除籍謄本とは何か? 相続手続きに必要なのか。
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令和4年3月31時点における、宇都宮市の65歳以上の人口は13万3978人であり、全人口の25.9%を占めています。
相続手続きを行う際には、「除籍謄本」が必要になる場合があります。戸籍謄本や改製原戸籍謄本など、除籍謄本と似ている書類もある中で、正確に必要書類を収集するのは大変です。書類の収集も含めて、遺産相続に関して戸惑う部分がある場合には、弁護士へのご相談をおすすめいたします。
今回は、「除籍謄本」の概要や相続手続きで必要になる場面、戸籍謄本や改製原戸籍謄本との違い、遺産分割の手続きなどについて、ベリーベスト法律事務所 宇都宮オフィスの弁護士が解説します。
1、除籍謄本とは? なぜ相続に必要なのか?
「除籍謄本」は、相続手続きを進めるに当たって、必要になることがある書類のひとつです。まずは除籍謄本の概要と、相続手続きにおいて除籍謄本が必要となる場面について解説します。
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(1)除籍謄本=誰もいなくなった戸籍(除籍簿)の写し
除籍謄本とは、誰もいなくなった戸籍(除籍簿)の写しのことです。
以下のいずれかの事由が発生した者は、戸籍から除外されます。- 死亡
- 失踪宣告
- 婚姻
- 離婚
- 養子縁組
- 分籍
- 転籍
戸籍に属するすべての者が除外された結果、誰もいなくなった場合には、戸籍簿から当該戸籍が除外されて「除籍簿」に移されます。
この除籍簿の写しが「除籍謄本」です。
なお戸籍のコンピューター化以降、除籍謄本の正式名称は「除籍事項全部証明書」に変わっています。
たとえば、父親・母親・子ども1人の戸籍があったとします。
子どもが結婚し、その後父親、母親の順で死亡した場合、戸籍からは全員が離脱して誰もいなくなるため、戸籍は除籍簿に移されます。
この場合、子どもの戸籍情報は新しい戸籍簿に記載されていますが、亡くなった父親・母親の戸籍情報は除籍簿に記載されています。そのため、父親・母親の戸籍情報が必要となる場合には、除籍謄本を取り寄せることになるのです。 -
(2)除籍謄本を取得できる人
除籍謄本は、除籍になった当時に本籍地があった市区町村役場で取得できます。
郵送請求も認められています。
除籍謄本を取得できる者は、以下のとおりです。- ① 請求する除籍に記載されている者、またはその配偶者
- ② 直系尊属(父母など)、直系卑属(子など)
- ③ ①または②に当たる者の任意代理人
- ④ ①または②に当たる者の法定代理人
- ⑤ 請求することに正当な理由がある者(第三者請求)
- 権利の行使または義務の履行のために、除籍の記載事項を確認する必要がある場合
- 国または地方公共団体の機関に提出する必要がある場合
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(3)相続手続きで除籍謄本が必要になる場面
相続手続きにおいて除籍謄本が必要となるのは、まず相続人を確定する場面です。
被相続人との間で、相続権が発生する続柄にある者をすべて把握するためには、戸籍情報をたどる必要があります。その際、被相続人に関する戸籍情報が除籍簿に記載されている場合には、除籍謄本を取り寄せて確認しなければなりません。
また、不動産の相続登記を行う場合と、預貯金の解約・相続手続きを行う場合にも、除籍謄本を取り寄せることが必要です。
いずれの手続きを行う際にも、法務局や金融機関の担当者が、財産を取得する者に相続権などがあることを確認します。その際、被相続人の情報が除籍簿に記載されている場合には、除籍謄本を提出して、手続きを行う者に相続権などがあることを証明する必要があるのです。
2、除籍謄本と戸籍謄本・改製原戸籍謄本の違い
除籍謄本に似ている書類として、「戸籍謄本」と「改製原戸籍謄本」というものがあります。
除籍謄本が除籍簿の写しであるのに対して、戸籍謄本・改製原戸籍謄本は、それぞれ以下の戸籍資料の写しとなっています。
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(1)戸籍謄本=戸籍簿の写し
戸籍謄本は、その名のとおり「戸籍簿」の写しです。
戸籍簿上の戸籍には、少なくとも誰かひとりが属しています。相続手続きにおいては、相続人となる者の戸籍謄本を取り寄せて、被相続人との続柄などを確認することになります。 -
(2)改製原戸籍謄本=コンピューター化以前の紙の戸籍簿の写し
改製原戸籍謄本は、コンピューター化以前に用いられていた、紙ベースの戸籍簿を意味する「改製原戸籍」の写しです。
コンピューター化以前に戸籍から誰もいなくなり、除籍簿に移された場合には、その情報がコンピューター化後の新戸籍に記載されていません。この場合、戸籍情報を確認するためには、改製原戸籍謄本を取り寄せる必要があります。
なお、戸籍がコンピューター化されたタイミングは市区町村によって異なります。
そのため、除籍謄本と改製原戸籍謄本のどちらを取り寄せるべきかについては、各市区町村の窓口で確認しましょう。
3、遺産分割に関する手続きの流れ
除籍謄本などの書類収集から、実際に遺産分割が完了するに至るまでには、実にさまざまな手続きを経なければなりません。遺産分割の手続きについて分からない部分、難しい部分がある場合には、必要に応じて弁護士のサポートを受けることをおすすめいたします。
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(1)相続人を確定する
遺産分割協議には、相続人全員の参加が必須となります。
相続人がひとりでも欠けていると、遺産分割は無効・やり直しとなってしまうので注意が必要です。
そのため、まずは相続人調査を行い、相続人全員を漏れなく把握する必要があります。
最初に被相続人の戸籍書類(戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本)を取り寄せ、そこから続柄に従って各相続人の戸籍書類を取り寄せましょう。
家族関係が複雑な場合は、相続人の確定だけでもかなりの手間と時間がかかるので、弁護士に依頼するのも有力な選択肢です。 -
(2)相続財産を確定する
遺産分割協議を行う前に分割の対象となる相続財産を漏れなく把握することも重要です。
相続財産の把握漏れが生じると、最悪の場合、後から遺産分割全体をやり直すことになってしまいます。
被相続人の生前に各相続人が見聞きした情報や、被相続人の遺品などを手掛かりにして、すべての相続財産を徹底的に調査・把握しましょう。 -
(3)遺産分割協議を行う
相続人と相続財産が確定したら、相続人全員が参加して遺産分割協議を行います。
遺産分割の内容にすべての相続人が同意したら、その内容を遺産分割協議書にまとめて、全相続人の間で締結します。
遺産分割協議では、各相続人の主張が激しくぶつかり合い、解決困難な対立へと発展してしまうケースも少なくありません。亡くなった被相続人や、相続財産に対する各相続人の思いが強いケースであればなおさらです。
遺産分割協議において激しい対立が予想される場合や、すでに深刻なトラブルに発展してしまった場合には、弁護士に調整をご依頼いただくことをおすすめいたします。 -
(4)遺産分割調停・審判
遺産分割協議における合意が困難な場合には、裁判所に遺産分割調停を申し立てます。
遺産分割調停では、調停委員が全相続人の言い分を客観的な立場から聞き取り、合意形成を目指して調整を行います。最終的に、裁判官が提示する調停案に全相続人が同意すれば、調停成立です。
もし調停が不成立となった場合には、裁判所が審判によって結論を示しますので、遺産分割を終局的に解決することができます。 -
(5)各種名義変更の手続きを行う
遺産分割協議・調停・審判により、遺産分割の結論が確定したらその内容に従って各財産の名義変更を行います。
特に、相続登記や預貯金の解約・相続手続きについては、さまざまな書類の収集が必要になるため、時間もかかってしまいます。弁護士にご相談いただければ、各種名義変更手続きに関するアドバイス・サポートが可能です。
4、遺産相続に関するご相談は弁護士へ
遺産相続の手続きを手間なく円滑に完了したい場合には、弁護士へのご依頼をおすすめいたします。
弁護士が間に入ることにより、遺産分割に関して、相続人間でトラブルに発展する可能性が低くなります。また、万が一深刻なトラブルに発展してしまっても、弁護士が遺産分割調停・審判の代理人を務めれば、戸惑うことなく手続きに対応することが可能です。
各種財産の名義変更手続きについても、弁護士のサポートを受けることで、時間と労力を大幅に軽減していただけます。
遺産相続に関するご相談は、ぜひお気軽に弁護士までご連絡ください。
5、まとめ
除籍謄本は、誰もいなくなった戸籍(除籍)に関する情報が記載された公的書類です。
相続手続きとの関係では、相続人の調査・確定を行う場合や、相続登記・預貯金の解約手続きを行う場合などに、除籍謄本の取得・提出が必要となります。
除籍謄本を含めた必要書類の収集や、遺産分割協議・調停・審判の手続きは、一般の方にとって大きなストレスになり得るものです。弁護士にご依頼いただくことで、これらの手続きを円滑・迅速に完了できる可能性が高まります。
ベリーベスト法律事務所は、遺産相続のご相談を幅広く受け付けております。
遺産相続に関する疑問やご不安は、ぜひ一度ベリーベスト法律事務所 宇都宮オフィスにご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています