親子関係不存在確認の訴えとは? どのような状況で誰ができるのか

2021年04月08日
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親子関係不存在確認の訴えとは? どのような状況で誰ができるのか

女性は子どもを出産するわけですから、生まれてきた子どもは確実に自分の子どもであるとわかります。しかしながら、男性は自ら子どもを産むわけではありませんので、育てている子どもが自分の子どもかどうかの確信を持てません。

結婚生活を続けながらも、「この子どもは本当の子どもだろうか」と疑念を抱いている方もいらっしゃるのではないでしょうか。


そこで本記事では、自分の子どもでなければ親子関係を終了させたいと考えている方に向けて、親子関係不存在確認の訴えの概要や流れを、ベリーベスト法律事務所 宇都宮オフィスの弁護士が解説します。

1、親子関係不存在確認の訴えとは?

まずは、親子関係不存在確認の訴えの意味、訴えを申し立てられる場合や申立人の要件を確認しておきましょう。

  1. (1)親子関係不存在確認の訴えの概要

    親子関係不存在確認の訴えとは、嫡出推定が及ぶ、子どもとの法律的な親子を終了させるための手続きです。

    原則として、男性が「自分の子どもではない」として、親子関係を否定する場合には、出生から1年以内であれば「嫡出否認」を行うことになります。ところが、嫡出否認を行えるケースは限られており、すべての親子関係を否定したい方が嫡出否認の対象になるわけではありません。

    その場合は、「親子関係不存在確認」の手続きを行います。親子関係不存在確認は、まず調停を申し立て、それで合意できなかった場合に訴訟を提起することになります。

  2. (2)訴えができる場合

    夫の子どもである可能性が明確である場合は、嫡出推定を受ける必要がないと考えられます。そのため、親子関係不存在確認の訴えは、親子関係不存在確認調停で成立に至らなかった場合に限られます。これは、わが国が調停前置主義であることから、調停を経ないで提起された人事に関する訴訟は、調停に付さなければならないと定められているからです(家事事件手続法第244条)。親子関係不存在確認調停を申し立てられるのは、「子どもに嫡出の推定が及ばない場合」です。

    嫡出の推定とは「婚姻後200日〜離婚後300日に生まれた子どもは、夫婦の子どもと推定する」という民法で規定された原則です。

    しかしながら、その期間であっても以下のようなケースがあるでしょう。

    • 夫が長期海外出張中で妻と会っていなかった
    • 夫が服役中だった
    • 夫が単身赴任中で会っていない
    • 別居をしていたなど事実上の離婚状態だった


    これらのように、夫の子どもではないといえるとき「親子関係不存在確認」の調停を申し立てることになります。

    以下に、親子関係不存在確認を申し立てることができるケースをまとめておきますので、参考にしてください。原則としては、推定が及ばない子どもまたは推定を受けない子どもは、嫡出否認の訴えにより親子関係を確定することになります。

    • 婚姻後200日〜離婚後300日に生まれた子どもではあるが、夫婦が別居等により交流を持っていなかった場合
    • 婚姻前に妊娠しており、婚姻後200日未満で出産した場合
    • 婚姻前に妊娠、出産をした場合
  3. (3)訴えを申し立てられる方

    親子関係不存在確認を申し立てられる方は以下の通りです。未成年の子ども本人が申し立てる場合は、法定代理人が手続きを行うことになります。

    • 子ども本人
    • 父親
    • 母親
    • 親子関係に関し訴えの利益を有する第三者

2、嫡出否認の訴えと親子関係不存在確認の訴えの違い

次に、嫡出否認と親子関係不存在確認の訴えの違いを解説します。

  1. (1)嫡出否認とは

    嫡出否認とは、「婚姻後200日〜離婚後300日」の間に生まれた「嫡出推定を受ける子ども」と父親の親子関係を否定する場合に行う手続きです。嫡出否認は子どもの出生から1年以内に申し立てなければなりません。

    「夫婦は同居していたけれど、妻が浮気をしていたため、子どもは浮気相手の子どもである」という場合は嫡出推定を受けることになります。

    しかしながらこのような場合、父親は「子どもの父親は自分ではない」と主張したいはずです。そこで、行える手続きが嫡出否認です。

  2. (2)嫡出否認と親子関係不存在確認の訴えの相違点を比較

    嫡出否認と親子関係不存在確認の訴えの違いも確認しておきましょう。

    ●嫡出推定が及ぶかどうか
    嫡出否認と親子関係不存在確認の訴えの大きな違いは、「嫡出推定が及ぶ子どもかどうか」という点です。

    嫡出否認は、嫡出推定が及ぶ子どもとの親子関係を否定するときに行う手続きです。一方で、親子関係不存在確認の訴えは、嫡出推定が及ばない子どもとの親子関係を否定する際に行います。

    「婚姻中に妻が妊娠をして、婚姻中に出産をした」というケースでは、嫡出推定が及びます。嫡出推定が及ぶケースで、妻が浮気相手の子どもを出産して、夫が親子関係を否定したい場合等に行うのが嫡出否認です。

    ●申し立てられる人の範囲
    嫡出否認を申し立てられるのは嫡出推定を受ける子どもを有する夫だけです。しかし、親子関係不存在確認は、父だけでなく母、子ども、訴えの利益を有する第三者も申し立てられる点も大きな違いです。

    ●申し立ての期限
    嫡出否認には、出生後1年という期間の制限がありますが、親子関係不存在確認の訴えには期限はありません

  3. (3)DNA鑑定で自分の子どもではないと判定されたらどうすれば?

    法的手続きに着手する前に、ご自身でDNA鑑定をして、子どもとの親子関係では可能性がないことが非常に高い確率であるとの判定がでた場合、選択できる手続きを解説します。

    まず、嫡出推定が及ぶ子どもについては、出生から1年以内に父親が嫡出否認の調停を申し立てます。1年を超えた場合は、嫡出否認はできません。また、親子関係不存在確認の訴えも原則認められません。

    したがって、嫡出推定が及ぶ子どもで、出生してから1年を超えてからDNA鑑定で親子関係が否定された場合にできる法的手続きは、現状存在しません。これは、生物的な父子関係が存在しないにもかかわらず、法律上の父子関係になる事例が生じることを、民法がこのような不一致が発生することを容認していると解釈できると考えられているからといえます。

    嫡出推定が及ばないとされる「夫の不在期間に妊娠した子ども」であれば、婚姻後200日〜離婚後300日に生まれていても、親子関係不存在確認の訴えが可能です。

3、親子関係不存在確認の訴えの流れをわかりやすく解説

親子関係不存在確認調停の流れと必要な書類を確認していきましょう。

  1. (1)親子関係不存在確認調停の流れ

    親子関係不存在確認の訴えは以下の流れで進みます。

    ●申し立て
    後述する必要書類を、家庭裁判所に提出をします。書類が不備なく受理されれば申し立ては完了です。

    ●期日の連絡
    家庭裁判所の書記官から、期日の連絡が来ます。期日の連絡は双方に郵送でなされます。

    ●調停期日
    調停委員を介して、双方の主張を伝えます。双方が合意をして、事実を認めた場合にはDNA鑑定が行うこともあります。DNA鑑定の結果により、合意が正当であると判断された場合は、「合意に相当する審判」が下されます。

    合意が正当でなければ不成立です。また、調停期日に相手が出席しない場合や、調停で合意できなかった場合は「不成立」となります。
    その場合は、調停ではなく訴訟を提起することになります。

    ●戸籍訂正の申請
    合意に相当する審判が言い渡されて、審判書謄本が送付されたら役所で戸籍訂正をします。これで、法律上の親子関係がないことが認められます。

  2. (2)親子関係不存在確認調停のために必要な書類

    親子関係不存在確認調停のためには以下の書類が必要です。

    • 申立書2通
    • 連絡先等の届出書1通
    • 進行に関する照会回答書1通
    • 申立人、相手方の戸籍謄本
    • 子どもの出生届を提出していない場合は、子どもの出生証明書の写し1通
    • 収入印紙1200円分
    • 連絡用の切手 3095円分(500円4枚、140円1枚、84円10枚、10円×10枚、5円×2枚、1円×5枚)


    このうち、申立書には、関係者の氏名や住所、生年月日などを書く必要があります。なお、申立書は、相手方に開示されます。開示されたくない内容がある場合は、家庭裁判所に相談をしておきましょう。

4、子どもとの親子関係について疑問を抱いている方は弁護士にご相談を

「僕は子どもと血がつながっていない」と疑問を抱いている方で、もし子どもが自分の子どもでなければ、親子関係を断ち切りたいと考えている場合は、早めに弁護士に相談をしましょう。子どもの出生後1年以内であれば嫡出否認を申し立てなければなりません。また、1年を超えている場合には、状況によっては親子関係不存在確認調停を申し立てる必要があります。

状況によって選択すべき手続きが異なります。また、親子関係を否定する場合、血縁上の親子かどうかの事実関係だけでなく、子どもの生育環境等を考慮して総合的に判断されます。医学的に父子ではないと判断されても、法律上の親子関係は維持されるべきと判断されることもありえます。

弁護士に相談をすれば、弁護士が親子関係を否定することができるかどうかも含めて適切に判断をします必要な書類や手続きについて丁寧にアドバイスできますので、まずは弁護士にご相談ください

5、まとめ

父親が子どもとの親子関係に疑問を抱いた場合にできる手続きは、嫡出否認、もしくは親子関係不存在確認調停です。

いずれの手続きを行うべきかの判断はケース・バイ・ケースとなりますので、できるだけ早く弁護士にご相談ください。ベリーベスト法律事務所 宇都宮オフィスでは親子関係で悩んでいる方のご相談を受け付けております。お気軽にご連絡ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています