外国人労働者を雇用したい! 採用前に知るべき法律を弁護士が解説

2020年03月18日
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外国人労働者を雇用したい! 採用前に知るべき法律を弁護士が解説

平成31年4月1日より「出入国管理及び難民認定法」が改正され、受け入れられる外国人労働者の幅が広がりました。しかしながら、外国人労働者の雇用経験が少ない事業者にとっては法律の問題など理解すべき点が多く、採用がためらわれるのも事実です。

外国人労働者は、事業者にとっては国内で集まらない人材を採用するための選択肢となり、熟練労働者にとってはチャンスを広げる機会となります。本記事では、ベリーベスト法律事務所 宇都宮オフィスの弁護士が外国人労働者を雇用する際に知っておくべき法律や大まかな手続きを紹介します。

1、外国人労働者雇用に関する法律3つ

外国人労働者雇用に関する法律として知っておくべきものは、主に出入国管理及び難民認定法、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(かつての「雇用対策法」)、そして労働基準法です。少なくともこの3つの法律について知り、その他厚生労働省などに指定された手続きに従えば、外国人の雇用が可能となります。

●出入国管理及び難民認定法
外国人を雇用する上で絶対に知らなくてはいけないのが、出入国管理及び難民認定法(以下、入管法)です。入管法では、外国人の就労だけでなく日本に訪れとどまるために必要な決まりが書かれています。永住資格の取り方や、ビザの取り方などが具体的な内容となります。また、技能実習制度についても、この入管法の定めるところによります。

ちなみに入管法における「外国人」とは、日本国籍を持っていない方のことを言います。したがって、元日本人を雇用する場合も、入管法の定めに従うことになる点にご注意ください。

入管法は、2019年4月1日に改正がありました。改正入管法について詳しく知りたい方は、外国人雇用サービスセンターか、外国人雇用に携わった経験が多い弁護士へご相談ください。

●労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律とは、かつての「雇用対策法」から名称と内容が変更されたものになります。これは、労働力の需給を整えるための法律で、ハローワークや雇用主の義務や努力義務について定められています。外国人雇用に関しては、外国人雇用状況を届け出することや離職した場合の再就職支援などが定められています。

外国人が不利な扱いを受けないことや不法就労を防ぐことを目的としています。

●労働基準法
労働者を雇う以上、労働基準法は無視できません。日本国籍を持つ従業員同様、外国人を雇用する際も日本の労働基準法に従う必要があります。

2、外国人労働者を法律に基づいて受け入れるポイント

外国人労働者を法律に基づいて受け入れるためには次のポイントを意識しましょう。

  1. (1)在留資格の確認

    外国人労働者を雇用する場合にもっとも大切なのは在留資格の確認です。いかに素晴らしい能力と人格を備えた外国人であっても在留資格あるいは就労資格を持っていないということが原因で雇用を禁じられます。

    入管法において在留資格は主に次のものが定められています。

    • 身分によって在留を認められた外国人
    • 特定の仕事における在留資格を取得した外国人
    • 高度専門職
    • 特定技能ビザを取得した外国人
    • 技能実習生
    • 留学生や滞在家族など


    まず、身分によって在留を認められた外国人とは永住者や日本人の配偶者、定住者などです。これらに該当する外国人は日本人と同じように雇用することが可能で特に制限されません。従来通り気にせず採用して大丈夫です。多くの外国人労働者がこれにあたります。

    外国人の労働といえば就労ビザを活用するイメージがあるかもしれませんが、就労ビザで働く外国人はさほど多くありません。それは外国人に単純労働を認めず熟練労働者を受け入れる機会となっているからです。経営や法務、医療、報道、介護、工業、指導者などに従事する方がこの仕組みを活用しています。また、就労ビザを取得できる方の中で高度専門職の基準をクリアできる方は一般的な熟練労働者に比べてさらに優遇されます。高度専門職は2019年4月1日より加わった基準ですが、雇用主にとっては長期間雇用できるメリットがあります。

    また、雇用情勢の変化により外国人から単純労働者を受け入れる必要性が高まってきたことにより、特定技能14分野で働く労働者の受け入れが認められつつあります。現在は外食、宿泊、農業の3分野のみですが他にも造船や建設、航空などの業務で外国人受け入れが始まる見込みです。

    そして安定した外国人雇用を考えるなら技能実習生を雇うことも可能です。技能実習生は管理団体から紹介してもらえるメリットがある一方で、原則は最長5年で帰国となります。一部の労働者は特定技能ビザを取得させることが可能です。

    最近では、よく留学生のアルバイトを見かけます。しかし、実のところ、留学生は就労ビザを持っていないため、そのままでは日本国内での労働は認められていません。彼らは出入国在留管理庁によって資格外活動の許可を受けて働いているのです。もちろん、本来の在留資格が認められた活動を阻害しない範囲に止まります。

    ここまでの内容を踏まえ、御社でどのような外国人労働者を雇うことができるか考えてみましょう。

    そして外国人労働者の雇用期間は有限です。最短で3か月、最長で5年が原則で高度専門職2号や身分に基づく在留資格の場合は無期限です。よって外国人労働者を雇うときは必ず在留資格の種類と期限を確認してください。

  2. (2)雇用契約書の作成

    入管法の問題を解決できれば晴れて外国人労働者を雇うことができます。雇用契約書は日本のものと同じで大丈夫ですが労働者が日本語に慣れていないことも考えられます。合意する前にていねいな解説を心がけましょう。また、海外ではあらかじめ従事してもらう業務内容を明確に定めることが一般的だともいわれています。したがって、日本企業特有とも言われているメンバーシップ型雇用が外国人に合わない可能性が考えられるでしょう。メンバーシップ型雇用の仕組みについて、ていねいに説明しておくことが望ましいです。

  3. (3)雇用保険の加入

    日本人と同じように雇用保険に加入しますが、外国人の申請をする場合は雇用保険の資格取得あるいは資格喪失届の所定欄に名前や在留資格、在留期間を記入します。在留資格は在留カードとパスポートで確認できます。

  4. (4)外国人雇用状況の届け出

    外国人雇用状況の届け出は雇用保険の届けをすることで代用できます。よって外国人雇用状況届出書の提出が必要となるのはその外国人労働者が雇用保険の被保険者とならない場合です。外国人雇用状況届出書は外国人を雇用した場合とその外国人が離職した場合に提出します。提出先はハローワークですがインターネット上での手続きも可能です。

  5. (5)技能実習制度の利用について

    技能実習制度は日本で学んだ技能を母国で活かすための制度です。技能実習生を最長で5年間受け入れることができる制度ですが、ただの労働力補填とならないよう技能実習の計画と、1年目、3年目の技能実習試験が必要となります。

    従来、技能実習生に長く働いてもらうことは難しかったです。しかし、入管法改正によって技能実習生が特定技能ビザを取得することが可能となりました。特定技能1号は3年間の技能実習で、特定技能2号はさらに熟練した技能を持っている特定技能1号労働者に対して認められます。

    つまり、技能実習生を長く雇いたいならそれだけ本気で育てる必要があるということです。

3、外国人労働者雇用のトラブルは法律のプロへ相談を

外国人の雇用については日本人とは異なるトラブルがあります。時には罰金や懲役に処せられることがあるのでご注意ください。

  1. (1)不法就労は処罰の対象

    外国人労働者の雇用でもっとも警戒すべき問題が不法就労です。不法移民と言われることもありますがそもそも就労資格を持っていない外国人を雇うと3年以下の懲役または300万円以下の罰金となります。もし、不法就労者の雇用で営利を得ていた場合はさらに罰則が重くなります。

    不法就労者は最初から労働資格を持っていない場合と、在留期限が切れてしまった場合があります。在留資格が曖昧である場合も安易に雇わず入国管理局へ連絡しましょう。同情して働かせることも、弱みを握って働かせることも同じく罪です。

    当然、不法就労した外国人自身も処罰の対象となります。

    不法就労を避けるための対策はただひとつ、在留カードを確認することです。在留カードをなくしたと主張されたら、必ず入国管理局へ連絡してください。

  2. (2)連絡が取れなくなったらどうする?

    雇用した外国人労働者が、ある日突然、会社に来ない、探してもいないなど、行方不明になってしまったらどうしたらよいのでしょうか。さまざまな意味で心配されることは間違いないでしょう。

    そのようなときは警察と入国管理局に連絡してください。考えたくない話ですが、外国人労働者の中にも麻薬の取引など犯罪に巻き込まれる方、逆に犯罪に加担する方がいるため早急の捜査が必要となります。

  3. (3)外国人雇用状況の届け出は必須

    外国人雇用状況の届け出を怠った場合は30万円以下の罰金に処されます。速やかな手続きをしてください。その外国人が雇用保険に加入する場合は雇用保険の手続きが外国人雇用状況の届け出になります。

    繰り返しになりますが、外国人は日本人と同じ労働法で守られます。外国人だからと給与を安くしたりその他差別的な扱いをしたりすることは認められません。

  4. (4)外国人雇用に慣れていないなら弁護士へ相談を

    外国人の雇用に慣れていないなら、弁護士に相談しましょう。

    トラブルが起きると労働問題と外国人特有のトラブルが併発して解決が難しくなります。また、外国人雇用問題に対する経験を持つ弁護士は多くないため信頼できる方に外国人の雇用要件や技能実習制度の活用について相談することが望ましいです。

    弁護士は雇用主に変わって難しい手続きを引き受けてくれるメリットもあります。

4、まとめ

外国人労働者を雇う際に必ず知っておくべき法律は入管法です。労働基準法については、日本人労働者を雇う際と同様の知識で十分です。労働者を雇う経営者という立場であれば、必ず知っておくべき法律ですが、あまり詳しくないのであれば、万が一の事態を避けるためにも、弁護士や社労士などのサポートを受け、雇用することを強くおすすめします。

法的な事項以外にも外国人雇用で起きるトラブルに先回りで対処したいときは、ベリーベスト法律事務所 宇都宮オフィスでご相談ください。経験豊富な弁護士があなたをサポートします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています