絶縁していても扶養義務者になる? 宇都宮オフィスの弁護士が解説!

2021年03月15日
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絶縁していても扶養義務者になる? 宇都宮オフィスの弁護士が解説!

宇都宮は昔から北関東の主要な都市として栄え、東北新幹線が開通してからは都心へのアクセスも容易となり、全国でも有数の主要な商業都市として発展しています。その一方で、他の都市と同じく少子高齢化に悩み、生活困窮者も増加傾向にあるようです。

今は健康で、互いに離れて暮らしていても、人生何があるかわかりません。突然、行政から親兄弟の生活が困窮しているため、面倒をみるように連絡があった場合はどうすればよいのでしょうか。

連絡をもらった本人にも自分の生活がありますし、結婚していた場合には新しく築いた家庭を守らなくてはなりません。さらに親兄弟と不仲であった場合には、自分の生活に余裕があっても援助をしたくないと思う方もいらっしゃるでしょう。

しかし、だからといって行政の連絡を無視していいのか、判別がつかない方が多いのではないでしょうか。そこで、本コラムでは、不仲の親兄弟の生活が困窮した場合にも扶養義務が発生するのか、どのような立場であれば扶養義務者になるのかを、宇都宮オフィスの弁護士が解説します。

1、扶養義務とは

民法では、夫婦や親子間における扶養についてそれぞれ定めています。これらの内容については、それぞれ違いがあります。ここでは、それぞれの関係における扶養の内容を見ていきましょう。

  1. (1)扶養とは

    まず、扶養とは自分だけの力で生活をすることが困難な者を助けることをいいます。具体的には、生活費の負担、分担です。
    その内容は、相手との関係によってそれぞれですし、どの程度負担をしなくてはならないかも変わります。

  2. (2)生活保持義務

    夫婦間や、親が未成熟の子どもに対する扶養義務は、生活保持義務であると考えられています。
    生活保持義務は強制で、扶養者は自分と同程度の生活を被扶養者に与える義務を負い、少なくとも最低限の生活水準を維持する責任を負います。
    夫婦は同居して互いに助け合い家庭を築かなくてはなりませんし、親は子どもを監護教育する義務を負います

  3. (3)生活扶助義務

    一方、生活扶助義務は強制ではありません。扶養者に余裕があれば被扶養者に援助すればよく、扶養義務者は自分の生活を犠牲にしてまでは援助をする必要はありません

    成人した親子間や、兄弟関係では、扶養者はこの生活扶助義務を負う、ということになります。つまり、子どもが仕事を辞めてまで年老いた親を引き取って面倒をみたり、ケガをして働けなくなった兄弟の生活費を、無理をしてでも負担したりする必要はないということになります。

2、扶養義務者とは

それでは、どのような関係にあれば、生活に困っている被扶養者を扶養する義務が生じるのでしょうか。

民法では扶養義務者を一定の身分に規定していますが、行政が扶養を求める場合は、さらに被扶養者との間に生計維持関係があるかどうかによって判別しています。

まずは、民法で定められている、扶養義務者の身分を見ていきましょう。

  1. (1)直系血族および兄弟姉妹

    民法第877条第1項は「直系血族および兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と定めています。

    つまり、親や子ども、自分の兄弟だけではなく、祖父や曾祖父、孫や曾孫も扶養義務者となります。なお、養子縁組をした場合も、民法第727条の規定により血族とみなします。

  2. (2)夫婦

    民法第752条では、夫婦間の扶助義務が定められています。結婚している夫婦はもちろん、事実婚関係でもこの義務は発生します。

    また、別居をしていても法的に離婚が成立していない場合は、被扶助者に対して扶助者は扶助する義務を負うため、生活費を負担する必要があります

  3. (3)三親等内の親族

    家庭裁判所の審判により、三親等内の親族も扶養義務者に含まれる場合があります

    このように、法律で規定されている立場であれば、被扶養者が困窮していた場合は扶養義務者とされる可能性があります。しかし、生活保護などの審査の際には、さらに生活維持関係があるかどうかが重要になりますので、次に見ていきましょう。

3、生計維持関係とは

扶養の方法には生活費の負担や、同居して生活の面倒をみたりする場合などさまざまなケースが考えられます。

具体的には、以下に該当する場合は生活維持関係があると考えられ、扶養義務が発生します。

  1. (1)同居している

    同じ住所で生計をひとつにしているケースをいいます。

    住民票上、同じ住所に別世帯として登録する、いわゆる世帯分離をしていても同居とみなされます。

  2. (2)別居しているが、同一世帯であると考えられる

    別の住所に住んでいても、実際には同一世帯であると考えられる場合は生計維持関係があるとみなされます。

    単身赴任や入院など、一時的には離れて暮らしていても、ひとつの家族生活を営んでいるようなケースが該当します。

  3. (3)保険証や税法上の被扶養者

    保険や税法上、要件を満たして扶養に入った者は被扶養者となり、生計維持関係にあると考えられます。

    扶養に入っている専業主婦や、学生などが該当します。

4、扶養義務で困った際は弁護士に相談を!

血縁関係にあれば、多少無理をしても世話をしてあげたいと思う方もおられるかもしれません。しかし、夫婦や未成年の子どもではなく、年老いた親や兄弟を扶養することは大きな負担になります。無理に扶養したために、被扶養者ともども共倒れになってしまうというケースは少なくないのです。

扶養義務にまつわる金銭的なお悩みの場合は、まずは役所や、役所が解説している相談室などをご活用ください。

しかし、場合によっては法律問題が絡み、警察や弁護士に相談したほうがよいケースがあります。

  1. (1)扶養できないことを逆恨みし、嫌がらせを受けた

    同居はしていないし、連絡もほとんどとっていない身内について、行政から面倒をみるようにとの連絡が突然来たとき、多くの方が悩まれるでしょう。その結果、扶養できないという結論を出したとしても、当然のことです。

    しかし、その結果、逆恨みされてしまったというケースがまれに発生します。嫌がらせを受けている、命を脅かされているなどの事態に陥ったときは、まずは警察に相談してください。場合によっては刑事事件として扱ってもらうことも可能です。

  2. (2)介護などで寄与したのに適切な遺産相続が行われない

    経済的にも精神的にも被扶養者を支え、扶養したのち、被扶養者が他界して相続が発生するケースがあります。しかし、他の親族によって、適切な割合で相続が行われないということは少なくないようです。

    被扶養者が亡くなった場合、遺産相続の際に扶養で負担した金銭が寄与分として認められる可能性があります。もっとも、寄与分が認められるには、通常期待される扶養義務の範囲を超えているといえなければなりません。

    扶養していた人物が亡くなって傷心の最中、遺産相続でもめてしまった場合、これ以上もめたくないと泣き寝入りしてしまう方もいらっしゃるでしょう。しかし、弁護士に相談し、対応を依頼することで、証拠もそろいやすく、他の相続人との話し合いを代理人として進めてもらうよう依頼ができます。

    子どもと違って成人している者を扶養するケースでは期間が長く、負担も相当大きなものとなる可能性があります。財産があった場合には遺産相続などでトラブルに発展するケースもありますので、未成年の子どもや夫婦関係ではない血縁関係者の扶養について、自分がどうするべきか迷った場合は、将来のトラブルを未然に防ぐためにも弁護士に相談することをおすすめします

5、まとめ

扶養義務者について、どのような立場の人間が、どの程度の責任を負うのか説明してきました。

血縁関係にある人物が困っていればなんとか助けたいと思う場合もあれば、わだかまりがあるために生活に余裕があっても受け入れられないということもあるでしょう。また、それぞれの家庭の事情もあり、金銭的援助にせよ、同居などの世話をするにせよ、本人だけでなくご家族も大きな負担を覚悟しなくてはなりません。

そう考えると、気軽に扶養義務者であることを受け入れられないのはもっともな話です。行政から突然扶養義務者として連絡を受け、その結果、相続などでもめそうなときや、そのほかの法律的なトラブルに発展しそうなときは、お早めにベリーベスト法律事務所 宇都宮オフィスの弁護士にご相談ください。それぞれの事情に応じて、あなたにとってベストとなる方法をアドバイスします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています