児童買春をしてしまったと気がついたら自首した方がいい? 弁護士が解説

2019年07月24日
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児童買春をしてしまったと気がついたら自首した方がいい? 弁護士が解説

平成28年4月、宇都宮署は、栃木市の男性を児童買春・児童ポルノ禁止法違反の容疑で逮捕したという報道がありました。この男性は、平成27年6月18歳未満であると知りながら女性高校生にみだらな行いをしたとされています。

もし相手が18歳未満だと知らなかったとしても、児童買春で逮捕されてしまうと、その後の人生において多大な影響が出てしまう上に、通常の生活に戻ることが困難になるのではと不安になるかもしれません。児童買春をしてしまい、自分が逮捕されるのではないかと不安な方に、自首した方がよいのかという点を中心に、宇都宮オフィスの弁護士が解説します。

1、児童買春とはどのような犯罪か

児童買春とは、18歳未満の児童に対し、金銭などの対価を与えて、または与えることを約束して性交などの行為をすることを指します。
昨今、インターネットなどで知り合い、児童買春をする機会は増えているといわれます。児童本人は何の犯罪行為にも該当しませんが、買春行為をした大人の方は、児童買春罪が成立します。児童買春罪は、5年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金と非常に厳しい量刑が定められています。

さらに、場合によっては強制わいせつ罪や強制性交等罪なども成立する可能性があります。また、インターネットの出会い系サイトなどを通じて18歳未満の児童に援助交際を持ちかけたような場合、出会い系サイト規制法(インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律)違反にも該当します。

2、自首することのメリット

児童買春をしてしまった場合、自首した方がいいのでしょうか。自首には、自らの罪を積極的に認めることで、さまざまなメリットがあります。

  1. (1)逮捕される前に準備ができる

    児童買春の容疑で逮捕される場合、逮捕状を持って警察官が自宅までやって来ます。逮捕されて身柄を拘束されてしまうと、外部との連絡は一切取れなくなります。逮捕から72時間の間は家族と接見(面会)することもできません。弁護士に依頼して会社や学校に連絡してもらうことなどはできますが、無断欠勤が続いてしまうと解雇処分などの対象となってしまうリスクが非常に高くなります。逮捕されたことが会社や学校に知られてしまう可能性も高まり、解雇を免れたとしても居づらくなることが考えられるでしょう。
    しかし、自首する場合は、あらかじめ会社や学校への対策を取るなどの準備をすることができます。他者に事実を知られることなく解決できる可能性が高くなるでしょう。

  2. (2)在宅事件として処理される可能性が高くなる

    自首することは、自分の犯した罪を認め、捜査機関にその罪の処遇について委ねることです。そのため、自首した人については、逃亡の意思や罪証隠滅のおそれがないと判断され、在宅事件として処理される可能性が高くなります。

    在宅事件として処理されれば、逮捕されて身柄を拘束されることもありません。取り調べなどには応じなければなりませんが、必要な出頭以外は普段通りの生活を送ることができます。

  3. (3)罪が軽減される場合もある

    自首することで、罪が軽減される場合もあります。自首によって、罪を積極的に認め、反省していると判断されるほか、捜査や処罰を容易にさせる、無実の者への処罰の危険を避けられることなどが、軽減が認められる理由とされています。
    万が一起訴され有罪となっても刑が軽減される可能性があるほか、そもそも不起訴となる可能性も高まります。不起訴となれば、前科もつきません。

3、児童買春だと知らなかった場合に自首はできるのか?

たとえば、行為の際には気が付かなかったとしても、後に相手が18歳未満だと分かり、児童買春だったと気がついたとき、自首することはできるのでしょうか。

基本的には、わいせつな行為をしたときには18歳未満だと知らず、推察することもできなかった場合、そもそも児童買春の故意がなかったとして、児童ポルノ禁止法には違反していないことになります。
成立していない犯罪に対して、自首することはできません。

ただし、相手が中学や高校の制服姿の状態で会っていたり、高校受験の参考書を持ち歩いているのを認識していたりなど、18歳未満だと推察できる事項があった場合には、「18歳未満だと知らなかった」という言い訳は通用しない場合があります。「18歳未満でも構わないと考えていた」と判断されると、処罰の対象となります。

18歳未満だと推察できる事項があったにもかかわらず、18歳未満でも構わないと考えて性交等を行ったものの、行為のあと不安になったような場合は、自首することが可能です。

  1. (1)自首が認められる要件

    そもそも、自首と認められるには、一定の条件を満たす必要があります。自首の要件は、

    • 罪を犯した者が、
    • 捜査機関に発覚する前に
    • 自らの犯罪事実を申告し
    • 罰則・処分を求める


    ことが必要となります。

    相手が18歳未満だと認識・推察できない状態で児童買春してしまったという場合、故意がないため罪を犯した者に該当せず、自首にはならないのです。

    また、「捜査機関に発覚する前に」申告する必要があるので、容疑者として捜査機関から行方を捜索されているようなケースでは自首は成立しません。

  2. (2)逮捕されるリスクはある

    他方、売春をした被害者が、18歳未満であることを相手は気がついていた、自分で言ったなどと証言する場合もあります。こうした場合、行為時に犯罪が成立していないとこちらが思っていても、捜査や逮捕がなされるリスクがあるのです。

    児童買春に気がついた時点で、何らかの対策を取らないでいると、突然逮捕されてしまう危険性があると言えるのです。

4、児童買春に気がついたときの対処方法

自分が児童買春をしてしまったと気付いた場合、突然逮捕されてしまうリスクもある中、どのようにしたらよいのでしょうか。方法としては、

  • 警察に相談する
  • 弁護士に相談する


が挙げられます。もちろん場合によっては両方へ相談する必要があるでしょう。

  1. (1)警察に相談する

    自ら起こした行為が実は、児童買春に該当していた、どうしたらよいのか、と警察に相談することも可能です。行為時に犯罪であるという故意がなかったため自首には該当しませんが、被害者の証言などによって逮捕されてしまうリスクを防ぐことができます。

    方法としては、警察署に出頭し、相談担当者に相談します。相談を受けた警察官は相談内容をデータベースに登録するため、管轄が異なっていても、県警全体では情報が共有されることになるのです。

    いちいちデータベースを調べないかもしれないという場合は、相手方が補導されそうな場所を管轄する警察署へも相談しておくことをおすすめします。相談は複数の警察署に行うことができるからです。

    こうした相談をしたからといって、逮捕や捜査を受けなくなるという保証はありません。しかし、取り調べは受けるなどと伝えておくことで、逮捕をしなくてもいつでも話を聞けるという印象を持ってもらうことができます。たとえ捜査がされることとなっても、在宅事件として処理してもらえる可能性が高くなります。

  2. (2)弁護士に相談する

    警察署へ相談する以外には、弁護士に相談することができます。弁護士に依頼することで、警察署への相談に付き添ってもらうことができますし、被害者の保護者と示談交渉をしてもらうこともできます。児童買春の場合は、被害者本人ではなく、未成年者の親権者と示談交渉する必要がある点に特徴があり、被害者本人とよりも冷静に示談交渉するのが難しい場合があります。しかし、弁護士という第三者が交渉することで示談がまとまりやすくなるのです。
    被害者と示談が成立している場合、仮に刑事事件として起訴されたとしても、罪が軽減される可能性が高まります。裁判所は被害者側の処罰感情を重視する傾向があるからです。

    さらに、当該事件についてどのようにしたらデメリットが少なく済むかという点を弁護士からアドバイスを受けることもできるでしょう。
    弁護士に付き添ってもらい相談することで、刑事事件として処理するようになったとしても、逃亡や罪証隠滅のおそれがないと考えられ、在宅事件として処理される期待も高まります。

    いざ逮捕されたとしても、いち早く法的なアドバイスを受けることが可能になり、冷静に手続きに対応することができるでしょう。一般的に逮捕される経験がない場合がほとんどで、突然逮捕された場合、困惑してしまいます。こうしたとき、頼れる弁護士がいると思うだけでも、落ち着くことができるからです。

5、まとめ

マッチングアプリやSNSの普及により、まったく知らない異性とマッチングすることが可能となっている現代社会において、こうしたサービスを利用して知らずに児童買春をしていたというリスクも少なくありません。

児童買春だと気がついたとき、自分も逮捕されてしまい、会社をクビになるなど社会的に大きな損害が発生するのではと不安になる場合もあるでしょう。

こうしたときは、弁護士に相談して適切なアドバイスやサポートなどを受けることにより、リスクを減らすようにすることをおすすめします。

児童買春をしてしまいお困りの場合、ベリーベスト法律事務所 宇都宮オフィスにご相談ください。宇都宮オフィスの弁護士が力を尽くします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています