未成年者にわいせつな「自撮り」を要求したときに問われる罪を解説
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令和5年9月、栃木県の公立中学校に勤務する男性教諭が、教え子の女子生徒にキスをしたり抱きしめたりするなどのわいせつな行為をしたとして、懲戒免職の処分を受けました。
男性教諭は、SNSを通じて女子生徒と個人的に連絡を取り合っていたそうです。
SNSが普及したことに伴い、インターネットを利用して成人が未成年者に連絡をとり、わいせつな「自撮り画像」や「自撮り動画」などを要求するという問題が深刻になっています。
本コラムでは、インターネット上で知り合った未成年者にわいせつな自撮りを送るように要求した場合に問われる犯罪や量刑、逮捕された場合に家族ができることについて、ベリーベスト法律事務所宇都宮オフィスの弁護士が解説します。
1、わいせつな自撮り画像や動画の要求は犯罪か?
わいせつな画像や動画に関する犯罪については、刑法175条のわいせつ物頒布罪、わいせつ物陳列罪などがあります。
これらの犯罪は、わいせつな画像をインターネット画像投稿サイトに投稿したり、自分が開設しているブログに掲載したりなど、誰でも閲覧できる状態にすることや、その画像や動画を印刷したりDVDのソフトにして販売することなどで成立します。
成年の交際相手などにわいせつな自撮り画像を送信するよう要求することや、成年同士におけるお互いの合意のもと、画像や動画を送り合うというだけでは、上記の犯罪には当てはまらないでしょう。
しかし、近年、未成年者が犯罪に巻き込まれることが社会問題になっていることから、条例で規制する自治体が増えてきています。
全国でも先駆けて導入した東京都を例にみてみますと、平成30年2月1日に施行された条例では、未成年者にわいせつな画像を要求しただけで犯罪行為になります。「東京都青少年の健全な育成に関する条例」の18条の7に該当し、26条7号により、30万円以下の罰金に処せられることになるよう規定されているのです。
つまり、SNSなどで知り合った未成年者に、わいせつな自撮り画像を送信してほしいと連絡した時点で条例違反となります。さらに、要求に承諾した未成年者がわいせつな自撮り画像を送信してきた場合、要求者は児童ポルノ禁止法違反の罪に問われます。
他の自治体でもこうした条例の設立や検討が進んでおり、そう遠くないうちに全国で展開されていくことが考えられます。栃木県では令和3年3月25日に栃木県青少年健全育成条例が改正され、いわゆる未成年者のエロ動画など児童ポルノ等を青少年に要求する行為が禁止されることになりました。具体的には、令和3年7月1日以降に次の行為をして有罪になると、30万円以下の罰金が科される可能性があります。
●青少年に拒まれたにもかかわらず、児童ポルノ等の提供を求めた者
●青少年を威迫し、欺き、若しくは困惑させ、又は青少年に対し、対象を供与し、若しくはその供与の申込み若しくは約束をする方法により、児童ポルノ等の提供を求めた者
自分の住んでいる自治体は関係ないと思わず、注意する必要があるでしょう。なお、条例は被害者が住んでいる地域のものが適用されます。
2、児童ポルノ禁止法について
前述した通り、たとえお互いの合意のもとにわいせつな自撮り画像を送りあったとしても、相手が児童(18歳未満)の場合、児童ポルノ禁止法(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律)違反に該当します。
児童ポルノ禁止法では、児童のわいせつな写真・動画やデータの所持、提供、陳列などの行為を処罰の対象としています。そのため、児童自らが進んで送ってきた画像でも、所持・保管していれば、逮捕される場合もあるのです。
なお、相手が18歳未満だと認識していた場合はもちろん、確証はなくても18歳未満だと思っていた場合、または18歳未満だと認識できる状態だったような場合も、児童ポルノ法の処罰の対象となります。
つまり、「知らなかった」では済まない可能性があるのです。
自分だけが楽しむ目的で、児童のわいせつな画像などを所持・保管していた場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます。
さらに、わいせつな画像を撮るよう児童に要求し、児童本人に撮影させるという行為は、児童ポルノ禁止法で規定されている「製造」に該当する場合があり、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されます。
本人は気軽に行ったことが、刑事事件に発展し、処罰を受けるという大きな事態になってしまうこともあるのです。
3、逮捕されてしまったら?
未成年者のわいせつな自撮り画像をめぐっては、条例違反や特別法違反になりますので、当然逮捕される場合もあります。
逮捕後の流れはどうなっているのでしょうか。
逮捕されたあとは、被疑者として警察署などで取調べを受けます。警察による取調べは、途中の食事などの休憩を除き、朝から夜までと長時間続けられます。
逮捕から48時間以内に、警察は検察官へ送致するか釈放するかを決定します。
検察へ送致されると、検察官の取調べを受けることになります。検察官は、送致されてから24時間以内に、勾留請求するかどうかを決定します。請求が認められてしまうと、10日間、延長があると最大で20日間身柄を拘束されてしまうのです。
勾留中にも取調べが行われ、検察官は起訴するかどうか決定します。起訴されると、刑事裁判の手続きに移行することになります。こうなると、裁判の間さらに長期間勾留されることになります。
こうしたことから、早期に釈放されなければ、かなり長期間社会生活を営むことができなくなってしまうのです。学校や会社を欠席しなくてはならなくなり、事件のことを知られてしまうだけでなく、退学処分や懲戒処分などの不利益を負うリスクが高まってしまいます。
4、家族にできること
配偶者や子どもが逮捕されてしまったとき、家族にできることは、早期の釈放を目指すことです。早期の釈放は、勾留されないことや、不起訴に持っていくことで実現します。
これには、被害者との示談が重要になります。ただし、被害者との示談は加害者の家族が求めても応じてもらえないことも多いので、なかなかうまくいきません。
特に児童買春や児童ポルノ事件の場合、示談の相手は被害にあった児童の親となります。児童の親は、加害者と加害者家族に対して強い嫌悪感情などを持ち、示談交渉がうまく進まない可能性が高いです。
こうしたとき、弁護士という第三者を利用することがおすすめです。第三者という立場であることで、被害者家族とも冷静に交渉することができ、早期に示談を成立させることが可能です。
また、逮捕から72時間以内は、家族であっても被疑者と面会することはできません。この間に面会できるのは、原則弁護士のみとなっています。長時間の取調べで冷静に対処することは難しくなっているところ、弁護士を通じて家族の思いを伝えてもらうことができます。また、不利益なことは言う必要がないなどといった、法律面からのアドバイスをしてもらうこともできます。
逮捕の連絡を受け、事情がつかめたら早期に弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士への依頼が早ければ、逮捕されて間もない頃に面会に駆けつけることもできますし、示談交渉を開始することもできます。
逮捕されてから勾留請求されるまでの72時間が勝負といわれているほどです。72時間は長いようで意外と短いため、家族の一員が逮捕されたショックが大きいかもしれませんが、弁護士に早期に相談するようにしましょう。
5、まとめ
未成年者などの児童をめぐっては、成人相手とは異なる複雑な法律関係があります。そのため、自分では気がつかないうちに犯罪行為をしていたという場合もあるのです。
逮捕されたご家族は、逮捕されたという事実だけでも衝撃を受けて、精神的に不安定になっている場合もあります。こうしたとき、弁護士が面会することによって、少しでも心の支えや冷静さを取り戻す機会を作ることができるのです。
未成年者に自撮りのわいせつ画像などを要求したことなどで家族が逮捕されお困りの場合は、ベリーベスト法律事務所 宇都宮オフィスにお気軽にご連絡ください。宇都宮オフィスの弁護士がご家族のために力を尽くします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています