ネットショップ運営でトラブルに遭遇しないか心配! どうすべきか弁護士が解説
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インターネット通販は急速に拡大している中、国民生活センターに寄せられるインターネット販売に関する相談件数は、平成30年1年間で145,042件にのぼり※、トラブルも増加していることがわかります。また、ショップ運営に際しては、さまざまな法律に対応することが求められ、対応していないと法律違反として罰則の対象となったりして、事業自体に影響が及ぶ可能性もあります。ここでは、ネットショップ運営にあたり注意すべき点や必要な対応について、宇都宮オフィスの弁護士が解説します。
※消費生活相談データベース(PIO-NET)より
1、ネットショップ運営者が陥りがちなトラブル
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(1)サービス提供方法の問題
●誇大表示
商品をより良く見せようとして、事実と違う表示をしてしまったり、実際のものより著しく良い商品、有利なサービスと誤解させるような説明をしてしまったりすると、誇大表示として特定商取引法の違反となり、業務停止命令などの行政処分や罰則の対象となる可能性があります。
●申し込み画面の不整備
あるボタンをクリックすれば、それが有料の申し込みとなることを、消費者にわかりやすく表示していないために間違って申し込んでしまうようなケースや、申し込み内容を確認したり訂正したりする機会がないような申し込み画面のケースは、「顧客の意に反して売買契約などの申し込みをさせようとする行為」として、特定商取引法上違反となる可能性があります。
●広告方法のトラブル
集客には広告が重要となりますが、ネットショップの場合、消費者があらかじめ承諾しない限り、事業者は電子メール広告やファクシミリ広告を送信することはできず、承諾なくこれをしてしまうと特定商取引法違反となります。なお、消費者から承諾や請求を受けた場合は、電子メール広告の場合は、最後にメール広告を送信した日から3年間、ファクシミリ広告の場合は、最後にファクシミリ広告を送信した日から1年間、その承諾や請求があった記録を保存することが必要です。なお、次のような場合は、規制の対象外となります。
- 契約内容や契約履行に関する通知など「重要な事項」を通知する通信文の一部に広告が含まれる場合
- 消費者からの請求や承諾を得て送信するメールまたはファクシミリ広告の一部に広告を記載する場合
- フリーメールアドレス等の利用者が、無料の条件として、そのアドレスでメールを送信すると、当該メールに広告が載るものなどの一部に広告を記載する場合
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(2)事業者のミス
●届け出の不実施
ネットショップも個人事業であるため、ショップで取り扱う商品によっては、届け出が必要となります。必要な届け出をしないで事業を開始すると法律違反になります。たとえば、次のような届け出があります。
- 中古品:古物商許可(所轄の警察署)
- 食品:食品衛生法に基づく営業許可(所轄の保健所)
- 酒類:通信販売酒類小売業免許(所轄の税務署)
- 化粧品:化粧品製造販売許可(所轄の保健所各都道府県の薬務課など)
※海外ブランドの化粧品を直接輸入販売する場合
医薬部外品製造販売許可
※国内の製造業者や輸入業者からの仕入れの場合は不要
●個人情報保護法違反
ネットショップを運営するにあたっては、顧客情報など個人情報を扱うことが必須です。個人情報を扱う事業者は、個人情報保護法に従って適切な管理をする必要があります。個人情報保護法の監督機関として個人情報保護委員会が設置され、違反事業者に対して指導・助言・措置勧告、措置命令などをします。措置命令に違反した場合、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。万一、個人情報を漏えいしたりすれば、信用を失墜させ、事業に多大な影響が生じます。
●著作権法違反
ネットショップは、インターネット上のホームページなどに商品画像や説明を掲載する販売方法であるため、ホームページなどで著作権法違反をしないよう気を付ける必要があります。他人のホームページの記事や画像を勝手にそのまま使用したりする行為は、著作権法違反の可能性が高い行為です。違反者個人には、著作権侵害の態様により異なりますが、最大で10年以下の懲役または1000万円以下の罰金が科され、また、法人による侵害の場合は、3億円以下の罰金が科されます。利用の差し止め請求や損害賠償請求の対象にもなり、事業に影響が及びます。 -
(3)消費者からもたらされるトラブル
●未払い
購入者からの代金の支払いがなされないというトラブルも想定されます。このようなケースについては、まずはメールで催促し、それでも支払いがなければ電話で催促するとよいでしょう。それでも支払いがなされない場合は内容証明郵便での催促になりますが、今後のお付き合いを考える場合には、最終手段とすべきでしょう。このようなトラブルの予防として、代金先払いの方法を選択するなども有効です。
●ネット上の誹謗中傷書き込み
購入者が、商品などの不満をネット上に書き込むなどにより、営業妨害となるトラブルも想定できます。事実誤認情報や企業価値を低下させる情報がネット上に掲載されると、不特定多数に短時間で情報が伝わるため、思いがけず被害が拡大する可能性があります。そこで、そのような情報を素早く削除・訂正するなどの対処をする必要があります。サイトによっては、削除依頼をするためのフォームを準備していますのでそれを利用して削除依頼をする方法があります。また、一般社団法人テレコムサービス協会が作成したガイドラインに従って、送信防止措置依頼をする方法もあります。個人での対応に限界を感じた場合には、弁護士など専門家に依頼し、法的手段による対応を検討する必要があるでしょう。
2、トラブルを未然に防ぐためにできること3つ
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(1)法律の基本知識/ネットショップのルールなどの習得
自らが行う事業に関連する法律にどのようなものがあるか、その規制は何か、具体的にどのような対応が必要かなどについて、ショップ開設前にきちんと把握し、準備しておくことが必要です。インターネット上で調べられる情報だけでも基本的な知識を得ることは可能ですし、自身だけで判断することに不安がある場合には、弁護士など法律の専門家に相談することも一案です。
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(2)ホームページの記載などでの対応
特定商取引法は、通信販売が隔地者間の取引であり、消費者にとって広告が唯一の情報となることを踏まえ、広告の記載が不十分、不明確であることから生じるトラブルを避けるため、広告に表示する事項を次のように定めています。従って、まずこれらをホームページに記載する必要があり、これがないと違反になります。
- 販売価格(送料についても表示が必要)
- 代金の支払い時期、方法
- 商品の引き渡し時期
- 商品の売買契約の申し込みの撤回または解除に関する事項(返品の特約がある場合はその旨含む)
- 事業者の氏名、住所、電話番号
- 事業者が法人であって、電子情報処理組織を利用する方法により広告をする場合には、当該販売業者など代表者または通信販売に関する業務の責任者の氏名
- 申し込みの有効期限があるときには、その期限
- 販売価格、送料など以外に購入者などが負担すべき金銭があるときには、その内容およびその額
- 商品に隠れた瑕疵(かし)がある場合に、販売業者の責任についての定めがあるときは、その内容
- いわゆるソフトウェアに関する取引である場合には、そのソフトウェアの動作環境
- 商品の売買契約を2回以上継続して締結する必要があるときは、その旨および販売条件
- 商品の販売数量の制限など、特別な販売条件があるときには、その内容
- 請求によりカタログなどを別途送付する場合、それが有料であるときには、その金額
- 電子メールによる商業広告を送る場合には、事業者の電子メールアドレス
また、前述した通り、法は、「顧客の意に反して売買契約などの申し込みをさせようとする行為」を禁止していますので、購入に至る操作画面の中で、有料の申し込みとなることを明示したり、申し込み内容を確認できる機会を用意したりするなどの対応が必要となります。
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(3)問い合わせフォーム、相談窓口の充実
消費者が疑問に思った点や確認したいことについて、気軽にショップ運営者に確認できるような体制をあらかじめ作っておくことで、トラブルを未然に防ぎ、また小さなトラブルが悪化することを防げます。
3、まとめ
ネットショップを運営していく場合、お客さまとの関係でさまざまなクレームや法的問題に直面することがあります。自身で対応方法を確立しておくのはもちろんのこと、このようなときに備え、法的な問題について気軽に相談できる顧問弁護士を利用するのも一案です。ベリーベスト法律事務所は、低コストで始めることができる顧問弁護士サービスもご用意していますので、ぜひ一度ご相談いただければと思います。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています