運転中のイヤホン使用は違反? 片耳でも交通違反になりうる理由
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宇都宮市のサイトにある『「ながらスマホ」はやめましょう!』と題した注意喚起のページでは、「ながらスマホ」以外にも、イヤホン・ヘッドホンの大音量での使用も違反となることが明記されています。
携帯電話・スマホを使いながらの運転は非常に危険であり、令和元年12月から道路交通法が改正されて、スマホなどを使用しながら車両を走行させる、いわゆる「ながら運転」が厳罰化されました。特に、イヤホンを装着したまま運転する行為は、自動車だけでなくバイク・原付・自転車でも違反になることがあるので要注意です。
本コラムでは、ベリーベスト法律事務所 宇都宮オフィスの弁護士が運転中のイヤホン使用で交通違反になってしまうケースについて解説します。全国的な規制強化を背景に、片耳イヤホンやハンズフリーイヤホンなら合法などといううわさも耳にしますが、本当でしょうか。
1、運転中にイヤホンを使うと交通違反?
交通ルールを定めている代表的な法律は「道路交通法」ですが、この法律は改正が多いため、社会状況に合わせて、常に交通ルールは更新されています。
令和元年の改正では「ながら運転」にあたる行為が厳罰化され、特に携帯電話に関する違反では、違反点数が3倍に、反則金もおよそ3倍へと強化されました。
ここで気になるのが、携帯電話・スマホにイヤホンを接続して使用する場合の考え方です。
通話のため、端末本体やクラウドに保存した音楽を聴くため、イヤホンを接続して使用している方も多いでしょう。
運転中にイヤホンを使う行為は交通違反になるのでしょうか?
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(1)「イヤホン使用禁止」というルールは存在しない
道路交通法には、「運転中にイヤホンを装着してはならない」「イヤホンを使った通話も違反とする」といったルールは存在しません。
つまり、運転中にイヤホンを使っても、必ずしも道路交通法違反にはなりません。 -
(2)運転中のイヤホン使用は危険?
イヤホンの使用によって直ちには道路交通法違反にならないとはいえ、とても危険な行為であることは知っておくべきです。
イヤホンを使って通話したり、音楽を聴いていたりすると、運転への集中力が低下するため、交通事故の原因になってしまうのです。 -
(3)交通事故を起こせば「安全運転義務違反」と判断されるかも?
イヤホンを使用していたことで注意が散漫になり、交通事故を引き起こしてしまった場合は、道路交通法第70条の「安全運転の義務」に違反したと判断されることがあります。
いわゆる「安全運転義務違反」です。
同条では、すべてのドライバーについて、ハンドルやブレーキなどを確実に操作して、他人に危害を及ぼさないように運転しなければならないことが明記されています。
「ハンズフリーで通話していた」「イヤホンで音楽を聴いていた」ことにより、周囲への注意が欠けていると判断されるような状況であれば、他人に危害を及ぼさないような方法で運転していたとはいえないと評価される可能性があります。
安全運転義務違反には、普通車で違反点数2点・反則金9000円の行政処分が科せられます。
さらに被害者の負傷程度によって事故点数も加算されるので、悪質な場合には、運転免許の停止や取り消しといった行政処分を受けることにもなるでしょう。 -
(4)「公安委員会遵守事項」の違反になることもある
交通ルールを定めているのは道路交通法だけではありません。
都道府県にはそれぞれに公安委員会が定める「規則」があり、道路交通法のさらに細かい部分をフォローしています。
栃木県にも「栃木県道路交通法施行細則」が定められており、第13条の「運転者の遵守事項」にイヤホンの使用に関するルールが定められているので知っておくべきでしょう。
同規則第13条10号では「音量を大きくし、またはイヤホン・ヘッドホンを使用して音楽を聴くなど、安全な運転に必要な交通に関する音または声が聞こえない状態で車両を運転しないこと」と明記されています。
イヤホン・ヘッドホンを使用することが直ちに違反になるわけではないものの、周囲の車の走行音、警報音(クラクション)、自分の車が発する異音、同乗者が注意を促す声などを聴き取れない音量で音楽を聴くなどの行為は禁止です。
2、音量が小さければOK? ハンズフリーなら通話も合法?
運転中のイヤホン使用についてよくある疑問を確認していきましょう。
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(1)音量が小さくても違反になるおそれが強い
イヤホンを使って大音量で音楽を聴いていると、周囲に危険が接近している音や同乗者が危険を知らせる声が聞こえなくなります。
では「音量を抑えていれば違反にならないのか?」といえば、一概にそうとはいえません。
イヤホンを装着していると耳の穴に栓をしている状態になるので、たとえ音量が小さくても「安全な運転に必要な交通に関する音または声」が聞こえにくい状態になります。
たとえば、パトカーの追跡を受けて停止を求められても音が聞こえず停止に応じるのが遅くなったといったケースでは、音量が小さくても違反になるおそれが強いでしょう。 -
(2)「片耳だけなら合法」「ワイヤレスは合法」は間違い
イヤホンで耳の穴に栓をしないほうが安全であるなら「片耳だけ装着すれば安全だ」と考えるかもしれません。
しかし、上記規則には「片耳なら問題ない」といったルールはありません。
また、有線のイヤホンではコードが絡むなど運転操作に支障をきたすおそれがありますが、同じように「ワイヤレスなら危険はない」といった基準も存在しません。
直ちに違反となるわけではありませんが、あくまでも「安全な運転に必要な交通に関する音または声」が聞こえるかどうかが問題になると覚えておきましょう。 -
(3)イヤホン以外のハンズフリーなら通話も合法
携帯電話・スマホを手に保持して通話する行為は、もちろん違反です。
この行為の罰則は強化され、違反点数は3点に、普通車の反則金は1万8000円へと引き上げられました。
さらに携帯電話・スマホの使用が交通事故を招いた場合は、違反点数が6点加算されるだけでなく、非反則行為として刑罰の対象になります。
1年以下の懲役、または30万円以下の罰金を受けることになるため、走行中の携帯電話・スマホの使用は厳に控えなければなりません。
ただし、違反となるのは携帯電話・スマホの画面を注視したり、通話のために保持していたりしたときに限られます。
つまり、ハンズフリーのデバイスに接続していれば、違反にはなりません。
ただし、ハンズフリーイヤホンの場合はやはり「安全な運転に必要な交通に関する音または声」が聞こえるかどうかが判断要素になると考えられます。
走行中に通話の必要がある場合は、ハンズフリーイヤホンではなくカーオーディオにUSBやBluetoothなどで接続して通話したほうが安全です。また音量にも十分注意し、サイレンなどが聞こえる音量に設定しましょう。
3、自転車も規制の対象? イヤホン使用の「ながら運転」の考え方
走行中のイヤホン使用が規制されるのは自動車・バイクだけではありません。
「自転車」も規制の対象になるので注意が必要です。
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(1)規則では「車両」の運転者が規制対象
栃木県道路交通法施行細則第13条は「車両の運転者」が遵守すべき事項を定めています。
ここで注目すべきは「車両」の考え方です。
道路交通法第2条8号によると、車両とは「自動車・原動機付自転車・軽車両・トロリーバス」を指すと定められています。
さらに同条11号には、自転車も軽車両に含まれる旨が明記されています。
つまり、自転車は「車両」のひとつです。
自転車でも走行中のイヤホン使用について規制を受けるので、「安全な運転に必要な交通に関する音または声」が聞こえない音量で音楽を聴く行為は違反となります。 -
(2)自転車なら罰は受けない?
日ごろから自転車を利用している人の中には「自転車は車ではないから交通ルールに違反しても罰は受けない」という考える人もいるかもしれません。
しかし、自転車による「ながら運転」が重大な人身事故を引き起こす事例も多発しており、大きな社会問題となっているため、全国的に自転車の取り締まりが強化されています。
自転車運転中のイヤホン使用は自動車と同様に取り締まりを受けるうえに、自転車の場合は違反点数による行政処分や反則金による処理を受けられません。
5万円以下の罰金が科せられる可能性があり、罰金とはいえ前科がついてしまうので軽視は禁物です。
4、交通取り締まりに納得できない! 違反のお悩みは弁護士に相談を
道路交通法をはじめとした交通ルールは改正が多く、すべてを正確に把握するのは困難です。
また、どのような行為が違反となるのかの基準もわかりにくいため、たとえばイヤホン使用のように「片耳だけなら合法では?」「自転車は対象外なのでは?」といった誤解も生じやすくなります。
思いがけず交通取り締まりを受けて違反として処理されたが納得できない、厳しい処分に不安がある、違反にあたるのかがわからないといったお悩みがある場合は、弁護士への相談がおすすめです。
弁護士に相談すれば、道路交通法をはじめとした交通法規を正確に解釈し、どのような行為が違反にあたるのか、違反にあたらない基準はどこまでなのかといったアドバイスが得られます。
また、不当な交通取り締まりへの対応や、不当に重い刑罰の回避に向けたサポートも可能です。
5、まとめ
携帯電話・スマホにイヤホンを接続して使用する機会が多い方にとって、運転中のイヤホン使用が交通違反にあたるのかどうかは重要な問題とお感じになるかもしれません。もし、現状においても運転中にイヤホンを使用しているのであれば、自動車の運転中はもちろん、自転車であっても、違反となり、取り締まりの対象になりえます。交通事故を引き起こさないためにも、今後は避けたほうがよいでしょう。
万が一、あなた自身やご家族がイヤホン着用中に運転した結果、事故を起こしてしまい、不当に重い罪を科されてしまいそうなときは、ベリーベスト法律事務所 宇都宮オフィスへご相談ください。刑事事件についての知見が豊富な弁護士が、法律や規則に照らして適切なアドバイスを行います。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています