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森林法とは? 山の運営や購入に必須の法律知識を学ぼう

2021年07月08日
  • 個人のトラブル
  • 森林法
森林法とは? 山の運営や購入に必須の法律知識を学ぼう

栃木県は、北西や東部に山地が広がっており、南部には関東平野が広がっています。森林面積は、約35万ヘクタールあり、栃木県の面積の半分以上を占めています。

近年のキャンプブームの影響からか、「自分だけの山を持ちたい」と考える方が増えてきています。自宅から車で行ける距離の山を購入して、週末はそこで家族とキャンプなどして過ごす姿がメディアで紹介されたことも影響しているのかもしれません。しかし、山を購入する際には、一般的な宅地の購入とは異なる規制がありますので、十分に理解した上で行うことが必要です。

今回は、山の運営や購入する際に知っておきたい森林法の知識について、ベリーベスト法律事務所 宇都宮オフィスの弁護士が解説します。

1、森林法の保護が保護しているものとは

森林法とは、森林計画、保安林その他の森林に関する基本的事項を定めて、森林の保続培養と森林生産力の増進を図ることを目的として、昭和26年に制定された法律です。

この法律では、全国森林契約・地域森林計画などの森林計画制度、林地開発許可制度、保安林制度などが規定されています。

森林法の内容としては、以下の例が挙げられます。

  • ① 農林水産大臣が全国の森林について5年ごとに全国森林計画をたてる
  • ② 農林水産大臣が定めた「森林計画区」別に、都道府県知事が地域森林計画をたてる
  • ③ 地域森林計画対象民有林で、土地の形質の変形などの開発行為を行う場合には、原則として、都道府県知事の許可が必要
  • ④ 農林水産大臣は、水源のかん養・土砂の流失の防備などの目的で、森林を「保安林」として指定したり、当該目的を達成するために森林の造成事業等を行う必要がある場合には、森林や原野などを「保安施設地区」として指定したりすることができる
  • ⑤ 保安林と保安施設地区において、立木の伐採と土地の形質の変更などを行う場合には、原則として、都道府県知事の許可が必要

2、山を購入したときに気を付けるべきこと

山を購入することになった場合には、以下の点に気を付けるようにしましょう。

  1. (1)森林の土地の所有者届出が必要

    平成23年4月の森林法改正によって、新たに森林の土地所有者となった場合には、市町村長に対して、「森林の土地の所有者届出書」の提出が必要になりました。行政からの森林所有者に対する助言や、間伐事業を行う際の森林の集約・効率化など、諸制度を円滑に遂行するために森林所有者を把握することが重要であるため、このような届け出制度が創設されました。

    届け出の対象となるのは、売買、相続、贈与、法人の合併など移転の事由を問わず、都道府県の地域森林計画の対象森林を取得した場合です。登記上の地目や面積に関係なく届け出の対象となります。

    新たに森林を取得し所有者となった場合には、90日以内に取得した土地の市町村長に届け出をしなければなりません。この届け出を怠った場合には、10万円以下の過料が科されることがありますので注意が必要です。

  2. (2)保安林の指定を受けている場合には、開発が制限される

    購入した山が森林法により、「保安林」に指定されている場合もあるでしょう。保安林も通常の山林と同様に売買の対象となりますが、保安林制度による規制がありますので注意が必要です。

    森林法の保安林制度とは、水源のかん養、土砂災害の防止などの目的を達成するために、森林を保安林として指定し、以下のような行為を規制する制度です。

    ① 立木の伐採制限
    保安林内で立木を伐採する場合には、都道府県知事の許可または届け出が必要となり、指定された方法および限度に従って伐採をしなければなりません。

    ② 土地形質の変更制限
    保安林の適切な保全を図るため、保安林内において土地の整地や掘削などの形状変更、立木の損傷といった土地の形質変更などの行為をする場合には、あらかじめ都道府県知事の許可を受けることが必要になります。

    ③ 伐採後の植栽義務
    森林所有者などが保安林の立木を伐採した場合は、あらかじめ定められている植栽の方法、期間および樹種に従って植栽を実施しなければなりません。

  3. (3)維持・管理費用がかかる

    通常の山林の場合には、固定資産課税標準額が30万円未満の土地が多いため、固定資産税がゼロになることが多いです。

    しかし、整備された土地とは異なり、山林は、あっという間に草木が生い茂ってしまいますので、少し放置しただけで荒れ地のようになってしまうことがあります。キャンプや森林浴などで利用したいと考える場合には、定期的に手入れが必要になりますので、そのための手間とコストも考慮しておかなければなりません。

3、森林法を守って山を運営するポイント

森林法を守って山を運営しようとするときには、以下のポイントを押さえておきましょう。

  1. (1)立木の伐採には届出が必要

    森林にある木を伐採する際には、事前に「伐採及び伐採後の造林の計画の届出」を市町村長に行うことが義務付けられています。また、伐採後は、事後に「伐採及び伐採後の造林に係る森林の状況報告」を行うことが義務付けられています。

    「伐採及び伐採後の造林の計画の届出」は、伐採を始める30日から90日前までに提出し、「伐採及び伐採後の造林に係る森林の状況報告」は、造林を完了した日から30日以内に提出しなければなりません。

    無届けで立木を伐採した場合には、市町村長が伐採の中止や造林を命じることがありますので注意が必要です。

  2. (2)森林火災が起きた場合の責任

    購入した山でキャンプをしたものの、火の不始末が原因で山火事を引き起こしてしまうということもあります。森林火災を起こした場合には、民事上および刑事上の責任を問われることもありますので、十分に注意しましょう。

    ① 民事上の責任
    山火事によって、第三者の山林や施設などを焼失させてしまった場合には、民事上の賠償責任を負う可能性があります。

    通常の賠償責任に関しては、当該行為について故意または過失がある場合に責任が認められます(民法709条)。

    しかし、山火事のような失火の場合には、失火責任法が適用されますので、賠償責任が生じるのは重過失があった場合だけです。
    重過失とは、通常要求される程度の注意をしなくても、容易に結果を予見することができたにもかかわらず、漫然とこれを見過ごした場合をいいます。

    重過失かどうかについては、個別具体的な事情により判断されることになります。賠償責任を問われる事態になった場合には、重過失の有無を争うためにも、弁護士に相談をするようにしましょう。

    ② 刑事上の責任
    過失によって森林の火災を起こしてしまった場合には、森林法で処罰されます。失火によって、他人の森林を焼いた場合には、森林法203条1項によって処罰の対象となり、また、失火で焼失した森林が、自分が所有するものであっても、それによって公共の危険が生じた場合には、森林法203条2項によって処罰の対象となります。

    失火によって森林火災を生じさせた場合には、どちらのケースでも50万円以下の罰金に処せられます。

  3. (3)森林経営計画の作成による優遇措置

    森林経営計画とは、森林所有者または森林の経営の委託を受けた者が、自らが経営をしている森林のうち、ある程度まとまりがある森林を対象に、森林の施業および保護について作成する計画です。以前は、「森林施業計画」と呼ばれていたもののことです。

    森林経営計画を作成すれば、以下のような優遇措置を受けることができます。

    ① 税制

    • 山林所得に係る森林計画特別控除(所得税)
    • 延納等の特例(相続税)
    • 課税価格の計算特例
    • 公益的機能別施業森林の評価の特例
    • 相続税の納税猶予

    ② 金融

    • 日本政策金融公庫資金などにおける融資条件の優遇

    ③ 補助金

    • 森林環境保全直接支援事業(造林補助)
    • 森林整備地域活動支援交付金

4、森林法違反行為をしたかも、と不安になったら

キャンプや森林浴など、他人の目を気にすることなく自然を楽しむことができる手段として、自分の山を購入しようとする方が増えています。山の購入自体は、特別な資格や許可などはいりませんので、誰でも簡単に購入することができます。

しかし、山を購入した後には、森林法に基づいた各種届け出が必要になりますし、自分が所有する山であっても立木を伐採する場合には許可や届け出が必要になることがあります。

また、森林産物をむやみに窃取した場合には、森林窃盗罪に該当するおそれもありまし(森林法197条)、火の不始末などが原因で森林火災を引き起こした場合には、民事および刑事上の責任を問われる可能性もあります。

山は、境界があいまいとなっていることもあり、知らないうちに他人の山林に立ち入って権利を侵害している可能性もあります。

そのため、森林法その他の法令に違反する行為をしたかもしれないと不安になった場合には、法律の専門家である弁護士に相談をするのがおすすめです。弁護士であれば、森林法など山に関連する複雑な法律であっても適切に解釈することによって解決に導いてくれるでしょう。

これから山の購入を考えている方やすでに山を購入した方で、森林法に関する手続きに不安を感じている方は、ベリーベスト法律事務所 宇都宮オフィスまでお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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