フィッシング詐欺の被害にあったときに返金を求める方法を解説

2023年06月27日
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フィッシング詐欺の被害にあったときに返金を求める方法を解説

令和6年の「フィッシング対策協議会」が発表によると、同年5月のフィッシング報告件数は前月比約22.4%増の11万3789件であり、令和5年7月の10万7948件を超えて過去最多の報告件数となりました。
とくに、電子マネー「ファミペイ」やクレジットカード「セゾンカード」「イオンカード」、通販サイト「Amazon」を騙る(かたる)フィッシングサイトやフィッシングメールによる詐欺被害が多発しており、報告件数の約6割を占めています。
また、同年5月には栃木銀行も同行を騙るフィッシング詐欺への注意喚起を発表しています。

フィッシング詐欺の手口は巧妙であり、なにげなくインターネットを利用していたりメールに返信をしていたりするだけでも、詐欺にかかる可能性があります。さらに、フィッシング詐欺による被害額は高額なものとなる傾向があるのです。
本コラムでは、フィッシング詐欺の手口や被害を予防するための注意点、返金を求める方法などについて、宇都宮オフィスの弁護士が解説します

1、フィッシング詐欺とは? 手口の内容や具体例

「フィッシング詐欺」と聞くと、まず頭に浮かぶのは「釣り」を意味する英語の「fishing」かもしれませんが、ここでいうフィッシングは「phishing」と表記します。語源は諸説あり定かではありませんが、ハッカーなどの間で使われはじめた俗語なので、やはり釣りを意味するfishingとのつながりもあるようです。

  1. (1)フィッシング詐欺の手口

    フィッシング詐欺とは、インターネットユーザーから経済的価値がある情報を奪う詐欺的行為を指します。
    なりすましのメールなどから偽のウェブサーバーへと誘導し、クレジットカード番号やパスワードを入力させることで情報を奪うのが典型的な手口です。

  2. (2)実際にあったフィッシング詐欺の事例

    フィッシング詐欺は、インターネットユーザーが日ごろからよく利用するサービスを敏感に察知してワナを仕掛けてきます。

    実際に発生した事例としては、次のようなものがあります。

    • 銀行を名乗って「口座に制限がかかったので再開手続きが必要」というメール・SMSを送信し、偽サイトで口座情報やログインパスワードなどを奪う
    • 宅配便業者の不在通知サービスを装って「再配達の依頼はこちら」というリンクを添付したメールを送信し、偽サイトへ誘導する
    • 正規のサイトにアクセスしたユーザーに対して「パスワードを再入力してください」といったポップアップを表示させ、パスワードなどの情報を詐取する


    一般的には、メールやSMSなどにURLを添付して偽サイトに誘導する手口が多数です。

    クレジットカード・キャッシュカード・デビットカードなどの番号とパスワード・暗証番号が奪われてしまうと、不正利用や不正な引き出しといった被害を受けます。また、パソコンやスマートフォンがウイルスに感染していると、正規のサイトにアクセスした際にフィッシングのワナが発動し、ポップアップから情報を抜き取られてしまいます。

2、フィッシング詐欺を見抜くために注目したいポイント

フィッシング詐欺の被害に遭い、クレジットカードの番号やオンラインバンキングの口座番号、パスワードや暗証番号といった情報を奪われると、多額の金銭的被害につながります。
ここでは、フィッシング詐欺を見抜くために注目したいポイントを紹介しましょう。

  1. (1)ウェブページやメールからのリンクではないか?

    一般的なフィッシング詐欺は、カード番号やパスワードなどの重要な情報を奪い取るための偽サイトにユーザーを誘導することから始まります。

    信用性の低いサイトやメールからリンクした先にフィッシング詐欺の偽サイトが設置されているので、リンク先で重要な情報を入力するのは避けましょう。

  2. (2)URLは正規のものか?

    カード番号やパスワードといった重要な情報を入力する際は、ブラウザのアドレスバーに注目しましょう。

    アドレスバーにはサイトのURLが表示されていますが、URLがいつも利用しているサイトのものと明らかに違う場合は偽サイトの可能性があります。銀行などの正規サイトなら名称に関連したURLになっているはずです。最近は、正規のHPのURLに似せたURLを設定するサイトもあるようです。ドメイン名など、細かい部分もよく見て判断した方が良いでしょう。

    インターネットを利用する際にサイトのURLまで気にしている方は少ないかもしれません。しかし、フィッシング詐欺の偽サイトの多くはURLがデタラメで看破する重大な手がかりになるので、少しだけでも気を配るように心がけましょう。

  3. (3)HTTPSと鍵マークはあるか?

    カード番号やパスワードといった重要な情報を入力する機会のあるウェブページの多くは、暗号化通信を利用しています。暗号化通信を利用しているウェブページでは、URLが「https://」で始まっており、アドレスバーに鍵マークがついているので、簡単に見分けられるでしょう。

    HTPPSで始まっていない、鍵マークがないというだけで偽サイトだとはいえません。とはいえ、暗号化されていないページで重要な情報を入力する行為はそれ自体が危険なので、フィッシング詐欺ではなくても避けた方が賢明です。

  4. (4)電子証明書は発行されているか?

    通信が暗号化されているウェブページでは、アドレスバーの鍵マークをクリックすることで「電子証明書」が表示されます。電子証明書の発行元が銀行などになっているか、電子証明書の有効期限は切れていないかといった点に注目すれば、安全性を確かめる材料になるでしょう。

3、フィッシング詐欺で返金を求める方法

フィッシング詐欺は個人単位で行うことが難しい犯罪であると考えられています。なぜなら、多数のユーザーに対して一斉に偽サイトへの誘導を仕掛けるための情報量をもっていて、偽サイトの構築やウイルス散布といった難しい技術も必要となるためです。ある程度の組織力がある犯罪グループが背景にいる可能性があるでしょう。

このような相手ですから、「お金を返してほしい」と訴えてもまず応じないでしょう。そもそも、契約者などの情報は巧妙に偽装されているのでどこの誰が犯人なのかを割り出すのも困難です。

フィッシング詐欺によってクレジットカードが不正に利用されたり、銀行口座から不正に現金が引き出されたりした場合に取るべき行動の代表的な例は2つです。

  1. (1)カード会社に連絡して支払いを停止する

    身に覚えがない請求や引き落としがあったら、まずは明細を確認してください。過去にインターネットでカード情報やパスワードを入力したらエラーになった、怪しいサイトで情報を入力してしたことがあれば、フィッシング詐欺に遭ってしまっている可能性があります。

    直ちにカード会社に連絡して支払いを停止する、パスワードや暗証番号を変更するといった対策を講じましょう。対策が早ければ不正利用を防止できますし、もし不正利用されたあとでも事情を説明して証拠を提出すれば請求の拒否が可能です。

    フィッシング詐欺などをはたらく犯罪集団は、膨大な量のデータを保有しています。氏名・生年月日・住所・電話番号といった個人情報とひも付けされてしまうおそれがあるので、予測しやすいパスワードや暗証番号を設定しないように心がけるのが大切です。
    また、パスワードを定期的に変更することも有効でしょう。パスワード管理が大変ではありますが、パスワードを変更すれば一定程度被害抑止に効果的だと考えられます。
    さらに、クレジットカードを再発行した場合は、暗証番号を変更することも効果的です。

  2. (2)盗難保険を利用する

    もしすでに不正利用分の請求を受けてしまっているなら、盗難保険を活用することでカード会社から補償を受けられる可能性があります。

    ただし、カード会社に対して「不正利用を受けた」と証明する証拠として、警察への被害届や相談の証明が必要なことが多いですので、警察への届出は必要でしょう。また、補償が受けられるのはカード会社への届出からさかのぼって60日前までなので、不正利用に気づくのが遅れてしまうと補償が受けられない可能性があります。

4、フィッシング詐欺の返金は弁護士へ相談

フィッシング詐欺の被害を受けてしまい、不正利用された分について返金を受けたいと考えるなら、弁護士に相談しましょう。

不正利用を受けてしまい、カード会社から請求を受けてしまった場合でも、弁護士が代理人となって交渉することで、請求を取り消してもらえる可能性があります。また、犯人が逮捕されていれば、被疑者本人と示談等の交渉ができるケースもあるので、損害賠償を請求できる可能性もあるでしょう。

5、まとめ

フィッシング詐欺は、振り込め詐欺のように「家族に相談すれば防げる」というものでも、投資詐欺のように「うまいもうけ話にはのらない」と注意すれば防ぐことができると言い切れないこともあります。何気なく利用しているインターネットサービスのなかにワナが仕掛けられているので、ネットバンキングやネットショッピングを利用しているすべての方が被害に遭う可能性のある犯罪です。

フィッシング詐欺の被害に遭ったら、まずは早急にカード会社に連絡して支払いを停止してもらいましょう。不正利用分なのにカード会社が「支払え」と主張して、かたくなに譲らない、被害が多額でフィッシング詐欺の犯人に損害賠償を請求したいとお悩みであれば、ベリーベスト法律事務所 宇都宮オフィスへご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています