遺産分割協議をやり直したい! やり直しが可能なケースや注意点とは

2020年05月27日
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遺産分割協議をやり直したい! やり直しが可能なケースや注意点とは

相続が発生すると、一般的に遺産分割協議が行われます。個人的な話し合いが難しいときは、家庭裁判所による調停制度を利用することも可能です。実際に、宇都宮家庭裁判所でも「遺産の分割に関する処分など」にまつわる調停が、平成30年度だけで209件行われています。

遺産分割協議が終わって遺産分割協議書も作成し終わったものの、何らかの理由で遺産分割協議をやり直したいというケースがあります。しかし、一度同意してしまうと遺産分割は終了したことになり、原則やり直すことはできません。

それでも、場合によっては改めて遺産分割協議をやり直すことができるケースがあります。この記事では、遺産分割のやり直しを検討されている方へ、遺産分割をやり直せるケースとやり直ししないために注意すべき点について、宇都宮オフィスの弁護士が解説します。

1、遺産分割協議をやり直すことはできる?

遺産分割協議は遺産の分け方を相続人間で話し合うものです。したがって、相続人全員の同意があれば遺産分割協議をやり直すことは理論上可能であるとはいえます。

しかし、一度合意に至った遺産分割協議を再度行うのは負担ですし、他の相続人は不満がないケースは少なくありません。つまり、客観的な理由のないやり直しは難しいといってよいでしょう。

なにより、遺産相続のやり直しは、必ずしも円満に進むとは限らず、その分とても神経をすり減らすものです。相続問題が原因で親族が疎遠になることもあるほどです。そのため、やり直しが本当に必要かどうかを、しっかり考える必要があります。

もし「新たな財産が見つかった」というような場合は、その財産の価値によっては遺産分割協議のやり直しではなく、新たに見つかった財産についてのみの協議で済む場合もあります。

2、遺産分割をやり直すことができるケース

前述のとおり、遺産分割協議は相続人全員が参加して行われます。相続人全員が合意しなければ、相続を進めることができないためです。遺産分割協議を行っても、どうしても話がまとまらないときは遺産分割調停に発展し、最終的には遺産分割審判によって裁判所が法定相続分に従って遺産を分割することになります。

しかし、調停や審判による遺産分割であっても、遺産分割そのものが無効になるケースでは例外としてやり直しができることがあります。ここでは遺産分割をやり直すことができるケースを紹介します。

  1. (1)相続人以外が遺産分割協議に参加したケース

    相続人以外が遺産分割協議に参加したケースとは、たとえば親子関係が存在していない子どもを含めて遺産分割協議を行った場合が該当します。再婚した連れ子との間で養子縁組をしていない、つまり事実上の親子というだけでは遺産分割協議に参加することはできません。このケースでの遺産分割協議は法律的に無効となり、やり直すことができます。

  2. (2)相続人が遺産分割協議に参加しなかったケース

    一部相続人を除外して行われた遺産分割協議も無効です。たとえば、前妻との間の子どもや、認知した婚外子を除外した場合などを出席させず、遺産分割協議を行ったケースなどが該当します。なお、遺産分割協議後に新たな相続人が判明するケースもあるでしょう。

    ただし、失踪宣告を受けていた相続人の生存が判明した場合は、遺産分割協議の無効は認められないため、やり直しはできません。

  3. (3)新たに多額の財産が見つかったケース

    遺産分割した後に新しい財産が見つかり、それが遺産の大部分を占めるほどの金額であった場合には遺産分割協議のやり直しが可能とされています。

  4. (4)意思表示に問題があったケース

    遺産分割協議の過程で、相続人の誰かがわざと遺産を隠していた場合は無効となりえますし、強迫や詐欺などによって相続人の意思表示に問題があった場合には取り消すこともできます。したがって、遺産分割協議のやり直しが可能なケースのひとつとなるでしょう。

3、遺産分割をやり直す手続き

上記のケースに該当する場合や、そもそもの遺産分割に後から不満が出てきてやり直したくなった場合でも、相続人全員の合意があれば遺産分割協議をやり直すことができます。このとき、法的な手続きはありません。全員が集まって再度協議する必要があるものの、手続きそのものは難しくはないでしょう。

他方、遺産分割そのものが無効になるケースであったとしても、他の相続人が協議を拒否することがあります。このように、協議が難航した場合は遺産分割調停を申請することになります。

自分が相続人であれば、申立人となることができます。申立先は「相手方のうちのひとりの住所地の家庭裁判所または当事者が合意で定める家庭裁判所」と定められているので、宇都宮市に相手が住んでいる場合は宇都宮家庭裁判所に申し立てをします。

その際に必要な書類は、申立書1通と人数分の写し、被相続人・相続人全員の戸籍謄本、相続人全員の住民票または戸籍附票、遺産に関する証明書(不動産登記事項証明など)などです。申し立てをすると裁判所から第1回期日の呼出状が届くので、その指示に従って調停に臨みます。

調停でも決着がつかない場合は、審判に自動的に移行します。特に手続きは必要なく、家庭裁判所から審判に移行した旨の連絡と審判期日の呼出状が送られてきます。こちらも指示に従えば問題ありません。

4、遺産分割のやり直しにあたっての注意点

遺産分割協議をやり直す場合には、相続人全員が参加したうえで遺産分割について話し合います。話し合いの結果まとまった内容については、新しく遺産分割協議書を作成してください。

遺産分割協議のやり直しによる注意点はそれだけではありません。本項では、税金に関わる注意点を紹介します。

  1. (1)贈与税や所得税が課税される

    税法上、1回目の遺産分割協議で相続が終わったとされるため、相続のやり直しによる遺産の移転は、譲渡あるいは贈与とみなされます。その場合、税務上は贈与税や所得税などを課税されることになるでしょう。

    贈与税額は相続税額よりも高くなるため、思いもよらない高額になることもあるでしょう。また、「小規模宅地等の特例」など、相続税の算出で利用できる、税軽減のための特例が利用できないこともデメリットのひとつです。

  2. (2)不動産取得税が課税される

    すでに名義変更が済んでいる遺産がある場合には、再度名義変更が必要になります。かかるのは、名義変更手続きの手間だけではありません。不動産の登記名義の変更を行う際には登録免許税がかかるだけでなく、不動産を譲渡や売買で取得したときと同じように不動産取得税が課税されます。

5、遺産分割協議のやり直しを生じさせないためにできること

遺産分割協議のやり直しは可能ですが、デメリットもあります。そのため、そもそもやり直しが生じないようにすべきです。

現在、遺産分割協議中の方に向けて、やり直しという事態にならないよう、あらかじめ注意しておくべきことを確認していきましょう。

●相続人をしっかり確認しておく
遺産分割協議は相続人全員で行うものです。したがって、故意に一部の相続人を除外したり、相続人以外が参加したりすると無効になります。

日頃の思い込み上の関係性ではなく、戸籍をしっかり確認して法律上の相続人を明確にしておく必要があるでしょう。

●相続財産を正確に把握する
遺産分割協議後に多額の遺産が見つかることによるやり直しを避けるため、協議前に相続財産の洗い出しを行いましょう。正確に遺産の内容を把握しておくことが重要です。

●弁護士に相談してアドバイスを受ける
相続のルールは民法で詳細に定められています。とはいえ、原則的には協議によって相続人全員が合意すれば、問題なく相続を行うことが可能です。しかし、これで大丈夫とあなたが思っていたとしても、ひとりでも不満があり、法的に問題があれば覆されてしまう可能性があります。

あらかじめ弁護士と相談しながら遺産分割協議を行うことで、トラブルの火種が大きくなってしまう事態を回避できる可能性を高めることができます。考えている分割方法に違法性はないかなど、あらかじめ知っておくことが非常に重要です。まずは気軽にご相談ください。

6、まとめ

今回は、遺産分割協議のやり直しについてお伝えしました。たしかに、相続人全員の同意があればやり直しそのものは可能ですが、手間や金銭的な負担が発生するというデメリットもあります。

無用なトラブルを避けるためにも遺産分割協議が無効にならないようにすべての遺産を把握して、相続人全員で適切な話し合いを行う必要があります。遺産の調査や遺産分割協議の立ち会なども行えるため、少しでも不安なことがあるときは、弁護士のアドバイスを受けるとよいでしょう。

遺産分割協議でお困りの方は、ベリーベスト法律事務所 宇都宮オフィスへご相談ください。税金の問題などが発生しそうなときなどは、グループ法人に所属する税理士もご相談に立ち会い、アドバイスをすることも可能です。宇都宮オフィスの弁護士が円滑な遺産分割協議をサポートします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています