遺言書の保管場所はどうすべきなのか。宇都宮オフィスの弁護士が解説
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遺言書を作成することは、あなた自身が他界したあと、残された家族がもめ事を起こさないようにするためにも効果的な手段です。宇都宮市役所では、相続問題について相談できる場所として弁護士無料相談などを提供しています。しかし、書類の作成や審査、交渉などは行っていないことが明記されている点に注意が必要です。
遺言には複数の種類があり、必要な手続や保管場所も異なります。手続方法を間違えると、せっかく作成した遺言書の効力が発揮されない可能性もあるため注意が必要です。そこで、今回は遺言書の種類や作成方法、さらには保管場所について宇都宮オフィスの弁護士が解説します。令和2年に迎える新制度も踏まえ、これから遺言書を作成しようと思っている方は、ぜひ参考にしてください。
1、知っておきたい遺言書の種類
遺言書とは、亡くなったときに自分の財産をめぐって相続人同士がもめないように、あらかじめ準備する書類です。多くの方が遺言書という言葉を耳にした経験があるでしょう。法的に効果が認められる遺言書の形式は、民法によって定められています。
本項では、通常時に作成可能な遺言書の種類と概要について解説します。
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(1)自筆証書遺言
自筆証書遺言とは、特殊な手続を必要としない遺言者自身が作成する遺言書です。
自筆証書遺言を作成する場合、特別な準備は必要ありません。自身の印鑑とペンがあれば誰でも作成できます。原則として自分で書く必要があるなど、一定のルールは定められていますが、手頃に作成できる遺言書です。そのため、複数の方式の中でもっとも多く採用されていますが、相続が発生したのち相続人が開封する際は、家庭裁判所による検認という手続きが必要です。 -
(2)公正証書遺言
公正証書遺言とは、公証役場で作成する遺言書です。
公証役場は公証人が執務をする場所で、全国に設置されています。法律にのっとり公証人が遺言書を作成するため、正確性が高い遺言書が作成できます。ただし、その分、ある程度のコストと手間がかかります。それでも、遺言自体が無効になりにくい点や、原本が改ざんされる可能性がなく、検認手続きが不要となる点など、大きなメリットを得られます。 -
(3)秘密証書遺言
秘密証書遺言は、遺言の内容を誰にも知られたくないといった場合に採用される遺言方式です。公証役場で手続を行い、作成します。
公証役場へ足を運ぶ必要がある点については、公正証書遺言と共通していますが、公正役場が証明する事項は、遺言書の存在までです。その内容や保管場所については、公証役場は関知しません。コストがかかる割に確実性が低いことから、あまり活用されていないようです。
2、遺言書の保管場所
作成した遺言書は、当然のことながら万が一に備え、保管しておく必要があります。
しかし、遺言書をせっかく作成したとしても、保管場所を誤ると、次のようなトラブルが起こる可能性があります。
- 遺言書の存在を遺族が気づかない。あると伝えていても発見できない
- 作成した本人が認知症などによって遺言書を作成した事実を忘れてしまい、存在すら伝えられない
- たまたまあなたが作成した遺言書を発見した相続人の手によって廃棄、もしくは改ざんされてしまう
遺言書の保管場所は非常に重要であります。実際にどの遺言方式で遺言書を作成して、どこに保存すべきなのか検討するためにも、それぞれの保管場所について解説します。
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(1)自筆証書遺言
作成した自筆証書遺言は、基本的に自分で保管する必要があります。
前述のとおり、わかりにくい場所に保管すると家族に発見されない場合がありますし、家族に場所を伝えておくと書類を改ざんされたり中身を見られたりする可能性があります。したがって、保管の際には注意が必要でしょう。
自身で保管することに不安がある場合は、銀行の貸金庫や弁護士に保管を依頼することでリスクを軽減できます。また、令和2年7月10日以降に作成された自筆証書遺言であれば、民法改正により「法務局における遺言書の保管等に関する法律(遺言書保管法)」が施行します。つまり、本法施行以降であれば、法務局で保管してもらうという選択肢が増えることになります。 -
(2)公正証書遺言
公正証書遺言を作成すると原本・謄本・正本の3部が発行され、原本は公証人が保管します。したがって、本文の改ざんは起こりえません。発行された正本は遺言の執行者が保管し、遺言者本人は謄本を保管するのが一般的です。
公証人が原本を保管しているため、家族や相続関係者に見られても改ざんされる心配はありません。あとは、確実に家族に対して、公正証書遺言を作成してあることを伝えておけばよいでしょう。 -
(3)秘密証書遺言
秘密証書遺言の保管は、自筆証書遺言同様、原則として遺言者本人が行います。
公証役場による手続が必要な遺言書ですが、遺言の内容自体も誰にも知られていないため、紛失、改ざんなどのリスクは残る点に注意が必要です。
3、遺言書の記載事項
遺言書の目的は、被相続人が亡くなったあと、被相続人自身の希望通りに相続が行われるよう、相続人に伝えることです。そのため、遺言書に記載する内容によっては、遺言書通りの相続が難しくなってしまいます。
本項では遺言書に記載するべき項目と内容について解説していきます。
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(1)相続人の指定
まず、重要になるのが相続人の指定です。遺言書がなければ、相続財産は法律で決められた割合、もしくは相続人同士の話し合いの結果に従って法定相続人が譲り受けることになります。ただし、法定相続人以外に特別にお世話になった人などがいる場合は、遺言書を作成することで財産を譲り渡すことができます。
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(2)財産の分配について
法律に適した方法で作成された遺言内容は、原則、相続人同士が話し合って決める「遺産分割協議」よりも優先されます。そのため、誰にどの財産をどの程度分配するかをあらかじめ決めておくことで、特定の相続人に対して財産を多く譲り渡すことができるでしょう。
ただし、民法は、遺言による処分の自由を一部制限して、一定範囲の相続人に一定額の財産を取得する権利を認めており、これを遺留分といいます。したがって、遺留分を下回る可能性がある偏りが大きい分配はトラブルにつながる可能性があるので注意が必要です。
4、遺言書と合わせて残しておくべきもの
遺言書には相続人の指定や財産の分配方法を記載しますが、遺言書以外にも準備しておいたほうがよいものがあります。
ここでは遺言書以外に役立つ書類について解説します。
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(1)財産目録
遺言書と合わせて準備したいものの代表的な書類として、財産目録があります。財産目録とは、簡単に言えば被相続人の財産が記されている一覧表です。相続手続は、まずは被相続人の財産の調査からスタートするため、あらかじめ相続する財産を自分で調べて財産目録として残しておくと、手続がスムーズに進みます。
これまでは、自筆証書遺言を作成する際は、財産目録についても手書きする必要がありました。しかし、相続法の改正により、令和元年7月以降の作成された自筆証書遺言であっても、パソコン入力や通帳などのコピーでも認められるようになっています。 -
(2)財産を証明する書類など
財産目録の作成ができたら財産を証明する書類も併せて保存しておくことをおすすめします。
たとえば、財産目録の中に不動産がある場合、一緒に登記簿謄本や権利書を入れておくことで、その不動産の権利関係や具体的な不動産の種類などがわかるため、相続手続の負担が軽くなります。
5、遺言書の作成や保管を弁護士に依頼する
遺言書は、被相続人が亡くなる前に行える最後の意思表示です。法的に無効な遺言書になってしまわないためにも、経験が豊富な弁護士に遺言書の作成を相談することをおすすめします。ここでは弁護士に遺言書の相談をするメリットを紹介します。
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(1)作成のアドバイスを受けられる
遺言書は記載方法に法的な取り決めがあります。せっかく作成しても、記載様式に不備があると無効になってしまいます。いざというときに効力を発揮しない遺言書では作成した意味がありません。
そこで、作成の段階から弁護士に相談することをおすすめします。また、遺言書の作成以外にも保管や遺言書の検認手続の依頼、財産相続の立ち会いなども依頼できます。 -
(2)正確な財産状況の調査
相続手続で重要なのは、自身の財産を正確に把握することです。現金や預貯金以外にも、株や証券、保険など財産の種類は多岐にわたるため、正確にご自身の財産状況を把握する目的から考えても、弁護士に調査を依頼するとよいでしょう。
6、まとめ
相続人同士がどんなに仲がよいと思っていても、財産をめぐって関係に亀裂が入ってしまうケースは多々あります。被相続人が「特別にお世話になった人に財産を渡したい」という場合もあるでしょう。あなたが築いた財産をあなたの希望通りに相続してほしいと願うのであれば、遺言書を残すことをおすすめします。
遺言書を残すことで、相続人同士の不要な争いを回避し、法定相続人ではない人にも正当な手段で財産を譲渡することができるでしょう。遺言書の作成を検討しているのであれば、ベリーベスト法律事務所宇都宮オフィスまでご相談ください。宇都宮オフィスの弁護士が、財産調査から、不備のない遺言書の作成や保管、実際に相続が開始して終了するまで全面的にサポートします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています