不当解雇されそう………拒否してもいい? 宇都宮オフィスの弁護士が解説

2019年06月19日
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不当解雇されそう………拒否してもいい? 宇都宮オフィスの弁護士が解説

宇都宮市を管轄している厚生労働省栃木労働局では、平成29年度個別労働紛争解決制度の施行状況をまとめた結果を発表しています。民事上の個別労働紛争相談内容、全4382件のうち、解雇に関する相談が337件も寄せられていたようです。

突然、会社から解雇予告を受けたとき、労働者はどうすればよいでしょうか。会社の言うとおりに解雇を受け入れる方が多いかもしれません。しかし、労働者は解雇予告を拒否できます。

労働者にとって仕事は、生きていく上で切り離せないものです。しかし、使用者の一方的な解雇によって、労働者は仕事を、すなわち生活を成り立たせるための手段を失うことになります。間違いなく、労働者にとって大きな負担となるでしょう。

ここでは、一般的な解雇の概要と、会社から解雇予告を受けたときに労働者がとるべき対応について、宇都宮オフィスの弁護士が詳しく解説します。

1、解雇とは

解雇とは、会社が従業員に対して一方的に仕事を辞めさせることを指します。俗に言う「会社をクビになった」と言うのは「解雇された」と同義語で使われています。

解雇には次の2種類があり、それぞれ性質が異なります。

  1. (1)懲戒解雇

    私たちがニュースなどでよく耳にする「懲戒解雇」は、会社に損害を与えたり犯罪行為があったり、社会的に見て過度のルール違反があったりしたときに、従業員に対して制裁の意味合いを含めて行う解雇です。

    懲戒解雇に加え、企業によっては「論旨解雇」の制度を設けているところもあります。論旨解雇は従業員に対して会社が指定する期間内に退職を促すもので、懲戒解雇よりは制裁の程度が軽いものと言われることがあります。

  2. (2)普通解雇

    「普通解雇」は、懲戒解雇のように重度のルール違反があったわけではありませんが、勤務態度に問題があった場合や、成績不振で会社が当該従業員に対して退職を促したい場合に使われる手段です。普通解雇の中でも、会社の人員削減(リストラ)や会社の業績不振といった理由で解雇されることを「整理解雇」と呼ばれています。

    従業員は会社から解雇されると、生活を成り立たせるための仕事を一方的に辞めさせられ、収入源を失います。そのため、労働者保護の観点から解雇に対する法的規制は大変厳しく、本来であれば容易に従業員を解雇できないようになっているのです。

2、会社が従業員を解雇するための条件

会社側は、次にご紹介する要件を満たさなければ、原則として従業員を解雇することはできません。

  1. (1)合理的かつ正当な理由があり社会通念上相当であること

    客観的に見ても当該従業員を辞めさせた方がよいと判断されることに、正当な理由があると思われるケースです。明らかに企業秩序を乱している場合や、業務の遂行に支障をきたすほどの傷病を抱えている場合などが該当します。

    なお、過去の判例から、成績が伸び悩んだ従業員を解雇するときなどについては、教育指導などが行き届いていなかったと判断されれば、合理的かつ正当な理由にはならないと判断される傾向があります。あなた自身がどのようなケースに該当するのかがわからない方は、弁護士にアドバイスを求めることも一案です。

  2. (2)法律で定められた解雇の手順を守っていること

    会社は、従業員を解雇する30日前に解雇予告を行わなければなりません。30日に満たない場合、解雇予告手当を支払う義務があります。

    たとえば、解雇日の10日前に解雇予告を行った場合、従業員には20日分の解雇予告手当が支給されます。解雇予告手当が支払われない、勝手に減額されているなどのケースでは、弁護士に相談することをおすすめします。

  3. (3)会社の就業規則に記載された解雇事由にあてはまること

    会社は、就業規則等に記載のない理由で解雇はできません。解雇予告通知書に記載されている解雇事由を見て、それが就業規則等に掲載されているかどうか、実際に就業規則等を見て確認するとよいでしょう。

  4. (4)法律で規定されている解雇禁止事由に該当しないこと

    解雇禁止事由の代表的な例として、国籍や性別、信条などを理由とした解雇があります。これらを理由とした解雇は禁止されています。業務上災害を理由とした疾病、または負傷による休業中とその後30日、産前産後休業中とその後30日にも、会社は従業員を解雇できません。

    このように、法律で規定されている解雇禁止事由に該当する場合は、解雇は無効となります。

3、解雇予告されたときに確認すべきこと

解雇予告は、のちのちのトラブルを防ぐために口頭ではなく、解雇予告通知書などの文書で行われることが多い傾向があります。その際、次の2つの事項を必ず確認しましょう。

  1. (1)解雇日が記載されていること

    先述したとおり、会社が解雇予告を行う場合は、解雇日の30日前に行わなければなりません。解雇日の日付から30日に満たない場合は、解雇予告手当が支給されるので、解雇予告手当についての記載があるかどうかも確認しましょう。もし記載がなければ、会社に対して解雇予告手当を請求できます。

  2. (2)就業規則の解雇事由

    繰り返しになりますが、会社の就業規則に記載されていない理由で従業員を解雇することは原則としてできません。解雇予告通知書に書かれた解雇事由が就業規則にも記載されているかどうか、確認してみましょう。

4、不当解雇だと思ったときの相談先

一般的に、会社と従業員との間のトラブルを解決してくれる場所や相談先は複数あります。あなた自身が最終的に望む結果によって、相談すべき場所は変わるでしょう。

  1. (1)労働基準監督署

    冒頭に紹介したとおり、個別労働紛争相談を受け付けています。しかし、労働基準監督署はあくまで労働環境の改善指導を行う機関です。会社と従業員との間に発生した個別のトラブルを解決する機能は原則ありません。

    労働基準監督署が対処できることの例として、会社に対して残業代の支払いを促す、誤った退職勧告について適切に行うよう指導するといったことが挙げられます。基本的には助言・指導や、相談や情報提供にとどまるケースが中心です。ただし、労働基準監督署による指導や是正勧告には法的な強制力がないため、無視をする雇用主もいるでしょう。

    そのほかにも、労働基準監督署では、双方の主張を確認した上で話し合いを促進させる「紛争調整委員会によるあっせん」を行っています。ただし、あっせんはあくまでも非公開な話し合いの場です。どちらかがあっせんを拒否する、話し合っても互いに合意に至らなければ、問題は解決しないことになります。

    しかし、相談することに意味がないわけではありません。特に、今後、会社にこのようなことをしてほしくない、会社の体質を改善してほしいと思ったときは、相談するだけでなく「申告」してみてはいかがでしょうか。明らかに労働基準法に違反しているなど、悪質と判断した場合は会社に対して調査を行い、逮捕することもあります。

  2. (2)弁護士

    あなた自身の問題に対して、具体的な解決を求めているケースは、弁護士に相談することをおすすめします。法的観点から不当解雇に該当しないのかを確認した上で、アドバイスを行います。また、今後あなた自身がどうしたいのかによって、適切な対応を教えることもできるでしょう。

    もし、会社に対して争うのであれば、会社側の多くは弁護士を窓口として対応します。その場合、あなた自身が個人で戦い続けることは非常に難しいものです。しかし、あらかじめ相談していた弁護士に依頼すれば、解雇撤回を求める交渉や訴訟などにおいてもスムーズに代理人となることができます。あなたが置かれた不当な立場を改善するように求めるだけでなく、適切な補償を受けられるよう、じっくり交渉します。

5、まとめ

会社側から一方的に告げられた解雇に納得がいかないときは、不当解雇の可能性も視野に入れ、会社の解雇が正当なものかどうかを確認することが重要です。正当な理由のない解雇にあるにもかかわらず会社と折り合いがつかず、このまま解雇されてしまいそうなときは、労働問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

ベリーベスト法律事務所・宇都宮オフィスでは、解雇や残業代未払いなどの労働問題に関するご相談を承っています。ひとりでの解決が難しいときは、ベリーベスト法律事務所・宇都宮オフィスへお気軽にご相談ください。

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