってはほかにも禁止されている物品があるため、事前に問い合わせて確認しておいたほうがよいでしょう。
- タオル
5、まとめ
家族や友人が逮捕されて留置場に収容される事態になると、生活に必要な日用品さえも用意できないまま身体拘束を受けるので、不便を強いられます。勾留後の面会の機会を通じて差し入れをすることで不便も幾分かは解消できるはずですが、面会・差し入れには制限があるため、事前の確認は欠かせません。
逮捕や勾留によって身体を拘束されている人との面会や差し入れについてお困りでしたら、ベリーベスト法律事務所 宇都宮オフィスにご相談ください。
弁護士による接見には制限がありません。接見の機会を生かしてお預かりした物品の差し入れも可能なので、まずはご相談ください。
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