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入社後に社員の経歴詐称が発覚! すぐに解雇することに問題はあるか?

2019年10月23日
  • 労働問題
  • 経歴詐称
  • 解雇
入社後に社員の経歴詐称が発覚! すぐに解雇することに問題はあるか?

採用活動にあたっては、履歴書や職務経歴書に記載された経歴を前提に面接などを実施することになりますが、場合によっては入社を強く希望するあまり、経歴詐称をしてしまっているケースもありえます。経歴詐称があることが判明した場合、会社側は入社後その労働者をすぐに解雇できるのでしょうか。最近の判例において、履歴書、職務経歴書や面接での言動において労働者による経歴などの詐称があったとして、解雇が有効とされた事例はあります。しかしながら一方で、もともと法律上制限されている解雇の判断は、慎重に進める必要もあります。
ここでは、経歴詐称があった場合の対応などについて、宇都宮オフィスの弁護士が解説します。

1、経歴詐称が判明したら

  1. (1)経歴詐称とは

    経歴詐称とは、自らの学歴や職歴などの経歴を偽ることです。学歴の詐称であれば、たとえば最終学歴を実際には高校卒業であるのに大学卒業にする、退学しているが卒業したことにするなどのケースがあります。職歴であれば、過去の就業企業名や職位、転職回数、契約形態、保有資格などについて偽るケースがあります。
    経歴詐称については、その行為自体がすぐに犯罪行為に該当するというわけではありませんが、場合によっては犯罪に該当する可能性があると言えます。たとえば、資格がないのにあると偽って相手方をだます行為については、軽犯罪法(第1条第15号)に反する可能性がありますし、その行為によって相手方から金銭を取得しようとした場合には、詐欺罪に該当する可能性があります。
    したがって、採用にあたっては経歴を詐称するような応募者を入社させない、万一入社後経歴詐称が判明した場合には、早急に適切な対応をとるという姿勢が大切になると言えるでしょう。

  2. (2)すぐに解雇できる?

    経歴詐称が何らかの状況により判明した場合、企業側はその従業員をすぐに解雇してよいのでしょうか。この場合であっても、経歴詐称=解雇、という単純な考え方をとることはできず、注意が必要です。
    経歴詐称が判明した場合に、解雇の対象とすることができるのかについては、基本的には経営者の判断に任されますが、解雇はもともと法律上制限されていることから、解雇権の濫用と判断されないよう慎重にすることが必要です。解雇の判断にあたっては、解雇が相当と言える程度の偽りなのかがポイントになると言えるでしょう。ささいな偽りやミスに近いと思われるような場合にまで、解雇とするのは行きすぎと言えます。一方で、採用を決定した条件に関連するような偽りであり、その偽りが判明していたら採用しなかったような場合であれば、解雇もやむを得ないとの判断になりえます。

2、経歴詐称による解雇とは?

経歴詐称による解雇については、懲戒解雇と普通解雇の二つの場合が考えられます。

  1. (1)懲戒解雇

    懲戒解雇とは、会社が労働者へのペナルティーとして実施する解雇のことで、出勤停止、減給、戒告などの懲戒処分の種類の中で、もっとも重い処分に該当します。懲戒解雇に該当すると判断する場合には、その理由が就業規則などで明記されていることが必要になりますので、経歴詐欺が懲戒事由として明記されていることが必須となります。
    また、懲戒解雇を実施する前には、就業規則・労働協約に定めがある場合には、弁明の機会を与えることが必要になります。また、就業規則・労働協約に定めがない場合であっても、弁明の機会が与えられないでなされた解雇を無効とした裁判例はいくつもあります。すなわち、懲戒は、会社が労働者に実施するペナルティーであるため、根拠をあらかじめ労働者に明示し、弁明の機会を与えることにより、労働者の保護を図っているのです。

  2. (2)普通解雇

    普通解雇とは、懲戒解雇、整理解雇以外の解雇、すなわち労働者の債務不履行を理由とする解雇です。普通解雇であっても、解雇事由は就業規則に明記されていることが多く、解雇理由は明確にされる必要があります。また、普通解雇をする場合には、解雇事由のみならず、過去の同様の事案への対応との比較など、従業員間の公平性の観点なども必要となります。

3、継続勤務に関するリスク

経歴詐称が判明した従業員であっても、業績がよく会社への貢献が認められる場合などに、そのまま勤務を継続させることは、経営者の判断として可能です。しかしながら、ケースによっては一定のリスクがありますので、以下簡単にご説明します。なお、勤務を継続させる場合でも、減給や出勤停止など何らかの懲戒処分を検討することも、妥当性の観点からは必要と言えるかもしれません。

●他の従業員への影響(社内規則や過去の事例との平等性)
経歴詐称について、何らかの理由により他の社員が知る状況になっている場合、その従業員への対応については、細心の注意を払う必要があります。 たとえば、社内規則に明らかに懲戒事由として明記されているにもかかわらず、何らの対応もなしに勤務を継続させることになれば、他の社員からの不満や疑問が生じる事態となりえます。また、過去の同様の経歴詐称の事例で解雇としたケースがあれば、従業員間の平等性の観点からも問題が生じかねません。
このような問題の対応にあたっては、他の従業員の業務に対するモチベーションへの影響について、最大限考慮する視点が必要です。

●犯罪歴や法令違反行為に関する詐称のケース
経歴詐称のなかでも、犯罪歴について、あえて隠していた場合や、有していない資格を有していると偽っていた場合などは、どのように対応すべきでしょうか。いずれの場合も、その従業員の勤務を継続させることについては、慎重に判断しなければならないケースと言えます。
犯罪歴については、採用の際、会社の用意したエントリーシートに賞罰欄がある場合には、犯罪歴を記入することが求められていると言えます。また、面接などで犯罪歴の有無について確認された場合にも、申告すべき場合に申告しないと詐称となりえます。ただし、この場合の犯罪歴とは、確定した有罪判決ですので、公判中であるとか、嫌疑不十分で不起訴になった場合などは、犯罪歴にあたりませんので申告は不要です。また、有罪判決を受けて刑をうけたのち一定の期間たつと、刑の効力は失効することになりますので、この場合も過去の犯罪歴として申告する必要はなくなります。
一方、資格などについて偽りの称号を使用していたような場合は、その行為自体が法令違反行為になっている可能性も高いと言えるでしょう。法律違反が生じている場合には、就業規則などでも解雇事由に該当している可能性が高いと言えます。

4、経歴詐称を事前に見抜くためには?

これまで、経歴詐称が判明した場合の対応についてみてきましたが、採用活動にあたっては、このような事態が生じないようにしておくことが最も重要と言えます。コンプライアンスを徹底し企業秩序を保つべき企業法務の立場からも、人事部と協力して対応する必要があると言えます。経歴詐称を事前に発見する方法としては、次のような対策が考えられます。

●必要書類の入手
学歴や職歴は、卒業証明書や退職証明書などを入手しておくことにより確認できます。また、資格などについても、証明になるものを用意してもらうようにするなどして、エントリーにあたって提出してもらう必要書類を十分なものにしておくことにより、経歴詐称をある程度未然に防止することは可能です。

●面接での入念なヒアリング
経歴書の内容に経歴詐称があったとしても、面接で掘り下げてヒアリングすることにより、それを発見できる可能性は十分にあると言えます。特に、採用のカギになるような経験や資格などについては、詐称しているのであれば答えにくいような質問を準備しておくことにより、詐称があれば見抜けるようにしておく姿勢が必要でしょう。
学歴や職歴の詐称でなくとも、たとえば健康状態、病歴などについても、労働者側から積極的に説明する義務はありませんので、履歴書の記載などから気になる点がある場合には、採用側が積極的に確認するスタンスが必要と言えるでしょう。

●インターネット、SNSの利用
インターネットが活用される今日、採用側もインターネットの情報やSNSなどを利用することにより、応募者の学生時代や前職の活動について、情報を事前に把握することがある程度可能です。必要以上に応募者のプライベートを知ろうとするのは問題がありますが、もともとインターネットやSNSで知ることのできる情報は、応募者側もある程度公開する意思があって掲載しているとも言えますので、経歴に関連する情報を入手する目的であれば、ある程度は問題ないと言えるでしょう。

●関係者などから直接裏を取る方法
その他、インターネットやSNSの活用にとどまらず、学生時代の活動や過去の職場での活動について、大学、過去の職場や業界関係者、知人などを通じて、直接情報を入手することもできるでしょう。

5、まとめ

従業員の経歴詐称が判明したときの対応については、慎重に進める必要があると言えます。経歴詐称が判明した場合の解雇について慎重に対応する必要があることはもちろんのこと、勤務を継続させる場合の対応についても注意が必要です。
ご不安をお持ちでしたら、解雇を最終判断する前に、お気軽にベリーベスト法律事務所・宇都宮オフィスまでご相談いただければと思います。宇都宮オフィスの弁護士が、適切な対応にむけて全力でサポートいたします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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