微罪処分とは? 万引きなどで前科を付けたくないときできることを解説
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- 微罪処分とは
平成29年、宇都宮地裁足利支部は、コンビニエンスストアで化粧品や食品などを万引きした女性を、懲役1年、執行猶予3年の有罪判決を言い渡したという報道がありました。万引きや置き引きなど、比較的軽微と考えられやすい罪を犯した場合であっても、場合によっては送検されて、裁判で有罪判決を受けてしまうことがあります。
他方、警察が起訴をしないで済ませる微罪処分と呼ばれる処分も存在することはご存じでしょうか。本コラムでは、自分の家族が万引き事件を起こしてしまったケースを想定し、どのような場合に微罪処分とされるのか、また微罪処分で済ませるためにはどのようなことをすればよいのか? などについて、宇都宮オフィスの弁護士が詳しくご紹介します。
1、微罪処分とは
日本では、警察がとある犯罪を事件として認知した場合、その被疑者を取り調べたうえで、事件や被疑者の身柄を検察に送致することが基本です。送致されると、検察で再び取り調べを受けることになり、起訴されるか不起訴になるかが判断されます。なお、起訴されると刑事裁判が行われますが、9割以上の確率で有罪となり、なんらかの処罰が下されます。有罪になれば前科が付いてしまうため、場合によっては人生が大きく変わってしまう可能性は否定できません。
他方、罪を犯したことが確かであっても、警察が検察への送致を行わず、「微罪処分」という処分を下すことがあります。なぜ警察が微罪処分を下せるのか、その根拠やどのような状況であれば微罪処分となるのかについて、まずは解説します。
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(1)法的な根拠
刑事訴訟法の第246条では、警察が犯罪捜査をしたとき、その事件を検察官に送致することが定められています。しかしそのただし書きでは、「検察官が指定した事件については、この限りでない」とも書かれています。このただし書きを根拠に、微罪については検察への送致は行わないという運用がされているのです。
微罪処分の基準については、警察庁を管理する国家公安委員会が捜査の手法や手続きについて定めた、犯罪捜査規範の第198条から200条に示されています。後述しますが、特定の条件をもとに、実際の捜査現場で微罪処分にするかどうかが判断されることになるでしょう。
なぜ微罪処分という措置があるのかといえば、現実的な問題として、すべての犯罪者を検察に送致したのでは、その数が多すぎて処理時間の確保や施設の準備が難しくなるためです。そこで一定の場合に限り、微罪処分を下すことが認められているのです。なお、微罪処分を下した警察は、被疑者の個人情報や犯罪の要旨を記載した微罪処分手続書を作成し、それを毎月まとめて検察に送っています。 -
(2)対象となる事件のタイプ
犯罪捜査規範では対象となる条件について「犯罪事実が極めて軽微であり」と記載されています。その解釈は地域によっても多少の差がありますが、おおむね下記のいずれかに該当した場合とされています。
- 被害の金額についてはおおむね2万円以内
- 傷害の場合はおおむね全治1週間以内
- 凶器が使われていない
- 犯意が弱く偶発的に起きている
- 被害の回復が済んでいる
判断においては被害の軽重だけでなく、被害者側の感情も重要視されます。仮に、損害の程度が軽くても被害者が強い処罰感情を持っていたり、実際に被害届が出されたりしているケースであれば、警察としてもそれらを無視できません。
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(3)対象となる被疑者のタイプ
事件そのものだけでなく、被疑者がどのような人物かも重要です。犯罪自体が軽微であっても、被疑者にまったく反省の色がなければ、再び罪を犯すと判断されてしまう可能性は否定できません。具体的には下記のような要素が求められます。
- 被疑者に謝罪や反省の色が見られる
- 過去の犯罪歴がなく普段の生活態度にも問題がない
- 犯罪に至る過程がそれほど重くない
- 再犯や逃亡のおそれがない
たとえば事件を起こした動機が、魔が差した、お金がなく数日食事をしていなかったため店舗の廃棄食品を持ち帰ってしまったなどやむを得ないと考えられる場合などは、微罪扱いになる可能性があります。
また、保護者や監督者がいることも重要です。釈放の際には身元引受人が必要ですし、再犯防止や反省を促すためにも、身の回りで監督してくれる方がそばにいることが望ましいためです。
ご家族としては、本人が二度と同じ過ちを起こさぬように、監督を約束すること、生活環境を整えることなどが求められます。
2、微罪処分になるとどうなる?
送致を逃れて微罪処分で済んだ場合、下記のような結果を得ることになります。
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(1)すぐに釈放される
警察から事件や被疑者の身柄が検察に送致されると、さらに24時間を上限に取り調べが行われます。その結果、逃亡の危険性がある、証拠隠滅の可能性があると判断されてしまうと、検察は裁判所に対して、勾留(こうりゅう)を請求します。勾留が認められると、最大20日もの間、帰宅できなくなってしまう可能性が出てくるのです。起訴されればさらに長い期間、身柄を拘束されてしまうでしょう。
しかし微罪処分で済めば、その場で釈放が決まります。会社や学校を休む必要もほとんどありません。 -
(2)前歴が付く
微罪処分の場合でも、警察の取り調べを受けたという情報が、警察や検察に残ります。これを「前歴」と呼びます。しかし、前歴が付いたからといって日常への影響はありません。公表されるものではありませんし、法的な面においてもなんらかの制限を受ける性質のものではないためです。
ただし、万が一、再び罪を犯してしまったとき、前歴の有無で問われる罪の重さが変わる可能性はあるでしょう。
前歴と似たものに「前科」があります。前科とは、送致から起訴を経て有罪判決を受けた場合につきます。たとえ、公開された刑事裁判ではなく、略式起訴と呼ばれる簡略化された裁判によって罰金刑となった場合でも、前科が付いてしまうということです。
前科が付くと公務員を解雇される、国家資格が停止されるなど一定の影響が出ます。前歴であれば、そこまでの制限はないものの、今後何か罪を犯した場合の処遇に影響することはあります。 -
(3)民事責任は残る
微罪処分を受けた時点で刑事事件としては終了します。
しかし、被害者へ及ぼした被害に対する、損害賠償責任など、民事的な問題が残ります。たとえば器物破損をした場合、被害届が出されず、微罪の判断を受けたとしても、壊したものを賠償するという責任を問われる可能性があるでしょう。
3、微罪処分にならない事件は?
比較的軽い犯罪でも、ここまでに述べた条件に合致しなければ微罪処分で済まないことがあります。
●常習性がある場合
冒頭の事例では、被害金額が2500円前後であったにもかかわらず、有罪判決を受けたことが報道されています。さらには、摂食障害があり単なる私欲のために万引きしたわけでもないことが認められています。それにもかかわらず微罪処分で済まなかったのは、初犯ではなく常習性があったからです。
●被害者の処罰感情が強い場合
被害者が、犯人を許せないという気持ちが強く、示談などにも応じない場合は、微罪処分に必要な「被害者が加害者を許している」という条件が満たされなくなります。たとえば痴漢事件などでは、微罪処分になることもある一方、示談に応じてもらえなければ、送致されたり、起訴されたりするケースがあるでしょう。
4、微罪処分になるには
軽微な罪を犯してしまったとき、次のような状況であれば、微罪処分となる可能性があるでしょう。
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(1)しっかり反省する
警察や被害者の心証をよくするためにも、反省の態度を示す必要があります。たとえば、微罪処分で済ませてくれと自ら主張すれば、反省の気持ちがないと捉えられる可能性が高まります。とはいえ、本人が警察に身柄を拘束されている状態では、ご家族が反省を促すことはできません。
逮捕中は、家族であっても面会はできません。早期に弁護士を依頼し、接見を通じて反省を促すとともに、警察へ反省の意思があることを伝えてもらうようにしましょう。 -
(2)示談を行う
特に重要なのが被害者の気持ちです。単に気持ちということでは明確な証拠とはなりませんが、被害者の許しを得て示談という形で成立させることができれば話は別です。
本人やご家族が直接示談を申し込んでも被害者感情を逆なでしかねません。早期に弁護士を入れて交渉することが大切です。これにより微罪処分の可能性を高めることができます。
5、まとめ
今回は、罪を犯した場合の微罪処分について解説しました。事件を起こしても一定の場合には微罪処分となり、日常生活への影響を最小限に抑えられることがあります。しかし警察や被害者が相手方となるため、本人やご家族が自力で対応するには難しいでしょう。できるだけ早い段階で弁護士のサポートを得ることをおすすめします。
ご家族が事件の当事者になってしまったときは、すぐにベリーベスト法律事務所 宇都宮オフィスまでご連絡ください。刑事事件に対応した経験が豊富な宇都宮オフィスの弁護士が、重すぎる処分を回避するため力を尽くします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています