違反すれば経営危機にも? 中小企業が意識すべきコンプライアンス
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大企業・中小企業を問わず、企業のコンプライアンスに対する社会の目は厳しさを増しています。コンプライアンスに違反したことで、市場からの退場すら余儀なくされた企業も多々あるのです。
企業にとってコンプライアンスの遵守は、社会で持続するための必須条件といっても過言ではないでしょう。
本記事では、とくに中小企業が意識すべきコンプライアンスの遵守および体制構築について、ベリーベスト法律事務所 宇都宮オフィスの弁護士が解説します。
1、企業が守るべき「コンプライアンス」とは
コンプライアンスという英単語は、通常「法令遵守」と訳されます。もともと「遵守」や「従順」、動詞では「何かに応じる、守る、従う」というような意味になります。
つまり、「何に従うのか」ということが、コンプライアンスを考えるうえで重要なポイントです。
コンプライアンスにおいて従うべきものは、言うまでもなく法律です。
コンプライアンスが関連する法律は、それこそ膨大な数になります。さらに、それらの法律は頻繁に改正がなされています。
そして、それぞれの業態や仕事の分野に応じて、その膨大な数の法律の規制を受けながら、企業は社会の一員としてコンプライアンス体制の確立と法令遵守を求められているのです。
しかし、その膨大かつ日々変化する法律を、それぞれの企業の業態に関係するものだけでもすべて完全に理解し活用方法を知っておくことは、非常に困難です。
大企業であれば法務やコンプライアンスのエキスパートである人材を確保することも可能ですが、人材難が慢性化している多くの中小企業では、それも難しいでしょう。
しかし、必要以上に心配する必要はありません。
実際には、企業として目指すべきコンプライアンスとは、「膨大かつ細かい法律を、すべて理解しなければならない」というものではないためです。
もちろん、法律は守らなければいけません。
しかし、すべての法律を理解しておかなくても、コンプライアンスを守る体制を構築したり、何らかの法律に関するトラブルが発生したときに連絡できる相談先を確保したりする、などの方法で対処することができるのです。
2、コンプライアンス違反をした場合のリスクとは?
事業の規模によらず企業がコンプライアンス遵守を徹底しなければならない背景には、「コンプライアンス経営に努めないことにより企業が負うリスクを、最小化する」ことがあります。
コンプライアンスに違反することのリスクは、企業の存亡すら脅かすことになりかねないものであるためです。
以下では、コンプライアンスに反したことにより企業が抱え込む可能性のあるリスクについて、企業のステークホルダーごとに整理して解説します。
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(1)消費者や取引先の離反
企業にコンプライアンスに違反する行為や社会規範から逸脱するような行為が発覚した場合、消費者や取引先はその企業の提供する商品やサービスの購入を手控えるようになります。このような消費者の行動は、「ボイコット」と呼ぶこともできます。
取引先が企業の場合、コンプライアンス違反があった企業と取り引きすることで、取引先のほうもコンプライアンス違反に問われるおそれがあります。そのため、コンプライアンスに反した企業との取り引きは、早々に解除されることが多いのです。
さらには、民事訴訟で損害賠償請求をされる場合もあります。
とくに食品や住宅など、最終消費者の購入が収益源である企業のコンプライアンス違反が発覚したとき、そのダメージははかりしれないものがあります。実際に、コンプライアンスに違反したことで市場からの退場を余儀なくされた企業は数多く存在しているのです。 -
(2)監督官庁からの行政処分や罰則
コンプライアンス違反が認められた企業に対する監督官庁からの処分や罰則は、近年、着実に厳しくなっています。
また、コンプライアンス違反があった企業に対する処分は、公表される事例が多いものです。それによって前述(1)であるような消費者や取引先の離反も招きかねません。
さらに、監督官庁による許認可が前提で営業を行っている場合には、コンプライアンス違反による業務の停止命令などが経営に重大な影響を招くことになるでしょう。 -
(3)株主からの代表訴訟
日本における株主代表訴訟とは、コンプライアンス違反により企業が被った損害について、株主が企業に代わって経営陣を相手取り裁判を起こして、企業が被った損害を経営陣の私財から賠償させるというものです。
株主代表訴訟は経営陣から企業に損害賠償が支払われるわけですから、これをみる限り、企業側にとってプラスといえるかもしれません。
しかし、もし株主代表訴訟によって経営陣が訴えられた場合、企業の意思決定機能はマヒしてしまう可能性があります。中小企業であればなおさら、そのリスクは高まります。
また、企業も、株主の主張に理由がないと考える立場をとる場合、株主代表訴訟に補助参加を行うことになる場合もあります。
そして、裁判は原則として公開されます。そして、裁判が長引けば、当該企業に対する社会的評価は低くなることが考えられます。
このように、株主代表訴訟は企業に大きな負担と損失を強いることになりかねないものであるのです。 -
(4)従業員による不正行為
コンプライアンスの重要性が叫ばれている昨今においても、「そのようなものを守っていたら、仕事にならない」と考える管理監督者は存在しています。
そのような管理監督者は部下にむちゃな営業ノルマを課したりする傾向があるため、結果として、従業員もコンプライアンスに無責任な行動をとるようになります。
一般的に、企業は消費者よりも圧倒的に高い情報量や交渉力を持っています。つまり、それだけ企業は交渉の場において消費者よりも有利な立場にあるということです。
その有利な立場を悪用して、「消費者を錯誤させるなどの行為を、直接的または間接的に従業員に対して強要する」ことは許されないことです。
従業員と消費者とのやり取りにおけるコンプライアンス上の問題であるだけでなく、このような行為が企業として定着することで、やがて従業員も企業の利益に反するような行動をとるようになる可能性があります。
たとえば、企業資産の私的流用、横領、架空取引、怠業などの行為をするおそれがあるのです。
また、従業員が企業側により違法なサービス残業や休日出勤を強要されて、本来支払われるべき賃金が適正に支払われていない場合には、従業員は「企業が労働基準法を遵守しないのだから、自分たちも社内規則やコンプライアンスを遵守する必要はない」と考えるようになるかもしれません。
そうすると、業務において向上心もなくなり、払うべき注意も払わず、ひいては企業の提供する商品やサービスの劣化につながる可能性があります。
一般的に、日本では従業員の企業に対する忠誠心は高いといわれがちですが、近年は必ずしもそうとはいえなくなりつつあります。
企業の職場環境や従業員のモラルとコンプライアンス意識を健全なものとするためには、まず経営陣からコンプライアンスの徹底を心がけなければならないのです。
3、コンプライアンスを遵守するためには
コンプライアンス遵守がなされない背景には、違反した本人の意図によるもののほか、コンプライアンスの重要性について従業員一人ひとりが十分な意識と知識を持ち合わせていないことが影響していた事例が多いようです。
したがって、コンプライアンス遵守を組織的に徹底していくためには、従業員へのコンプライアンスに関する教育や訓練が不可欠です。
研修の講師として、外部の専門家を招聘(しょうへい)することもおすすめします。
また、従業員がいつでも参照できるようなコンプライアンス・マニュアルの策定や、それに違反したときの罰則規定も設け、従業員に周知しておくことも重要です。
4、企業法務を担う顧問弁護士の役割とは
企業がコンプライアンスを遵守するうえでは、コンプライアンス体制を構築するときの相談相手や、何らかの法律に関するトラブルが発生したときにすぐに連絡できる専門家を確保しておくことが重要になります。このとき、顧問弁護士は、相談先として適切で信頼のおける相手となります。
顧問弁護士とは、企業が弁護士に一定の顧問料を支払うことで、顧問弁護士契約の範囲内で依頼人の法務関連の相談や業務に優先的に対応する、頼人にとって一定の専属性がある弁護士のことです。
弁護士に相談できるのは、何らかのトラブルが発生したときだけではありません。
コンプライアンスマニュアルの策定や従業員に向けたコンプライアンス研修の講師も、弁護士に依頼することができます。
顧問弁護士に適任であるのは、企業が属している業界の現状に精通し、さまざまな法律分野に知見があり柔軟かつ実践的な対応ができる弁護士です。また、万が一のときに備えて、休日でも対応できる弁護士が好ましいでしょう。
さらに、多数の弁護士が所属している、組織力の高い法律事務所を選ぶことをおすすめします。
5、まとめ
企業のコンプライアンス体制構築およびその遵守は、現代社会に存在する企業にとって必要不可欠なものです。そのために、顧問弁護士契約は企業にとって非常にメリットのあるものとなります。
コンプライアンスについて顧問弁護士契約をご検討のときは、ベリーベスト法律事務所までご相談ください。
ベリーベスト法律事務所ではワンストップで対応可能な顧問弁護士サービスを提供しており、顧問弁護士契約締結先からはさまざまな法務相談を承っています。また、案件によっては弁護士だけではなく税理士や社会保険労務士、弁理士などの専門家とも連携して対応しています。
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