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事実婚の相続対策とは? 何もしなかったらどんな問題が起こる?

2022年01月11日
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事実婚の相続対策とは? 何もしなかったらどんな問題が起こる?

宇都宮市が公表している、人口の推移のデータによると、令和2年の宇都宮市内での死亡者数は、4848人でした。相続は、人の死亡によって開始されますので、宇都宮市内でも相当数の相続事案が発生していたものと考えられます。

夫婦の形としては、婚姻届を提出して法律上の夫婦となるものだけではなく、婚姻届の提出をせずに、法律上の夫婦とさほど変わらない状態にある「事実婚」という形も存在します。いわゆる内縁関係と呼ばれるものが、この事実婚です。さまざまな事情によって、この形を選択することになった夫婦ですが、内縁の配偶者が死亡した場合にその財産を相続することができるのかについて不安を抱いている方も多いでしょう。

日本の相続制度では、内縁の配偶者に対しては、相続権が認められないのが原則ですので、内縁の配偶者に財産を残したいと考える場合には、生前にしっかりと対策を講じておくことが必要です。今回は、事実婚の相続対策について、ベリーベスト法律事務所 宇都宮オフィスの弁護士が解説します。

1、パートナーシップ制度は相続に効果がない

事実婚であることを公的に証明する制度として、パートナーシップ制度というものがあります。この制度を利用することによって、パートナーの遺産を相続することは可能なのでしょうか。

  1. (1)パートナーシップ制度とは

    パートナーシップ制度とは、同性同士のカップルや事実婚の夫婦に対して、法律上の夫婦と同様の保護を与えることを目的として、公的証明書を交付する制度のことをいいます。当初は、LGBTなどの性的少数者を保護するための制度として、各自治体で導入され始めていましたが、さまざまな事情から婚姻届の提出に至らない事実婚の夫婦に対しても制度の適用が認められるようになってきました。

    この制度を利用することによって、以下のようなメリットを享受することができます。

    1. ① 生命保険金の受取人になりやすくなる
    2. ② 公営住宅への入居ができる
    3. ③ 病院での面会や手術への同意の場面で理解が得やすい
    4. ④ クレジットカードの家族カードを作成できる
    5. ⑤ 住宅ローンにおけるペアローンを組むことができる可能性がある


    ※各自治体・各社により対応が異なりますので、詳しくはお問い合わせが必要です。

  2. (2)パートナーシップ制度では相続権が認められない

    パートナーシップ制度は、事実婚の夫婦について法律婚の夫婦と同様に公的な保護を与えることを目的とした制度ですが、パートナーシップ制度を利用したとしても、相続権は認められません

    民法は、相続が開始した場合の相続人の範囲を定めています(「法定相続人」といいます。)民法では、「配偶者」を法定相続人と定めていますが、配偶者とは、法律上の婚姻関係にある配偶者のことをいい、事実婚の配偶者は含まれません。パートナーシップ制度には、事実婚の夫婦を法律婚の夫婦とみなす、という法的効果まではありませんので、パートナーシップ制度によってパートナーと認められたとしても、パートナーの遺産を相続することは、現状は原則不可能です

2、対策しなかった場合、死後起こりうる問題とは

上記のとおり、事実婚の夫婦では、内縁の配偶者の遺産を相続することができません。そのため、生前にしっかりと相続対策を行わなければ、以下のようなトラブルが生じる可能性があります。

  1. (1)賃貸物件を追い出されるリスクがある

    事実婚の夫婦が賃貸物件に居住しており、死亡した内縁の夫が賃貸借契約の契約者になっていた場合には、内縁の妻は、賃貸物件を出ていかなければならないことがあります

    内縁の夫に相続人(内縁の妻以外の、民法上相続権が認められている親族)がいた場合には、内縁の夫の賃借権についても、相続の対象になりますので、内縁の夫の相続人が相続することになります。

    相続人としては、内縁の妻が居住する賃貸物件をそのまま承継したとしても、賃料の支払い義務だけ負担して、当該物件を利用することができませんので、賃貸借契約を解除して、内縁の妻を追い出そうとすることがあります。

    判例や改正後民法では、このような内縁の妻を保護する傾向にありますが、場合によっては明け渡しが認められてしまう可能性もありますので、注意が必要です

  2. (2)法定相続人とトラブルになる

    内縁の配偶者には、相続権が認められていませんので、死亡した内縁の夫に相続人がいる場合には、相続人から財産の引き渡しや自宅の明け渡しを求められるなどのトラブルが生じる可能性があります。

    特に、事実婚の夫婦として協力して培ってきた財産がある場合には、内縁の妻の財産なのか、死亡した内縁の夫の財産(遺産)なのかで相続人と揉めることがあります。そのため、名義を曖昧なままにしておくと、内縁の配偶者が相続人とのトラブルに巻き込まれるリスクが生じてしまいます

  3. (3)生活に困窮してしまう可能性がある

    内縁の妻が死亡した内縁の夫の預貯金で生活をしていた場合には、内縁の夫の死亡によって、内縁の夫名義の預貯金はすべて内縁の夫の相続人に相続されることになります。内縁の妻には、内縁の夫の遺産を相続する権利がありませんので、内縁の妻は、生活に困窮してしまうおそれがあります。

    内縁の夫に相続人がいない場合には、後述する特別縁故者としての財産分与を申し立てることによって、内縁の夫の遺産を取得することができる場合があります。しかし、手続きが完了するまでにはそれなりの時間が必要ですし、すべての遺産が取得できるとは限りません。

    このように、残された内縁の配偶者の生活を著しく困窮させる事態にもなりますので、事実婚の場合は、しっかりと生前対策を講じておくべきです。

3、生前に対策する方法

事実婚の夫婦が内縁の配偶者に対して財産を残す方法としては、以下の方法が考えられます。

  1. (1)遺言書の作成

    内縁の配偶者には、相続権はありませんが、遺言書を作成し、遺言書で内縁の配偶者に財産を遺贈する旨の記載をすることによって、内縁の配偶者に財産を渡すことができます。

    遺言書によって財産を遺贈すれば、後述する生前贈与とは異なり、贈与税ではなく相続税の対象となります。そのため、相続財産の金額によっては、より高い節税効果を得られる可能性があります。ただし、後述するように相続税における控除は受けられない可能性がありますから、贈与と比較して必ず遺贈の方が税金が安いというわけではないことには、注意が必要です。

    また、遺言者に相続人がいる場合には、当該相続人の遺留分にも配慮する必要があります。遺留分とは、相続人が一定程度の遺産を取得できる制度で、遺言によっても遺留分を奪うことはできません。そのため、遺言内容が相続人の遺留分を侵害するものであった場合には、内縁の配偶者が遺留分に関する争いに巻き込まれてしまう可能性がありますので、遺言の記載内容には注意が必要です。

  2. (2)生前贈与

    内縁の配偶者に財産を渡す方法としては、生前贈与という方法も考えられます。遺言書による方法は、財産は遺言者の死後にわたりますが、生前贈与であれば生前に財産を渡すことができます

    生前贈与は、口頭でも行うことができますが、後日、トラブルになることを防止するためにも、生前贈与を行う場合には、贈与契約書を作成しましょう。契約書を作ることによって、紛争を予防できる可能性があります。

    なお、生前贈与の場合には、原則として相続税よりも税率の高い贈与税が課税されることがありますので、年間110万円の非課税枠を利用するなどして、長期的に財産の移転を行うことも検討した方が良いでしょう。

4、かかる相続税を比較

内縁の配偶者が遺言によって遺産を取得することになった場合には、相続税の課税対象となります。法律婚の配偶者が相続する場合と比べて、内縁の配偶者の場合には、相続税の課税の場面で以下のような不利益があります。

  1. (1)配偶者の税額軽減措置を受けることができない

    配偶者の税額特別軽減措置とは、配偶者に対しては、課税対象の遺産総額が1億6000万円まで、または配偶者の法定相続分までであれば、相続税が課税されないという制度です。この制度を利用することによって、配偶者は、ほとんどのケースで相続税の負担なく遺産を相続することが可能になります

    しかし、配偶者の税額軽減措置は、あくまでも法律上の配偶者に対して適用される制度ですので、事実婚である内縁の配偶者には適用されません。そのため、内縁の配偶者は、取得した遺産のすべてが相続税の課税対象となります

  2. (2)小規模宅地等の特例が適用されない

    小規模宅地等の特例とは、亡くなった方と共に住んでいた土地を相続した場合に、面積が330平方メートルまでは土地の評価額を80%まで減額することができるという制度です。この小規模宅地等の特例は、被相続人の親族が相続した場合に限り適用されるものですので、事実婚では利用することができません

  3. (3)生命保険金等の非課税限度額が適用されない

    民法上は、生命保険は相続財産には含まれませんが、相続税法上では生命保険は相続財産とみなされ、相続税の課税対象とされています。しかし、生命保険については、「500万円×法定相続人の人数」に相当する金額については、相続税が非課税になるという制度が設けられています。

    しかし、生命保険金等の非課税限度額は、生命保険を受け取る法定相続人に対して適用される制度ですので、法定相続人ではない内縁の配偶者には適用はありません

  4. (4)相続税が2割加算される

    相続税の計算においては、配偶者と1親等以内の血族以外の方が遺産を取得した場合は、相続税額が2割加算されるという制度があります。事実婚の配偶者は、法律上は他人という扱いになりますので、相続税が2割加算されるという扱いを受けることになります。

5、死後、残された方ができること

遺言や生前贈与などの生前対策がまったく行われていなかった場合に、内縁の配偶者が一切、財産を取得することができないのかというとそうではありません。

死亡した内縁の夫に相続人が誰もいないか、相続人のすべてが相続放棄をしたという場合には、家庭裁判所に「特別縁故者に対する相続財産分与の申し立て」をすることによって、被相続人の相続財産を受け取ることができる可能性があります

ただし、特別縁故者として認められるためには、単に内縁の配偶者であったというだけでは足りず、以下のような要件を満たす必要があります

  • 被相続人と生計を同じくしていた者
  • 被相続人の療養看護に努めた者
  • その他、被相続人と特別な縁があった者


さらに、特別縁故者に対する相続財産分与制度を利用するには、相続財産管理人選任の申立を行う必要があります。

また、特別縁故者であると認められたとしても、どの程度の財産を取得することができるかについては、あくまでも裁判所の「相当と認めるとき」という裁量に委ねられています。「特別縁故者に対する財産分与の申し立て」をすれば必ず相続財産分与が認められるというわけではありません。内縁の配偶者に財産を残したいと考えた場合には、できる限り生前に各種相続対策を講じておくことが大切です

6、まとめ

事実婚の配偶者に対しては、法律上、相続権は認められていませんので、何も対策を講じていなければ、遺産を受け継ぐことができず、経済的に苦しい状況に追い込まれる可能性があります。また、事実婚の配偶者が法定相続人との相続争いに巻き込まれる可能性もあります。残された事実婚の配偶者に負担をかけさせないためにも、生前に十分な対策を講じておくことが大切です。

事実婚の配偶者に対する相続対策を検討中の方は、ベリーベスト法律事務所 宇都宮オフィスまでお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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