中古住宅の購入後にトラブル発生! 売り主に追及できる責任は?
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東京などでリフォーム(リノベーション)済みの中古物件の人気が高まっていることもあり、宇都宮市内でも中古住宅に注目した事業展開をする会社も出てきています。中古住宅の魅力は、買い主が良質な居住環境を新築よりも安く手に入れられる可能性があることでしょう。
しかし、その反面、中古住宅という性質上、購入後に不具合が生じトラブルを抱える可能性も高いといえます。そのため中古住宅の購入を検討する際には、購入後のトラブルの対処法まで押さえておいたほうが安心です。
本コラムでは、「中古住宅購入後にトラブルが生じたときには、どのような責任追及ができるのか」についてベリーベスト法律事務所 宇都宮オフィスの弁護士が解説します。
1、中古住宅購入後に生じがちなトラブルとは?
中古住宅の不動産売買取引では、購入後に家自体の瑕疵(かし)や欠陥を原因とする次のようなトラブルが生じることが少なくありません。
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(1)設備が故障した!
中古住宅では、設備の老朽化が進んでいることもあります。たとえば、中古住宅購入後に、温水便座や給湯器などの故障が判明した、などのケースは、よくある代表的なトラブルのひとつといえるでしょう。
設備トラブルを防ぐためには、引き渡しのときに売り主が作成した「付帯設備表」と照らし合わせながら、買い主自身で入居直後に実際に設備が使えるかどうかを確認しておくことが大切です。
購入後に設備の故障が判明したときには、まずは仲介の不動産会社に連絡するなどしてトラブルの解決を図っていく必要があります。 -
(2)雨漏りやシロアリ被害が判明した!
中古住宅を購入してしばらくたつと、雨漏りや水漏れなどのトラブルが生じることがあります。またシロアリの被害が判明したようなケースでは、補修費用を考えただけで頭が痛くなることでしょう。こうしたトラブルについては、売買契約の契約内容どおりでなかったという契約不適合責任(民法第562条以下)を売り主に問える可能性があります。
なおトラブルを予防するためには、中古住宅の購入前に建物状況調査(インスペクション)の活用することがおすすめです。建物状況調査を依頼すれば、専門家が住宅の劣化や不具合の状況を調査し、欠陥の有無や補修したほうがよい箇所・時期などを客観的に調査してもらいましょう。建物状況調査に関する書面は、中古住宅を購入する場合、仲介業者である宅建業者に書面交付義務が定められています(宅建業法37条第2号の2)。仲介業者である不動産会社から交付された書面を確認してみましょう。 -
(3)依頼内容どおりにリフォームされていない!
中古住宅を購入後、買い主がリフォーム業者に頼んで、耐震改修リフォームや内装や排水管などのリフォーム工事をすることもあります。このようなリフォーム工事の際、依頼どおりにリフォームがされていないといったトラブルが生じたというケースもよくあるトラブルのひとつです。
リフォーム工事では、リフォーム会社に請負契約に基づく契約不適合責任を問える可能性があります。
なおリフォームトラブルを予防するためには、「リフォーム瑕疵保険」に加入するリフォーム会社かどうか確認してから依頼することも有益でしょう。「リフォーム瑕疵保険」に加入していれば、リフォーム会社が倒産したときなどには保険金を注文主が受け取ることができます。また、リフォーム部分に瑕疵が存在する場合も、保険金が下りる可能性があります。
ただし、保険期間が過ぎていると、保険金は下りませんので、保険契約を確認しましょう。
2、中古住宅購入後の住宅トラブルはまず契約書を確認
中古住宅の購入後に住宅トラブルが発生したときには、まずは契約書を確認する必要があります。中古住宅自体のトラブルであれば売買契約書、リフォーム工事のトラブルであれば請負契約書などが該当します。
このようなトラブルでは、民法で定められた「契約不適合責任」を追及できる可能性があります。なお、「契約不適合責任」とは、民法改正以前に「瑕疵担保責任」と呼ばれていた制度が改正され、令和2年4月に施行された改正民法によって規定が新設された制度です。
中古住宅の売り主やリフォーム会社の契約不適合責任は、民法の規定では任意規定であるため、契約書に記載されている内容が優先されます。そのため契約書に記載されている契約内容をしっかり確認する必要があります。また仲介業者などにアフターサービスの有無や、瑕疵保険への加入の有無についても確認しておくとよいでしょう。これも口頭だけではトラブルに陥りやすいので、書面にも記載があるか確認することをおすすめします。
続いて、中古住宅の売り主などに追及できる「契約不適合責任」の具体的な内容をご説明していきます。
3、中古住宅の売り主の「契約不適合責任」とは
中古住宅購入後に欠陥が発覚したときには、売り主に「契約不適合責任」を追及できる可能性があります。
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(1)契約不適合責任とは
契約不適合責任とは、引き渡された目的物が契約内容(種類、品質、数量など)に適合していないときに売り主や請負人に生じる責任です。契約の趣旨どおりのものを引き渡さなければ、その責任は売り主などが負うというものです。ここでの「契約に適合」とは、契約の趣旨に合致しているかどうかという意味になります。契約を解釈する必要がありますので、適合しているかどうかの判断については、弁護士に相談されることをおすすめします。
従来の「瑕疵担保責任」では「隠れた瑕疵」であるときに責任追及が可能でしたが、「契約不適合責任」は「隠れた瑕疵」でなくても責任追及できる可能性があります。たとえば、前述の「1、中古住宅購入後に生じがちなトラブルとは?」でご紹介した3つのトラブルでは、基本的に契約不適合責任を売り主や請負人に追及できる可能性があるということです。 -
(2)売り主に何を請求できる?
契約不適合責任の具体的な追及方法としては、次の4つの方法があります。
①追完請求権(民法第562条第1項)
追完請求は、後から契約内容に適合する履行を求めるものです。
買い主が追完請求すると、売り主は「目的物の修繕をする」「不足分を引き渡す」「代わりのものを引き渡す」といった中から適切な方法によって責任を果たすことになります。たとえば中古住宅であれば追完請求して、売り主に家の不具合の修繕をしてもらったり不足する設備を追加してもらったりといったことが考えられます。
②代金減額請求(民法第563条第1項)
代金減額請求は、原則、売り主に相当期間内に履行の追完をしてほしいと催告しても履行しないときに請求できます。
ただし、履行の追完が不能であったり、売り主が追完を拒絶する意思を明確に表示したり、追完しても日時が過ぎれば契約の目的が達成できない場合であったり、その他追完を受ける見込みがないなどの場合には、直ちに減額請求が可能になります(民法第563条第2項各号)。
たとえば中古マンションの雨漏りに対して、いきなり「売買代金を減額せよ」と請求することはできず、まずは「修繕してほしい」と請求して待つことが基本になります。もしいきなり代金減額請求をしたいときには、契約書に特約として、その旨を定めておく必要があります。
③解除
売り主に追完を履行してほしいと催告しても履行しないときには、代金減額請求ではなく契約を解除することも可能とされています(民法第564条、民法第541条)。また、売り主が追完の履行を明確に拒絶しているような場合には、催告をせずに契約を解除することができるとされます(542条第1項第2号)。
④損害賠償請求
生じた不具合について売り主に悪意や過失があった場合には、売り主に損害賠償請求することができます。これは、債務不履行と同様、売り主が悪意、または過失があることが必要であるということになります。
従来の「瑕疵担保責任」では、瑕疵が「隠れた」瑕疵であることが必要でした。しかし、改正により、瑕疵が隠れていること、という要件は不要となりました。この点は、買い主にとっては、より使いやすい制度になったといえるでしょう。
また、契約不適合責任に基づく損害賠償請求が認められる場合には、従来とは異なる範囲を損害として算定することになります。つまり請求できる損害賠償額は、従来請求が認められていた金額よりも高額になる可能性があるということです。 -
(3)責任追及できる期間・責任免除の特約の有効性
契約不適合責任は、基本的に不適合を知ってから1年以内に売り主に通知すれば追及できることが民法で規定されています(民法第566条)。
しかしこれは強行規定ではないので、この期間より短く設定するような契約も有効です。ただし宅建業者が売り主になっているような場合には、2年間責任を負うとする宅地建物取引業法の規制を受けるので、契約によって当事者がこの期間を短縮して設定することはできません。なお、中古物件の売り主の契約不適合責任を免除する旨の特約も原則有効です。
ただし、消費者契約法の適用を受け、契約不適合責任免除条項が、無効となる可能性もあります。この点は注意しましょう。
そのため、契約書に責任免除の特約があるのかなど、取引の際には契約不適合責任の条項に注意して確認する必要があります。
4、リフォームトラブルで損害賠償請求できる?
リフォーム工事は、注文主と請負人の請負契約に基づいて行われます。したがって、請負契約においても、売買契約と同様に「追完」「減額請求」「損害賠償請求」「解除」の方法で契約不適合責任を問える可能性があります。リフォーム工事によるトラブルでは、リフォーム会社に損害賠償を請求できる可能性があるということです。
原則として、追完、減額、損害賠償、解除等のうち、もっとも合理的な請求をすることが求められます。改正前民法では、修補に過分な費用が掛かる場合には、修補を選択することができないという規定が存在しました。この条文は削除されましたが、過分な費用が掛かる修補を請求してもよいというわけではありません。
したがって、リフォーム箇所に契約不適合部分があったとして、その修補に過分な費用が掛かる場合には、修補請求という手段を選択することができない場合がありうる、ということになります。
どのような請求をすべきかについては、専門知識が必要であるため、弁護士に相談することをおすすめします。
5、まとめ
本コラムでは、「中古住宅購入後にトラブルが生じたときには、どのような責任追及ができるのか」について解説しました。
中古住宅購入後のトラブルは、契約不適合責任を売り主などに追及することが解決策となる場合があります。その場合には、契約書に売り主が責任を負う期間についての特約や責任免除の特約がないかなどを確認することが大切です。弁護士に相談する際には、契約書や、契約当時のやり取りが分かる資料などを準備し、持参すると効率的に相談できます。
トラブルの解決にお悩みのときには、おひとりで悩むことなく弁護士に相談するとよいでしょう。ベリーベスト法律事務所 宇都宮オフィスの弁護士は、中古住宅購入後に起きてしまったトラブルをスムーズに解決できるよう全力でサポートします。ぜひお気軽にご相談ください。
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