モノなしマルチ商法は違法? 解約・返金してほしい場合の対処法
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宇都宮市消費生活センターでは、年末年始と臨時休館日を除いて毎日、消費者被害などに関する相談を受け付けています。
「マルチ商法(ネットワークビジネス)」といえば、「ねずみ講」式に上から下へ商品を販売する悪徳商法を思い浮かべる方が多いかと思います。しかし、最近では新たな形態として、商品の購入ではなく、サービスの契約を勧誘するマルチ商法がよく見られるようになりました。
このような「モノなしマルチ商法」によって締結した契約は、消費者側からいつでも解除することができます。マルチ商法にだまされて契約を締結してしまい、後悔している方は、速やかに弁護士などへご相談ください。
今回は、いわゆる「モノなしマルチ商法」について、概要・勧誘方法・契約解消の方法などをベリーベスト法律事務所 宇都宮オフィスの弁護士が解説します。
(出典:「宇都宮市消費生活センター」(独立行政法人国民生活センター))
目次
1、モノなしマルチ商法とは?
「モノなしマルチ商法」とは、商品の購入ではなく、役務(サービス)に関する契約の締結を勧誘するマルチ商法です。具体例は(2)で紹介しています。
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(1)マルチ商法の仕組み
いわゆる「マルチ商法」とは、特定商取引法で定義される「連鎖販売取引」や、その勧誘行為の総称です。「ネットワークビジネス」などと呼ばれることもあります。
「連鎖販売取引」とは、物の販売や有償でのサービスの提供を内容とする事業について、消費者に対してマージンやボーナスなどの特定利益が得られると勧誘したうえ で、物品の再販売・受託販売・販売あっせん、またはサービスの提供・提供あっせんを委託し、その一方で消費者から登録料や商品購入費などの特定負担を受け取る取 引を指します(特定商取引法第33条第1項)。
マルチ商法の典型的な仕組みは、たとえば以下のようなものです。
(例)- A社は消費者Bに対し、自社サービスに関する契約締結の勧誘業務を委託する。成約すればBは成約料を得られるが、毎月5万円の登録料をA社に支払わなければならない。
- A社は消費者Bに対し、自社の商品の販売業務を委託する。商品の売り上げはBのものになるが、その前にBはA社から商品を1個当たり1万円で買い取らなければならない。
多くのマルチ商法では、消費者がさらに別の消費者を勧誘することが、マージンやボーナスの獲得条件とされています。そのため、消費者の間で連鎖的にマルチ商法の契約が拡大していった結果、特に末端に近い位置の消費者が大きな損失を被りやすいことが社会問題となっています。
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(2)モノなしマルチ商法の例
連鎖販売取引は(マルチ商法)、商品を販売するタイプとサービスを提供するタイプの2種類に大別されます。
「モノなしマルチ商法」と呼ばれるのは、サービスを提供するタイプのマルチ商法です。
(例)- オンラインサロンへの加入を勧誘するマルチ商法
- サブスクリプション型の有料ウェブサービスへの登録を勧誘するマルチ商法
- 会員制の暗号資産投資サークルへの加入を勧誘するマルチ商法
2、モノなしマルチ商法のよくある勧誘方法
「モノなしマルチ商法」は、一般消費者の警戒感を解き、さらに自尊心や欲を刺激するような方法で勧誘が行われがちです。よくある勧誘方法としては、以下の例が挙げられます。
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(1)「すごい人に会ってもらいたい」
マルチ商法グループの主宰者や幹部を「すごい人」などと称し、ぜひ会ってもらいたいと言って消費者の気を引こうとするのは、マルチ商法の典型的な勧誘方法です。
「すごい人」とされる人は、特に有名ではないものの、「○億円の利益を上げた」「革命的なサービスを立ち上げた」などと、多分に脚色を交えながら「すごそう」という印象を与えるような説明がなされるケースが多いでしょう。
もうかっている人、能力の高い人と直接話した、評価してくれたという経験から、自分がやってもうまくいくと妄信して、マルチ商法にのめり込んでしまうケースが後を絶ちません。 -
(2)「絶対もうかる」「簡単に稼げる」
誰でも絶対もうかる、簡単に稼げるといった内容を告げて連鎖販売取引(マルチ商法)を勧誘する行為は、「断定的判断の提供」に当たり、違法です。
しかし、勧誘対象者の警戒感を解き、「自分でもできる」という印象を強く与えるために、不確実な事項に関する断定的判断を違法に提供して勧誘する、悪質なマルチ商法グループが数多く存在します。 -
(3)マルチ商法であることは告げない
マルチ商法は過去に何度も社会問題化しているため、多くの一般消費者の間で警戒感が高まっている状況です。
マルチ商法グループはこうした状況を受け、「マルチ商法」であると告げて消費者向けの勧誘を行うことはほとんどありません。「人脈が広がる」「頑張っただけ収入が増える」といった聞こえのよい事柄だけを伝えて、甘い言葉で消費者からの搾取を狙っています。
3、モノなしマルチ商法の契約を解消し、返金を受けるには?
モノなしマルチ商法の勧誘を受けて契約を締結した場合でも、消費者は各種法律のルールに従い、契約を解除または取り消すことができます。
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(1)契約日から20日以内の場合|クーリングオフ
モノなしマルチ商法の契約締結日から起算して20日以内であれば、消費者はクーリングオフによって契約を解除できます(特定商取引法第40条第1項)。
なお、クーリングオフ制度について、勧誘者などの不実告知により消費者が誤認していた場合や、威迫によって消費者が困惑していた場合などには、相手方からクーリングオフに関する書面を受領(じゅりょう)した日が20日間の起算日となります。
クーリングオフをすると、すでに支払った契約料などの金銭については、相手方に対して全額の返還を請求できます。相手方に損害賠償や違約金を支払う必要もありません。
クーリングオフの効果は、相手方に対する通知を発した日に生じます(同条第2項)。
内容証明郵便またはメールなど、記録の残る形でクーリングオフ通知を発送しましょう。 -
(2)契約日から20日経過後の場合|将来に向かって契約を解除
20日のクーリングオフ期間が経過しても、消費者は将来に向かってモノなしマルチ商法の契約を解除できます(特定商取引法第40条の2第1項)。
クーリングオフとは異なり、将来に向かっての契約解除であるため、すでに提供されたサービスの対価に当たる金銭の返還を請求することはできません。
ただし、当該対価に遅延損害金を加算した額が損害賠償や違約金の上限であり、それを超える損害賠償・違約金の定めは無効です(同条第3項)。
クーリングオフ期間の経過後であっても、マルチ商法から抜けたいと思っている場合には、すぐに相手方に対して解除通知を発送してください。 -
(3)契約の取り消し|特定商取引法・消費者契約法・民法
クーリングオフ期間でも、以下の法律によって契約を取り消せる場合には、すでに支払った契約料などの返金を請求できます。
- ① 特定商取引法
不実告知、法定事項の不告知などにより、消費者が誤認をして契約を締結した場合は、当該契約を取り消すことができます(特定商取引法第40条の3)。 - ② 消費者契約法
契約締結の勧誘に当たって以下の行為がなされた場合、消費者は当該契約を取り消すことができます(消費者契約法第4条第1項~第4項)。
- 不実告知
- 断定的判断の提供
- 不利益事実の不告知
- 不退去
- 消費者の退去妨害
- 消費者の不安をあおる告知
- 消費者の恋愛感情を利用したデート商法
- 判断力の低下の不当な利用
- 霊感商法
- 契約締結前にサービスを提供する行為
- 過量契約
- ③ 民法
消費者が重要な事実を勘違いした状態で、または詐欺・強迫を受けて契約を締結した場合は、当該契約を取り消すことができます(民法第95条、第96条)。
- ① 特定商取引法
4、モノなしマルチ商法の被害に関する相談先
モノなしマルチ商法の被害に遭ってしまった場合は、消費者ホットラインや最寄りの消費生活センター、弁護士などへお早めにご相談ください。
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(1)消費者ホットライン・消費生活センター
消費者庁は、消費者被害に関する全国共通の電話番号である「消費者ホットライン(188)」を設けています。消費者ホットラインに電話をすると、身近な消費生活センターや消費生活相談窓口につながり、今後の対応についてアドバイスを受けることができます。
また、最寄りの消費生活センターに直接相談することも可能です。 -
(2)弁護士
弁護士は、モノなしマルチ商法の契約解除・取り消しや返金請求について、マルチ商法グループとの対応を一括して代行いたします
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ご自身で対応するのが精神的につらいという方も、弁護士にお任せいただければ安心です。
マルチ商法被害にお悩みの方は、一度弁護士までご相談ください。
5、まとめ
マルチ商法グループの主宰者には悪質な事業者が多く、たくさんの消費者がだまされて被害に遭っています。マルチ商法に関する契約はいつでも解除できるので、不本意に契約を締結してしまった方は弁護士へのご相談がおすすめです。
悪質なマルチ商法・訪問販売・電話勧誘販売などの被害に遭ってしまった方は、お早めにベリーベスト法律事務所にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています