ごみの集積所をめぐるトラブル! 法的な対処方法について弁護士が紹介
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令和3年度の宇都宮市における家庭ごみの量は13万2789トンが排出されました。令和2年度と比較すると3192トン減少しているものの未だ多くのごみが排出されています。「家の前にごみ置き場ができて困っている」「不法投棄が続いている」など、ごみをめぐるトラブルは絶えません。異臭や害虫発生の原因ともなるため、できるだけ早く解決したいところですが、住民間の考えの違いもあって思うように話が進まないことがあります。
ではごみ収集に関して地域の住民と争いになった場合は、どう対処すればいいのでしょうか? 今回はトラブルの具体例と解決方法について法律的な視点を交えて、宇都宮オフィスの弁護士がご紹介します。
1、ごみ集積所をめぐるさまざまなトラブルの例
一般的に家庭から出たごみは、地域のごみ置き場やマンションの集積所に集められ、自治体が回収します。しかし、ごみ集積所の設置や管理をめぐっては、トラブルが生じることがあります。
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(1)ごみ集積所をめぐるトラブル
ごみ集積所に関するトラブルには、主に次のようなものがあります。
【ごみ出しに関するトラブル】- 悪臭、害虫が発生する
- カラスや風でごみが散乱する
- 不法投棄がある
- 分別のルールが守られない
- ごみ出しの時間が守られない
- 早朝や夜間のごみ出しの音がうるさい
【ごみ集積所をめぐるトラブル】
- 自宅前に集積所があり、臭いや音に悩んでいる
- 事前に相談なく、家の近くに集積所を設置された
- 集積所の掃除をする住民がいない、限られている
- 自治会・町内会をやめたら集積所を使わせてもらえなくなった
- 集積所の輪番制に加わらない住民がいる
カラス対策にはネットの設置、不法投棄には防犯カメラの設置など、対策をすることで解決につながる問題もあります。
ですが、集積所の設置場所や管理などは、住民同士の合意や協力が必要であり、速やかな解決ができないケースが少なくありません。 -
(2)ごみ集積所は住民が管理
そもそも、ごみ集積所は自治体が設置・管理しているものではありません。
一般的には自治会・町内会やマンションの管理組合など、集積所を利用する住民・入居者が設置場所を決め、市町村に収集してもらっているのです。
集積所の清掃も、地域の方やマンションの不動産管理会社などが管理委託契約に基づいて行っています。
そのため、集積所をめぐるトラブルが発生した場合は、原則、住民間で解決を図らなくてはなりません。
宇都宮市ごみステーション設置要領にも、以下のように規定されています。「ごみステーションの設置等を行ったことにより、付近住民等との間に紛争が生じた場合には、申請人又は利用者が自主的に解決に当たらなければならない」(第7条)
では、どのように解決すればいいのでしょうか。次章からは具体例をもとにご説明します。
2、自宅近くにごみ集積所があるとき、輪番制を導入してもらえる?
ごみ集積所をめぐるトラブルで多いのが、場所の問題です。集積所が家の前にあるために、異臭や騒音に悩まされている方は少なくないでしょう。その問題の解決策として導入されているのが「輪番制」です。
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(1)ごみ集積所の輪番制とは
輪番制とは、集団内で順番を決めて持ち回りで役割を担う仕組みです。
ごみ集積所の輪番制では、集積所を特定の場所に固定するのではなく、集積所を利用している住民で順番を決め、1年ごとなど期間を定めて集積所を当番の家の前などに移動させて設置します。
これにより、1軒の家に異臭などの被害をすべて受けさせるのではなく、全員が公平に負担します。 -
(2)住民が同意すれば輪番制にできる
基本的には、集積所を管理している自治会や町内会の賛同が得られれば、固定の集積所から輪番制への移行は可能です。
入居前から家の前に集積所があった場合、「集積所があると知っていたんだから自己責任だ」「嫌だったら引っ越せばいい」という住民もいるでしょう。
ですが、ごみは生活している以上誰でも生じさせてしまうものです。しかも、引っ越し費用や子どもの学校生活の環境変化などの問題から簡単に決断できるものではありません。
移設や輪番制がかなわなければ、その家に住み続ける限り問題は続きます。
集積所に隣接していない家では、ごみの負担を隣接している1軒に負担させていることに負い目を感じているかもしれません。
輪番制を導入している地域もあるので、被害を訴えて導入を求めれば、納得してもらえる可能性があります。
ただしごみ収集車が入れない場所もあるので、設置場所に一定の制限は生じる可能性はあります。
また自治体によって設置場所に条件を定めていますので、事前に自治体に問い合わせるなどして、確認しておきましょう。
3、自治会がごみ集積所を使わせてくれない! 対処方法は?
ほかに集積所に関するトラブルでよくあるのが「自治会に加入しないことでごみ置き場を使わせてもらえない」というケースです。この場合はどのように解決したらよいのでしょうか?
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(1)自治会が拒否するとごみ集積所は使えない?
近年、自治会に加入しない方が増えています。
一般的には、自治会には加入の義務はないと考えられているため、加入せずとも法律的には問題ありません。ただし、加入を義務付ける自治会も存在しますので、確認が必要です。
そもそもごみ集積所は各地の自治会やマンションの管理組合などがまず設置を申請するもので、個人が勝手に設置できません。
宇都宮市ごみステーション設置要領では、第4条で以下のように規定されています。「ごみステーションの設置について申請できる者は、次のとおりとする。
(1) リサイクル推進員 (2) 自治会長 (3) 建主、開発業者又は管理者(集合住宅、住宅団地に限る)」
設置のほか清掃も基本的には自治会などが行っているため、非会員の利用を拒否するケースがありえます。拒否されているのに勝手に捨てれば、住民とのトラブルに発展する可能性が出てしまいます。
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(2)自治会と交渉
自治会に加入しない方には「役員をやりたくない」「共働きで活動に参加する時間がない」「自治会費の負担が重い」など、それぞれの事情があるでしょう。
一方で自治会側も「高齢化で清掃を担う人が減っている」「非会員が増えて管理が煩雑になって、運営できなくなることを懸念している」など、利用を拒否する背景があるかもしれません。
そのため、まずは自治会と交渉をすることから始めましょう。
自治会に入らない事情をわかってもらえれば、非会員でも清掃に協力することで集積所の利用を認めてもらえるかもしれません。また、役員にならない条件で加入するなど、妥協点を見つけられる可能性もあります。 -
(3)自治体に相談
自治会と交渉しても合意ができない場合は、ごみ集積所を管理している自治体に相談してみましょう。
そもそも、生活ごみは、法律で市町村が収集・運搬・処分しなければいけないと規定されています(廃棄物処理法第6条の2第1項)。
そのため、自治体によってはごみ集積所を利用できない家庭を対象に、戸別収集や専用の集積所の設置、清掃センターへのごみの持ち込みなどの対応を行っています。
また、自治会への対応についてのアドバイスをもらえる可能性があります。
当事者で解決ができない場合は、自治体に相談してみましょう。
4、ごみ集積所のトラブルは弁護士に相談
ごみ集積所をめぐるトラブルが長引けば、住民同士の関係が悪化し、地域で生活しづらくなるかもしれません。早期に、かつ、穏便に解決するためには、弁護士へ相談しましょう。
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(1)話し合いで解決できなければ裁判も
家の近くにごみ集積所があり、長年悪臭などに耐えていると、やがて我慢の限界がくるでしょう。
「輪番制にしよう」と訴えても、負担を嫌がり反対する住民がいればなかなか状況が改善しません。また、集積所を使わせてもらえず、戸別回収や別の集積所の利用もできない場合は、ごみはたまっていくばかりです。
話し合いや自治体の対応では解決が難しい場合は、民事調停等の司法手続きの利用を考えましょう。実際、過去にはごみ集積所の設置場所をめぐり裁判になった事例もあります。
平成8年に東京高裁で争われた裁判では、ごみ集積所に隣接する家の住民が、約5年間にわたり輪番制を訴えたものの認められなかったことから、一部住民のごみ出しの差し止めを求めました。裁判所は一部の住民が輪番制を拒否し続け、特定の家に被害を受けさせ続けることは受忍限度を超えるとして、請求を認めています(東京高裁平成8年2月28日判決)。 -
(2)トラブルは弁護士に相談しよう
ごみは自治体によって回収ルールが異なり、集積所の管理方法も自治体やマンション管理会社によって違います。
また、集積所が住民の私有地に設置されていたり、維持管理に費用が発生したりするなど、自治会の事情はそれぞれ異なるでしょう。
一方で、自治会に入らなかった人が嫌がらせを受けているという事例も存在します。
自治体に相談しても、自治体はあくまでごみの収集をするだけで集積所の管理は範囲外のため、トラブルを訴えても「自分たちで解決してください」と回答されるかもしれません。
そのためトラブルが発生したら、できるだけ早く弁護士に相談しましょう。
ごみ集積所の移設や輪番制の導入、自治会員以外の集積所の利用は、話し合いでの解決が基本です。
すぐには合意に至らない可能性があるため、証拠を示しながら粘り強く交渉することが重要です。
弁護士は依頼者に代わって自治会や近隣住民と交渉をし、妥協点を探ります。かたくなになっていた住民も、弁護士のアドバイスであれば耳を貸してくれるかもしれません。
法的な根拠があり、話し合いで解決できない場合には、調停や裁判など法的対処について、アドバイスを受けることが可能です。
5、まとめ
ごみ集積所の設置や清掃は、できれば負担したくないという方は多いでしょう。また高齢化や地域のつながりの希薄化など、社会情勢も影響してごみ問題はトラブルに発展しやすい傾向にあります。
大きな争いに発展すると解決はより難しくなり、地域で生活しづらくなるという事態も生じ得ます。できるだけ早く、ベリーベスト法律事務所 宇都宮オフィスにご相談ください。地域密着で活動する弁護士がご事情をお聞きし、穏便にかつ納得できる形で解決できるように力を尽くします。
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