相続人調査(戸籍収集)の方法は? 知っておくべきポイント

2022年09月26日
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相続人調査(戸籍収集)の方法は? 知っておくべきポイント

宇都宮市内には、宇都宮市役所のほか、19の地区市民センター・出張所などの問い合わせ先があり、戸籍謄本などの各種証明書の交付といった窓口サービスを提供しています。宇都宮市役所に出向かなくても戸籍謄本などを取得することができるので、遠方にお住まいの方にとっては非常に便利なサービスといえます。

相続が開始した場合には、相続人による遺産分割協議によって被相続人の遺産を分けることになりますが、その前提として、相続人調査を行う必要があります。相続人調査をしっかりと行っておかなければ、遺産分割協議が無効になってしまうリスクがあるので、注意が必要です。

今回は、相続人調査の方法と知っておくべきポイントについて、ベリーベスト法律事務所 宇都宮オフィスの弁護士が解説します。

1、相続人調査とは

相続人調査とはどのようなものなのでしょうか。相続人調査の概要について説明します。

  1. (1)相続人調査の概要

    相続人調査とは、当該相続において誰が相続人になるのかを調べることをいいます。
    遺産分割協議は、被相続人の配偶者や子どもといった家庭内の身内だけが相続人になることが多いため、「ほかに相続人はいないだろう」と思い込んで遺産分割協議を進めてしまうことがあります。

    しかし、被相続人の前妻との間に子どもがいる場合や、過去に認知をした子どもがいる場合など、家族の認識だけでは正確に相続人を把握することができないことがあるのです。また、相続人を把握していても長期間疎遠になっている方がいると、連絡先がわからないこともあるため、相続人調査によって住所などを調べなければなりません。

    このように、相続人調査は、遺産分割協議の前提として必要になるので、相続開始後は、速やかに相続人調査に取り掛かる必要があるのです

  2. (2)相続人調査が必要な理由

    相続人調査が必要になる理由としては、以下の点が挙げられます。

    ① 遺産分割協議を有効に成立させるため
    誰がどのような遺産を相続するのかは、相続人による遺産分割協議によって決めることになります。遺産分割協議を有効に成立させるためには、相続人全員の合意が必要なので、相続人のひとりでも欠いてしまうと、遺産分割協議がすべて無効になるのです

    やっと成立させた遺産分割協議が無効になると時間・費用の無駄になってしまうので、相続人の範囲を正確に把握するためにも相続人調査が必要になります。

    ② 相続手続きに必要となる戸籍を収集するため
    遺産分割協議が成立した後は、相続財産に含まれる不動産、預貯金、株式などの名義変更が発生します。その際には、相続関係を明らかにするために、戸籍謄本などの提出を求められるのが一般的です。

    相続人調査で収集した戸籍謄本については、相続手続きの場面でも利用することができるので、遺産分割協議後の相続手続きをスムーズに行うためにも、事前の相続人調査が必要なのです。

2、相続人調査の方法や必要な書類は?

相続人調査をする場合には、以下のような方法で行うのが一般的です。

  1. (1)被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本などの取得

    相続人調査は、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本、改製原戸籍謄本、除籍謄本を収集する方法で行います。これらの戸籍謄本などは、被相続人の本籍地の市区町村役場で取得することができるので、まずは、被相続人の現在の戸籍謄本を取得するようにしましょう。

    また、ひとつの戸籍謄本だけで出生から死亡までの流れが網羅されているケースは少ないので、現在の戸籍謄本からさかのぼって過去の戸籍謄本を取得していく必要があるでしょう。転籍、除籍、改製などがあった場合には、戸籍謄本にその旨の記載があるので、その記載を参考にしてその当時本籍のあった市区町村役場で戸籍謄本などを取得します。

    このような作業を繰り返して、出生から死亡までの戸籍謄本などを取得していきます。

  2. (2)被相続人に子どもがいる場合

    被相続人に子どもがいる場合には、被相続人の法定相続人は、配偶者と子どもになるので、配偶者と子どもの現在の戸籍謄本が必要です

    被相続人の子どもが、被相続人よりも前に死亡している場合には、被相続人の孫に相続権が認められます。このことを「代襲相続」といいます。
    この場合、被相続人の孫が代襲相続人であることを明らかにするために、被相続人の子どもの出生から死亡までの連続した戸籍謄本、改製原戸籍謄本、除籍謄本も取得しなければなりません。

  3. (3)被相続人に子どもがいない場合

    被相続人に子どもがいない場合には、被相続人の法定相続人は、配偶者と被相続人の父母または兄弟姉妹になるので、各相続人の現在戸籍が必要になります

    父母がすでに死亡しているという場合には、父母の出生から死亡までの連続した戸籍謄本、改製原戸籍謄本、除籍謄本が必要です。また、被相続人よりも先に兄弟姉妹が亡くなっているという場合は、おい・めいが代襲相続人になるため、死亡した兄弟姉妹の出生から死亡までの連続した戸籍謄本、改製原戸籍謄本、除籍謄本を用意しなければなりません。

3、相続人調査で知っておくべきポイント

相続人調査をする場合には、以下のポイントを押さえておきましょう。

  1. (1)相続人の住所がわからない

    相続人調査によって相続人が明らかになったとしても、疎遠な親族が相続人に含まれている場合や名前も聞いたことのない相続人がいるような場合には、相続人に連絡をとろうにも住所がわからないことも少なくありません。

    そのような場合には、当該相続人の戸籍の附票を取得することによって、住所を知ることができます。戸籍の附票は、本籍地の市区町村役場で取得することができるので、相続人の戸籍謄本を取得する際に、一緒に取得するとよいでしょう。

  2. (2)行方不明の相続人がいる

    遺産分割協議を有効に成立させるためには、相続人全員の合意がなければなりません。行方不明の相続人がいる場合であっても、その相続人を除いて遺産分割協議を進めることはできません

    このような場合には、行方不明の相続人に代わって遺産分割協議に参加することができる不在者財産管理人の選任を家庭裁判所に申し立てるか、行方不明の相続人について失踪宣告の申立てをすることによって、遺産分割協議を行うことが可能になります。

  3. (3)代襲相続や数次相続が発生している場合

    代襲相続が発生している場合には、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本、改製原戸籍謄本、除籍謄本だけではなく、被代襲者(死亡した相続人)の出生から死亡までの連続した戸籍謄本、改製原戸籍謄本、除籍謄本も取得しなければいけません。

    また、被相続人の配偶者は、被相続人と年齢が近いケースもあるので、被相続人の遺産分割が完了する前に亡くなってしまうことがあるかもしれません。そうすると、被相続人の一次相続と被相続人の配偶者の二次相続が生じることになります。これを「数次相続」といいます。

    数次相続の場合には、一次相続の被相続人だけでなく、二次相続の被相続人についての出生から死亡までの連続した戸籍謄本、改製原戸籍謄本、除籍謄本も必要です。

  4. (4)相続できない場合もある(相続欠格)

    相続が開始すると、民法の規定に従って法定相続人が遺産を相続することになります。しかし、法定相続人であっても、相続欠格事由に該当する場合や相続廃除を受けている場合には、当該遺産相続に関して相続権がないので、遺産を相続することができません。

    相続廃除を受けた場合には、戸籍謄本にその旨が記載されますが、相続欠格の場合には、戸籍謄本には記載されません。そのため、相続欠格者であることを明らかにするためには、相続欠格者が相続欠格事由の存在を認めた書面と印鑑証明書が必要になります。

4、遺産相続に関するご相談は弁護士へ

遺産相続に関してお悩みの方は、弁護士に相談をすることをおすすめします。

  1. (1)遺産相続に関するサポートを受けることができる

    相続の開始後は、相続人調査だけでなく、相続財産調査やその後の遺産分割協議などの手続きが発生します。遺産分割協議自体には期限はありませんが、相続放棄をする場合は、相続開始を知ったときから3か月以内、相続税の申告が必要な場合は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内に手続きを行わなければなりません

    そのため、遺産分割協議の前提となる相続人調査や相続財産調査については、相続開始後、迅速に進めることが大切です。ただし、相続の内容が複雑なケースや、相続手続きが初めてで何から進めればよいかわからなくて不安な方も多いでしょう。

    そのような場合、上記期限内にすべての手続きを終えることが難しい可能性があるので、専門家である弁護士のサポートを受けることをおすすめします。

  2. (2)遺産分割でのトラブルを解決できる

    遺産分割では、誰がどのような遺産をもらうのかについて、お互いの利害が衝突する結果、トラブルが生じることがあります。また、被相続人が遺言書を作成していたとしても、内容が不平等な遺言書であった場合には、遺留分に関するトラブルが生じることもあるでしょう。

    これらのトラブルが生じた場合には、遺産相続に関する知識と経験がなければ適切に解決することが難しいといえます。仲のよい兄弟姉妹であっても、トラブルが生じると感情的になってしまい解決するまでに長期間を要することも少なくありません。そのため、遺産分割に関して少しでも不安がある場合は、弁護士にご相談ください。

5、まとめ

遺産分割協議の前提として、しっかりと相続人調査を行うことが大切です。しかし、手続きが初めての場合、戸籍謄本を取得したとしても、どこをどのように見ればよいかわからないでしょう。そのため、漏れのない相続人調査をするためにも専門家である弁護士のサポートが不可欠です。

遺産相続に関してお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 宇都宮オフィスまでお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています