旦那が盗撮!? 逮捕後の流れと家族にできることとは

2018年10月09日
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旦那が盗撮!? 逮捕後の流れと家族にできることとは

盗撮事件は現代において、少なからず存在しています。かつては専用の機器を特別に購入しなければ、被写体となる人物に気づかれないように撮影すること自体が難しいものでした。しかし、今日では、スマートフォンの普及や撮影機器の小型化が進み、今は誰でも、簡単に鮮明な写真や動画を撮影できるようになりました。これにより、逆に悪意なく盗撮してしまうケースも登場しているようです。

もし、逮捕されたのが自分の旦那だったとき、妻の立場であれば大変なショックを受けることでしょう。場合によっては、離婚が脳裏をよぎることもあるかもしれません。しかし、子どもがいる場合は、この先の生活なども考えるはずです。

このような危機的状況に陥ったとき、妻はどのような行動をとればよいのでしょうか。今回は盗撮での逮捕後の流れ、家族にできることは何かについて、弁護士が説明します。

1、盗撮によって問われる罪とは?

盗撮は、他人を辱めるとともに、不安かつ不快な思いをさせる行為です。具体的に、どのような罪に問われることになるのかを、改めて知っておきましょう。

  1. (1)「迷惑防止条例」違反

    「迷惑防止条例」とは、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為などを防止し、もって住民生活の平穏を保持することを目的とする、各地方自治体が定めている条例の総称です。
    栃木県における正式名称は、「栃木県公衆に著しく迷惑をかける行為等の防止に関する条例」であり、第3条に「卑わいな行為の禁止」として、軽微と判断される痴漢や、のぞき、つきまとい、盗撮などの行為を禁じる文言が明文化されています。また、第9条において、盗撮行為に対し、「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」との罰則が定められています。

  2. (2)軽犯罪法違反

    盗撮は、状況によっては軽犯罪法違反として逮捕される可能性もあります。

    「軽犯罪法」とは、刑法を用いて罰するほどではないものの、反社会的と受け取れる行為を罰するための法律です。軽犯罪法の対象は、露出行為やのぞき、つきまとい、業務妨害、虚偽申告や騒音など、社会生活で非常に身近なものが中心となります。盗撮事件の場合は盗撮行為そのものではなく、トイレや浴場などののぞき行為が軽犯罪法に該当する可能性があります。

    なお、のぞき行為にあたる場合の刑罰は、「拘留または科料」になります。「拘留(こうりゅう)」は、1日以上30日未満の間、身柄を拘束される処罰で、もっとも軽い刑罰ともいわれています。また、「科料(かりょう)」は、1000円以上1万円未満の罰金刑です。

    軽犯罪法違反では、戦前、治安維持法などを背景に、警察が権力を振りかざした事実の存在を省みて、第4条で「濫用の禁止規定」が設けられています。よって、被疑者の住所不定の場合や正当な理由なく出頭に応じなかった場合でも、逃亡の危険性がなければ、逮捕状を用いた通常逮捕はもちろん、現行犯逮捕も禁じられています。また、捜査のために身柄を拘束する「勾留(こうりゅう)」が認められるケースは、被疑者が住所不定の場合のみと限られています。

  3. (3)そのほかの法律

    また、盗撮をするために、他人の敷地に無断で侵入していたり、強制的に被害者の腕をつかんでいたりするケースでは、刑法犯としてさらに重い罪が問われうることになります。

    ●住居(建造物)侵入罪
    住居(建造物)侵入罪とは、正当な理由なく、他人の住居やホテルの個室、店舗や公共建造物に不法に侵入する行為です。屋外でも建物の付属地に立ち入れば罪に問われます。盗撮やのぞきを行う際、他人の家に忍び込むなどの行動をしていたときは、住居侵入罪の罪に問われます。刑罰は、「懲役3年以下または10万円以下の罰金」と定められています。住居(建造物)侵入を伴う盗撮のケースでは、すぐに実刑判決が出るケースは少ないですが、反省が見られなければ重い刑罰になる可能性もあるでしょう。

    ●児童ポルノ法違反
    児童ポルノ法の正式名称は、「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」です。18歳未満の子どもたちに対する、性的搾取および性的虐待を取り締まり、子どもたちの権利を守ることを目的に規定された法律です。

    盗撮においても、被写体が18歳未満の児童だったケースでは、児童ポルノ法第7条5項に該当するため、罪が問われます。さらに、盗撮した児童の画像をインターネットなどで流出させていれば、重ねて罪を問われることになるでしょう。

    なお、児童ポルノの刑罰は大変厳しいものです。所持しているだけでも、「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」です。また、児童ポルノを盗撮したり他人に提供したりしているケースは「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」が定められています。

2、旦那が盗撮で逮捕。その後の流れは?

では、実際に家族が盗撮の疑いで逮捕されてしまったときは、どのような対応をすればよいのでしょうか。刑事事件が捜査され、裁判へ至るプロセスは決まっていますので、順を追って解説します。

  1. (1)取調べ

    取調べとは、被疑者や参考人に対して、警察などの捜査機関が供述を求める行為です。「被疑者(ひぎしゃ)」とは、罪を犯したことを疑われている人物を指し、「参考人」は事件の目撃者などを指します。

    被疑者は逮捕された場合、写真撮影と指紋の採取があります。その後、取調室で取調べが行われます。警察官からの取調べは逮捕後48時間以内に終了します。

    取調べの際はいつ、どこで、どのように盗撮したのか、また、過去の盗撮経験などを聞かれます。取調べで話をした内容は「供述調書」となり、その書面に署名することによって、裁判などで重要視される「証拠」として扱われるようになります。そのため、被疑者自身の供述内容によっても、刑が重くなる可能性があります。弁護士を依頼しない限り、相談できる相手はいません。被疑者は気をつけて対応する必要があります。

  2. (2)送致・勾留

    逮捕後の警察署での取調べが終わると、警察は事件を検察に送る「送致(そうち)」と呼ばれる手続きをとるかどうかを決めます。厳重注意などだけで送致しない場合は、「微罪処分(びざいしょぶん)」として釈放されます。微罪処分となれば、盗撮の疑いで警察の取調べを受けたという前歴は残りますが、前科はつきません。

    送致されたら、今度は検察官による取調べが行われます。検察官は、送致から24時間以内に、「勾留して引き続き捜査する」、「起訴する」、「釈放する」のいずれか判断します。

    「勾留」が認められると、引き続き拘束され、10日から最大20日間は留置所で暮らすことになります。勾留せずに釈放された場合は、「在宅事件扱い」となります。もっとも、引き続き警察の捜査には協力しなければなりません。

  3. (3)起訴・不起訴の決定

    検察は逮捕後、23日以内に起訴するかを判断します。「不起訴」の場合は、刑罰を受けることもなく釈放されます。前科がつくことはありません。

    「起訴」とは、検察が裁判所に対して、被疑者を刑事裁判にかけることを申請するものです。起訴後は、呼び名が「被疑者」から「被告人(ひこくにん)」へ変わり、刑事裁判を待つことになります。現在、日本の検察は、完全ともいえる証拠がそろわない限り、起訴しない傾向があります。その結果、現状では、刑事事件で起訴されたら、99%は有罪となり、前科がつくと考えておいたほうがよいでしょう。

    なお、起訴には「公判」と「略式」の2種類があります。「公判」を請求された場合は、起訴後も勾留されることになります。略式請求されたときは、書類のみで罰則を決める手続きが終わるため、身柄の拘束は解かれます。

3、少しでも早く旦那を自由の身にするためには?

盗撮によって逮捕されたあなたの旦那は、状況によっては1ヶ月以上もの長期にわたり、身柄を拘束され続けてしまう可能性があります。長期間の拘束は、どうしても職場や家庭に影響を与えてしまいます。そのうえ、有罪となれば、盗撮で前科がつくことになるため、あなたの家族が受けるダメージも計り知れないものとなるでしょう。

  1. (1)旦那が自由になれるのはいつ?

    逮捕後、被疑者が自由の身になるためのタイミングは、以下の3回あります。

    • 逮捕後、48時間以内……事件を送致される前に「微罪処分」として解放されるケース
    • 送致後、24時間以内……検察に勾留される前に「在宅事件扱い」となり、引き続き捜査協力するケース
    • 「不起訴」となったとき……勾留中、もしくは在宅事件扱い中に不起訴となったとき


    また、逮捕された後に、前科がついてしまうことを回避できる方法は、逮捕後48時間以内に決まってしまう「微罪処分」と、「不起訴」の2種だけです。また、処罰すべきか検討する際、警察や検察は、被害者との示談が成立しているかどうかを非常に重視する傾向があります。

  2. (2)弁護士に依頼すべき理由

    逮捕後の72時間は、たとえ家族でも面会することはできません。妻であるあなたは、旦那を自由の身にするための手を打つ方法がないように思えるかもしれません。

    この期間に面会できるのは弁護士だけです。取調べ時の被疑者の対応次第では罪が重くなってしまうこともありますので、少しでも早く弁護士に依頼して、本人と面会してアドバイスしてもらえるよう、依頼することをおすすめします。面会だけでなく、警察や検察に早期に身柄拘束を解くように働きかけるなど、さまざまな弁護活動も行うことができます。

    そして、前科をつけないためにも重要なものが、被害者との示談です。本来示談とは、当事者同士の話し合いであるため、妻であるあなたが夫の代理人として示談することもできます。謝罪と損害賠償により心からの反省の意を示すことで、被害届を取り下げてもらうことができることがあります。

    しかし、多くの被害者は、加害者やその家族との直接的な交渉を避けたがるものです。もしあなたやあなたの子どもが盗撮の被害にあったら、わざわざ加害者に会いたいか? と考えれば、おのずとその理由は理解できるでしょう。また、当然のことながら、加害者の妻が警察から、被害者の連絡先を教えてもらえることはないと考えてください。

    しかし、弁護士が間に入ることで、被害者と連絡をとることが可能となり、示談交渉を進められるケースが多々あります。弁護士は、できるだけ早いタイミングで示談が成立するよう交渉を進めると同時に、「微罪処分」や「不起訴」獲得のために行動します。加害者による反省文を検察官に提出して再犯の可能性を否定するなど、さまざまな方法で弁護します。

    少しでも早く、旦那を自由の身にするためにも、起訴されるまでの間に弁護士を介入させてください。また、弁護士への相談は早期であるほど、その後の家族が受ける影響を最小限に抑えるための対応が行えます。逮捕を知ったら、すぐに弁護士へ相談することをおすすめします。

4、まとめ

盗撮事件での逮捕後の流れや逮捕後の解決方法について説明してきました。家族が逮捕されたと聞くと、パニックになってしまう方もいるかもしれません。しかし、家族の未来にかかわる大問題です。逮捕された本人をいち早く開放してもらうためにも、冷静に対応しなければなりません。

家族が逮捕されたことを知ったら、なるべく早く刑事事件の経験が豊富な、ベリーベスト法律事務所 宇都宮オフィスへ相談してください。拘束期間が長引くほど、その後の生活にも影響が出る可能性が高まります。

不起訴を獲得できるように、弁護士は全力で弁護活動に取り組みます。当事者間では難しい示談交渉も、弁護士を介入させることでうまく話が進むようになるでしょう。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています