もし肖像権を侵害されてしまった場合、とるべき対応は?

2023年08月31日
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もし肖像権を侵害されてしまった場合、とるべき対応は?

SNSが普及するにつれて、肖像権の侵害が問題になっています。
たとえば、「子どもの写真や動画を本人の許可を得ずに勝手にインターネットにアップする」「推しのアイドルの写真を自分のSNSのアイコンに使う」といった事例も、肖像権の侵害に問われる可能性があるのです。

肖像権の侵害については、だれもが意図せずに加害者になってしまう可能性もありますが、気が付かない間に自分が被害者となっていることもあります。
たとえば、自分の動画を知人が悪ふざけでSNSや動画サイトにアップする場合や、家族が悪意なく自分の写真をオンラインに公開している場合があるのです。
本記事では、自分や家族の写真・動画を無断で投稿されてしまった方に向けて、肖像権の概要や肖像権を侵害されたときに取るべき対応を、べリーベスト法律事務所宇都宮オフィスの弁護士が解説します。

1、肖像権とは? 法的根拠について

SNSなどが普及した現代社会では、よく肖像権が話題になることがあります。肖像権には、どのような定義があり、法的根拠があるのでしょうか。

  1. (1)肖像権とは?

    肖像権とは、本人の許可なく自分の顔または体を撮影されたり、公表されたりしない権利のことです。なお、顔見知りでない他人が映っている画像を、被写体となっている人物の許可を得ることなく利用することも肖像権の侵害となります。

    そのため、知人が自分や家族のプライベートな写真を無断でインターネット上のSNSや動画サイトへ投稿しているのなら、肖像権の侵害に当たる可能性が高いです。肖像権は、テレビや雑誌で活躍するような著名人にしか認められないと思われている方もいますが、そんなことはありません。

    一般人にも肖像権が認められており、無断で自分の顔や体を撮影し公表されない人格的利益が守られています。

  2. (2)肖像権の侵害で訴えることは可能?

    現在の日本の法律では、肖像権は法律で守られるべきだと明記はされていません。しかし、日本国憲法の第13条の「幸福追求に対する国民の権利」に、下記のことが明記されています。

    「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」
    ※日本国憲法の第13条「幸福追求に対する国民の権利」

    肖像権やプライバシーの侵害で他人を訴える場合、この条文が法的根拠として利用されます。

2、肖像権侵害となるケース・ならないケース

友人に、許可なく自分や家族のプライベートな画像をインターネット上に公開された際、その行為は肖像権侵害と認められるのでしょうか。もちろん、あなた自身が被害をこうむっているのなら肖像権侵害が認められる可能性が高いでしょう。
しかし、状況によっては、肖像権侵害が認められないこともあります。ここでは、肖像権侵害となるケースとならないケースについて確認していきます。

  1. (1)肖像権侵害となるケース

    主に、肖像権侵害となる可能性の高いケースは、下記の通りです。

    • 自分や家族の顔が特定できる。
    • 自分や家族が被写体のメインとなって撮影されている。
    • 画像や動画の内容が拡散性の高いもの。

    もし、自分や家族の顔がはっきりとわかるものが公開されていれば、肖像権侵害と認められやすいです。また、画像がSNSなどの拡散性の高い不特定多数の人に閲覧されるような場所に公開されてしまった場合、肖像権侵害が認められる傾向にあります。

  2. (2)肖像権侵害とならないケース

    一方で、肖像権侵害とならない可能性の高いケースとは、下記の通りです。

    • 自分や家族の顔をはっきりと特定できない。
    • 撮影者が被写体本人から撮影や公開許可をもらっている。
    • 撮影されていることが予測できる場所。

    自分や家族の顔がぼやけており、明確に個人と特定できなければ、肖像権侵害となる可能性は非常に低いです。また、撮影者に対して、撮影したものを公開することを承諾した場合や、観光地やイベント会場などテレビカメラなどで撮影されることが予測できる場所については、肖像権侵害によって訴えることは難しいでしょう。

3、肖像権侵害で問われる罪とは?

前述した通り、肖像権は法律では明文化されていないため、肖像権の侵害を理由に侵害行為の実行者を逮捕することや刑事罰に問うことはできません。しかし、民事上の責任は発生します。被害者は、SNSなどに投稿された画像や動画の削除を求める差止請求をすることや、加害者に損害賠償請求をすることが可能です。
また、勝手に投稿された写真や動画とともに被写体の名誉を傷つけるようなコメントがついていた場合などは、名誉毀損(きそん)罪などの罪に問える場合もあります。
ご自分のケースではどうなのかについて、ひとりで判断するのは難しい可能性があります。一度弁護士に相談してみてください。

4、肖像権侵害の被害にあったら? 対処方法について

もし、自分や家族の写真が無断でSNSや動画サイトにアップロードされるなど肖像権侵害の被害にあってしまったら、具体的にどのような対処ができるのでしょうか。

  1. (1)肖像権侵害の対処方法

    肖像権侵害に気付いたら、まずは差止請求と損害賠償請求を求める手続きを進めていきましょう。差止請求とは、投稿者の不正行為を停止するため、対象コンテンツの削除要求をすることです。一方の損害賠償請求とは、精神的に受けたダメージに応じた慰謝料を請求することです。

    自分や家族の写真をSNSや動画サイト上に放置していると、いずれ拡散されてしまう可能性があります。時間の経過とともに被害が拡大する恐れがあるため、掲載先の媒体を管理するウェブサイトの運営者に、対象コンテンツの削除をすぐに申し出なければいけません。

    その際、掲載されているウェブサイトによっては、専用の削除申請用フォームが用意されている場合もありますが、それらがない場合は、ウェブサイト上に掲載されているメールアドレスやお問い合わせフォームから差止請求をしましょう。その際は、下記のテンプレートに沿って送信することで、運営者に必要な情報が伝わりやすいでしょう。

    • 請求者の氏名(あなたの名前)
    • 住所
    • 連絡先(携帯または、パソコンのフリーメールアドレスなど)
    • 申請内容(例:動画コンテンツに自分の容姿が含まれており、無断で公開されているので、動画を削除してほしい)
    • 肖像権侵害と認められる箇所(例:動画の1分11秒で、中央に映る青い服を着た右を向いている男性は、私です。)

    上記の差止請求をおこなって、肖像権侵害の対象コンテンツの削除を待ちましょう。
    時間がたっても対応がない場合は、弁護士に相談してみてください。

  2. (2)警察に相談した方が良い?

    肖像権の侵害は、刑事罰には当たりません。警察は、犯罪と関係のない個人間の紛争には立ち入らないという原則があるため、対処してもらえません。このことを、民事不介入の原則といいます。

    警察の仕事は、あくまでも刑事事件を捜査することで、民事事件を解決することではありません。民事に該当する肖像権侵害では、刑事事件ではないため警察は動くことができません。また、無断で投稿した相手の住所や氏名などの個人情報を特定し逮捕することもできません。
    肖像権侵害については、弁護士に相談して早急な解決を図りましょう。

  3. (3)肖像権侵害の相談は、弁護士がおすすめ

    差止請求をウェブサイトの運営者に送信しても、まったく対応してもらえないことがあります。こうなってしまった場合、適切な措置が実施されるまでに、被害が拡大してしまいます。

    それを防ぐには、裁判所で仮処分による手続きを早急に進めなければいけません。この手続きは、肖像権問題の解決経験豊富な弁護士でなければ、適切に進めることが困難です。

    また、自分や家族の写真を誰が投稿したのか特定できていない場合、損害賠償請求をするために個人を特定する手続きを進めなければいけません。この場合でも上記と同様に、裁判所で仮処分による手続きを進めます。

    肖像権侵害の対象コンテンツを削除してもらえない場合や誰が違法行為を実行に移したのか特定できていない場合は、肖像権トラブルの解決実績豊富な弁護士へご相談ください。1日でも早く弁護士に相談して、早急に解決することが自分や家族のプライバシーを守ることにつながります。

5、まとめ

今回は、肖像権侵害に該当する行為や対処方法について解説しました。もし、自分や家族の写真や動画がSNSや動画サイトに無断で投稿されてしまったのであれば、すぐに対象コンテンツが掲載されている媒体へ削除を求める差止請求をおこないましょう。

しかし、掲載先の媒体の管理人が必ずしも要求に応じてくれるとは限りません。その場合は、すぐに弁護士に相談してください。肖像権侵害問題に対応した経験豊富な弁護士に相談すれば、差止請求や損害賠償請求の法的な手続きを代行できます。時間の経過とともに、SNSや動画サイト上で拡散され、プライバシーの侵害による被害が拡大する恐れがあるため、1日でも早く対処していきましょう。

不特定多数の人が利用するSNSや動画サイト上での肖像権侵害についてお困りの際は、ベリーベスト法律事務所までご連絡ください。スタッフが丁寧にお話をうかがい対応をさせていただきます。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています