呼気検査を拒否したら逮捕されることはある? 罪状について弁護士が解説
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平成30年11月29日、宇都宮東署が酒気帯び運転の疑いで25歳の男を現行犯逮捕したという事件がありました。このような現行犯逮捕は、警察官による一斉捜査によって、運転者全員に呼気検査を求める場合や酒を飲んで運転していると疑われるような場合に検査をさせられ発覚するのが一般的です。
この呼気検査を受けるよう警察官から要求されたことがある方も多いでしょう。しかし、検査を受けるとき、拒否したらどうなるかと考える場合もあるかもしれません。呼気検査が、あくまで強制ではなく要求なので拒否することも可能と考えるからかもしれません。
しかし、呼気検査を拒否した場合には不利益を受ける場合があります。今回は、呼気検査の拒否と問われる罪状について、ベリーベスト・宇都宮オフィスの弁護士が解説します。
1、呼気検査とはどういうもの?
呼気検査は、飲酒運転を防止するために、警察官が実施する検査です。飲酒運転によって引き起こされる被害が大きくなるに従って、年々厳罰化の流れになっています。
呼気検査は、検問をし、そこを通るドライバーすべてに、検査キットで息を採取して、そのアルコール濃度を調べるだけです。飲酒運転が判明すれば、逮捕されます。
飲酒運転でなければ、検問は終了し、運転を再開することができます。検査は数分で終了するので、それほどの時間ロスにはならないでしょう。
そして、意外かもしれませんが、この呼気検査は拒否することができません。任意同行や職務質問など、任意の取調べや聞き込みに応じるといったように、警察官から協力を求められる行為は、任意に選択できると思いがちです。
しかし、呼気検査は、拒否すると罪になってしまうのです。
2、呼気検査を拒否するとどうなる? 罪に問われる?
呼気検査を拒否するとどうなるのでしょうか。実は犯罪行為になってしまい、罪に問われます。
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(1)呼気検査拒否は、犯罪行為に該当する
道路交通法67条3項には、酒気帯び運転いわゆる飲酒運転をしているおそれのある人に対して、警察官が呼気検査をすることができる旨を規定しています。
そして、同法118条の2においては、この呼気検査を拒否したり、妨げたりした者は、罰則を受けることを規定しています。 -
(2)量刑は?
呼気検査拒否罪ともいうべきこの罪は、3ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金と、同条に定められています。
急ぎの用事があったり、そもそも飲酒運転の覚えがあり、飲酒運転が発覚してしまうことをおそれたりなどの理由から、呼気検査を拒否したいと思う人もいるでしょう。
しかし、呼気検査を拒否して逃げようとしても、パトカーで追いかけられ、呼気検査に応じるように強制されるか、血液採取によって強制的に検査されます。逃げようとしたなどの態度によって、その後逮捕されるかどうかも左右されるので、素直に検査を受けることが得策でしょう。 -
(3)飲酒運転だった場合は?
検査の結果アルコールが検出された場合、飲酒運転として逮捕されることになるでしょう。飲酒運転の罪には、酒気帯び運転と酒酔い運転の2種類があります。
酒気帯び運転は、体内にアルコールが残っている状態で車を運転することです。これに対して、酒酔い運転は、酒に酔って正常な運転ができない状態で車を運転することです。 酒気帯び運転は、体内に残っているアルコール濃度によって、その度合いが判断されるのに対して、酒酔い運転は運転者の状態をみて判断するという違いがあります。酒によって足元がおぼつかないなどといった正常な判断能力や行動ができないような場合は、すべて酒酔い運転に該当してしまいます。
酒気帯び運転罪は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金になっています。酒酔い運転罪は、5年以下の懲役または100万円以下の罰金になっています。
これらは刑事処分ですが、道交法上の処分もあり、酒酔い運転の場合は、一度犯しただけで、免許取り消し処分になってしまいます。
酒に酔った状態で運転する酒酔い運転は運転そのものが困難だと思うでしょう。他方、酒気帯び運転では自分は大丈夫だと勝手に判断して運転してしまうかもしれません。
しかし、酒気帯び運転でも、正常な判断能力は低下してしまうため、運転することによって、事故を起こしてしまう危険があるのです。なお、酒気帯びの程度は、「血液1ミリリットルにつき0.3ミリグラム又は呼気1リットルにつき0.15ミリグラム」と施行規則で定められています。この濃度は、ビール1杯程度とされており、完全に抜けるまでにも長い時間がかかるといわれています。
3、逮捕された後の流れは?
逮捕されてしまった場合、その後はどのような流れになっているのでしょうか。
一般的に、酒気帯び運転であれば、その場で逮捕されることはそれほど多くないといいます。後日罰金を納めることで終わる場合もあります。ただし、その場合も前科として残ります。
他方、人身事故を起こしてしまった場合や以前にも飲酒運転を犯したという前科がある場合、呼気検査を拒否して逃走したような場合には、逮捕され、身柄を拘束される可能性が高いです。
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(1)逮捕から勾留まで
逮捕された場合、警察署で取り調べを受けることになります。
この取り調べの期間は最大48時間で、その間に検察官に送致されます。検察官は、送致されてから24時間以内に取り調べなどを実施し、被疑者を勾留すべきかどうか判断します。
この期間、家族は面会することができません。逮捕された家族を直接励まそうとしてもすることができないのです。
しかし、弁護士なら面会することが可能になっています。弁護士に面会してもらい、代わりに家族の思いを伝えてもらうことができます。
被疑者として逮捕されてしまうと、突然のことに不安になってしまう場合がほとんどです。どうしていいのか分からない場合も多く、心理的にも不安定になっていることでしょう。 このような状態では、取り調べに対して冷静に対応することは困難です。こうしたとき、弁護士からアドバイスを受けることで、心理的なサポートとなり、不利益になるような行動を防止することができます。
検察が勾留を必要だと判断した場合、検察官は裁判所へ勾留請求を行います。裁判官がその請求を妥当と判断すると、勾留決定がなされます。勾留は延長も含めると最大20日間にもなります。
勾留されてしまうと、会社や学校を長期間欠席することになってしまい、逮捕の事実が発覚するなど、不利益を受けてしまう場合があります。勾留を避けるためには、逮捕後すぐに弁護士へ相談するなど、行動を起こすことが必要です。
勾留されてしまった場合でも、弁護士は不起訴に向けて弁護活動を行うことが可能です。早期釈放を目指すためにも、一刻も早く弁護士に相談することをおすすめします。 -
(2)起訴から裁判まで
取り調べなどを元に、検察官は起訴が相当かどうか判断します。起訴されると、刑事裁判を受けることになるのです。
刑事裁判で有罪となると、懲役などの処分が裁判官より言い渡されます。有罪となると「前科」がつくことになりますが、日本の検察は十分な証拠をそろえたうえで起訴するため、刑事裁判の99%が有罪判決となっています。
前科がついてしまうとその後の人生に大きく不利益を与える可能性があるため、不起訴を目指す必要性は大きいです。弁護士は不起訴を目指して尽力し、たとえ起訴されたとしても、少しでも刑罰が軽くなるよう対策することができます。
弁護士への相談や依頼は逮捕された本人だけでなく、家族も可能になっています。逮捕されている本人は、弁護士を依頼できるほど冷静な状態ではない可能性もあるため、まずは家族が一刻も早く弁護士に相談することをおすすめします。
4、まとめ
呼気検査は、警察官から検問などにおいて求められるため、任意の検査だと考え、拒否しても大丈夫だと思いがちです。
しかし、呼気検査は拒否すると犯罪行為に該当してしまいます。もちろん飲酒運転についても発覚せずに逃げ延びることもできません。呼気検査を拒否することはできないと再認識する必要があるのです。
呼気検査の拒否などでお困り・不安な方は、ベリーベスト・宇都宮オフィスにお気軽にお問い合わせください。宇都宮オフィスの弁護士が分かりやすく説明するとともに、不安な状況を除去すべく尽力します。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています