風営法とは何か? 風営法違反行為や刑罰を解説

2022年04月25日
  • 一般企業法務
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風営法とは何か? 風営法違反行為や刑罰を解説

国の統計情報によれば、栃木県における2016年に行われた調査から2019年の調査までの間の飲食店の新規の事業所数は約350ありました。このように新規に開店した事業所も含めて、宇都宮市には、飲食店数が数多くあります。

飲食店では風俗営業の許可が不要だと思っていても、実は、今回の記事で解説するように、風俗営業の許可が必要な営業形態であったという場合もあります。この場合には風営法違反となり、刑罰を受けてしまう可能性があるため、風営法の規制にも配慮して営業する必要があるでしょう。

今回は、ベリーベスト法律事務所 宇都宮オフィスの弁護士が、風営法について解説します。

(出典:令和元年経済センサス‐基礎調査)

1、そもそも風営法とは

風営法とは、正式名称が「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」という法律のことです。風営法と聞くと、いわゆる性風俗店に関係する法律というイメージがあるかと思いますが、飲食店を営む方にも適用される場合がありますので、この法律に配慮する必要があるでしょう。

以下では、風営法の概要を説明します。

  1. (1)風営法の規制

    風営法は、「善良の風俗と清浄な風俗環境を保持し、及び少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止する」ことを目的に、「風俗営業」と「性風俗店関連特殊営業等」に対して規制を加えています。

    とくに飲食店営業の方に関しては「風俗営業」にあたる場合に、各種許認可や規制の対象になります

  2. (2)「風俗営業」とは

    それでは、「風俗営業」とはどのようなものをいうのでしょうか。
    風営法2条1項の各号によれば、以下のように5つの類型に定義されています。

    ● 1つめは「キヤバレー、待合、料理店、カフエーその他設備を設けて客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業」(風営法第2条第1項第1号)です。

    法律の条文に「料理店」が含まれており、「客の接待」をして飲食をさせるような場合には「風俗営業」にあたることになります
    このように、飲食店であっても風営法の対象になってしまう可能性があるので、注意が必要です。

    ● 2つめは「喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、国家公安委員会規則で定めるところにより計つた営業所内の照度を十ルクス以下として営むもの」(風営法第2条第1項第2号)が風営法の適用対象である「風俗営業」に該当するとされています。

    こちらも喫茶店やバーなどであっても、「風俗営業」に該当する場合があることがわかります。店内の明るさが10ルクス以下の飲食店は「風俗営業」にあたります。ちなみに10ルクスは、ろうそく1本程度、あるいは上映前の映画館と同等の明るさと例えられることが多いです。

    ● 3つめは「喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、他から見通すことが困難であり、かつ、その広さが五平方メートル以下である客席を設けて営むもの」(風営法第2条第1項第3号)が「風俗営業」にあたるとされています。

    こちらも、喫茶店やバーがなどであっても、他からの見通しができない5平方メートル以下の席を設けた形で営業する場合には「風俗営業」にあたることになります。

    ● 4つめは「まあじやん屋、ぱちんこ屋その他設備を設けて客に射幸心をそそるおそれのある遊技をさせる営業」(風営法第2条第1項第4号)をすることになる場合には、「風俗営業」に該当することになります。

    ● 5つめは規則で定められた「スロットマシン、テレビゲーム機」などの「本来の用途以外の用途で射幸心をそそるおそれのある遊技に用いることができるものを備える店舗」などを利用させ、「客に遊技をさせる営業」は「風俗営業」にあたるとされています(風営法第2条第1項第5号)。

    したがって、スロットマシンやテレビゲーム機などを備えて営業する場合には、飲食店であっても注意が必要になります。

    以上の5つの類型が「風俗営業」とされています。
    このように飲食店だからといって、風営法の適用がまったくないとは限らず、その営業形態によっては、風営法の対象になりますので、注意が必要です。

2、風営法 よくある違反行為

では、風営法の適用があった場合について、どのような行為が違反とされてしまうのでしょうか。いくつか、よく相談を受ける違反行為の事例についてご説明いたします。

  1. (1)無許可営業

    まず、第1に、無許可での営業が挙げられます

    風営法第3条第1項では、風俗営業を行おうとしている者は、風俗営業の種類に応じて、その営業所ごとに、管轄の都道府県公安委員会の許可を得なければならないとしています。

    先に説明したように、飲食店であっても「風俗営業」に該当してしまう場合がありますが、「風俗営業」を行っているのに、許可を受けていない場合には、風営法に違反することになります。

    これは、ご自身の営業が「風俗営業」であることを知っている場合はもちろん、知らなかったとしても風営法違反として、刑事罰の対象になってしまうので十分に注意する必要があるでしょう

  2. (2)名義貸し

    名義貸しも風営法違反となります(風営法第11条)

    名義貸しは、風営法の許可を受けた場合であっても、自分の名義を他人に貸して風俗営業を行わせる行為のことです。

    このような行為が許されると、実際には許可を受けていない他人が代わって営業することになりますので、営業許可制度が骨抜きになってしまいます。そこで、風営法では、名義貸しを禁止しています。

    こちらも刑事罰(風営法第49条第3号)の対象になり、さらに営業許可の取り消しや営業停止といった処分の対象にもなります。

  3. (3)客引きやつきまとい

    風俗営業を営むものが客引きをした場合や客引きをするために立ちふさがったり、つきまとったりする行為も風営法違反となります(風営法第22条第1項第1号、2号)。

    営業のためにこのような行為は安易に行ってしまいがちではありますが、これらの行為も禁止されており、やはり刑事罰の対象になります。

  4. (4)18歳未満の者が接待することなど

    風営法では、「少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止する」こと目的としています。したがってこのような目的達成のため、年齢制限に関する規制もあります。

    具体的には、18歳未満の者に客の接待をさせることや午後10時から翌日の午前6時までの時間において18歳未満の者に接客させること、20歳未満の者に酒類またはたばこを提供することなどが禁止とされています(第22条第1項第5号、同条第2項、第28条第12項第第3号、同4号、同5号)。

3、風営法違反の刑罰とは

風営法は、その違反があった場合には、営業許可の取り消しや営業停止といった行政処分のみならず、刑罰が定められています。

それでは風営法違反があった場合の刑罰はどのようなものがあるのでしょうか。
以下では先に2章で取り上げた違反行為を中心にご説明いたします。

  1. (1)無許可営業

    「風俗営業」を無許可で行った場合には、風営法第49条第1号にて、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、またはこれを併科するとされており、風営法の刑罰の中で最も重い処罰を受ける可能性がある行為類型です。

    なお、この「風俗営業」はいわゆる性風俗店のことをいうものではありません。性風俗店が無届けで営業を行った場合には、風営法第52条第4号に別に定められており、6月以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはこれを併科することとされています。

  2. (2)名義貸し

    名義貸しの場合は、無許可営業と同じく2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、またはこれを併科するとされています(風営法第49条第3号)。したがって、名義貸しも無許可営業と同様に、重い処罰を受ける類型となります。

  3. (3)客引きやつきまとい

    客引きつきまとい行為は、風営法第52条第1号により、6月以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはこれを併科するとされています。無許可営業や名義貸しより軽くはなっているものの、罰金刑だけではなく、懲役刑があり、重い処罰を受ける可能性がある行為です。

  4. (4)18歳未満の者が接待することなど

    18歳未満の者に客の接待をさせることや午後10時から翌日の午前6時までの時間において18歳未満の者を接客させること、20歳未満の者に酒類またはたばこを提供することなどは、1年以下の懲役、もしくは100万円以下の罰金またはこれを併科すると定められています(風営法第50条第1項第4号)。

    したがって、これらの行為は、客引きなどよりも重い処罰を受ける可能性があるといえるでしょう。

4、法的リスクを避けるためにも顧問弁護士の検討を

以上の通り、飲食店営業であったとしても、風営法の対象にならないとは限りません。知らないうちに風営法の対象となる「風俗営業」を営んでしまうこともあるのです。このような場合には、無許可営業となり、刑事処分を受けてしまう可能性もあるでしょう。また、一般の方には「風俗営業」に当たるのか否か、判断がつかず困ってしまうということも考えられます。

これらのリスクを避けるためにも、ぜひ日ごろから事業における法律問題を相談することのできる顧問弁護士をつけることをおすすめいたします。

顧問弁護士がいれば、上記のような事業をするにあたって困ったことがあったとしてもすぐに相談できますし、従業員との労働紛争が起こった場合などにも対応が可能です。

5、まとめ

ベリーベスト法律事務所では、顧問契約のプランを複数そろえ、お客さまのさまざまなニーズに対応しています。

また、当事務所では業種に応じた専門チームを設けており、業界に精通した対応が可能です。もちろん、飲食専門チームもあります。

弁護士だけでなく税理士や社会保険労務士が同じグループ内にいるため、税務問題や労務問題に対しても、ワンストップで問題解決が可能です。

これから事業を始めようと準備をされているなら、当事務所の顧問弁護士サービスもあわせてご検討ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています