【後編】無期労働契約転換直前の雇止め! 納得できない労働者がするべきこととは

2019年07月31日
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【後編】無期労働契約転換直前の雇止め! 納得できない労働者がするべきこととは

前編では、雇止め法理について解説してきました。雇止めが無効となるかどうかは、労働の実態や契約更新の実績などで判断されます。
後半では、実際に雇止めを通告された場合に、確認すべきことや対策について、宇都宮オフィスの弁護士が解説します。

3、雇止めの通告を受けたときに確認すべきこと

  1. (1)契約書の内容

    万が一雇止めの通告を受けたら、まず契約時に渡された契約書の内容を確認しましょう。
    有期労働契約を結ぶ際、使用者は「更新の有無」「更新の判断基準」を雇用契約書に記載しなければなりません。(労基法15条、労基法施行規則5条1号、同1号の2)そして、口頭でもしっかりと更新について説明することが義務付けられています(「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」平15・厚労省告示第357号)。

    たとえば、更新の有無については「自動的に更新する」「更新があり得る」「契約の更新はしない」、更新の判断基準については「労働者の能力により判断」「会社の経営状況により判断」「契約期間満了時の業務量により判断」などと記載されているはずです。

    あなたに雇止めを通告してきた勤務先は、上記の雇用契約書に記載されたルールをしっかりと守っているでしょうか。雇用契約書の内容に反する条件で、雇止めを通告してはいないでしょうか。
    万が一、雇用契約書に「無期転換申込権を放棄する」旨の文言が入っていたとしても、前述した通り無効となります。これは、一般的に使用者の方が、立場が強いため、有期労働契約者に不利な契約をさせることを防ぐためです。

  2. (2)1年以上働いていた場合、30日前までに雇止めの予告があったか

    1年以上継続的に働いている、または契約更新が3回以上されてきた有期労働契約者に対しては、30日前までに「雇止め予告」をすることが義務付けられています(「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」平15・厚労省告示第357号)。
    上記の要件に当てはまる有期労働契約者の方は、きちんと30日前までに予告をされたかどうか確認しておきましょう。

  3. (3)雇止めの理由

    雇止めの理由については、使用者からきちんと説明してもらえたでしょうか。証拠として、雇止めの理由の証明書を請求することをおすすめします。
    使用者は、雇止めの理由の証明書を請求されたときは、遅滞なく交付しなければならないと定められています(「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」平15・厚労省告示第357号)。
    「雇止めの理由」は、契約期間満了以外の理由でなければなりません。たとえば、「能力が十分ではないため」「事業縮小のため」「担当していた業務が中止・終了したため」「勤務態度に問題があったため」などです。
    証明書を交付してもらったら、理由が曖昧でないかどうか、雇止め理由として適切なものかをチェックしましょう。

4、納得できない雇止めに取るべき対策とは

  1. (1)証拠の収集

    納得できない理由で雇止めをされたら、まずは以下のような証拠を集めましょう

    • 雇用契約書
    • 労働条件通知書
    • 就業規則
    • 雇止め理由証明書
    • 録音データ
    • メール
    • 日記・メモ


    上記以外にも、自分が行ってきた仕事内容を証明するもの、勤務年数・更新回数を示すもの、他の有期労働契約者の雇止め状況を示すもの、更新を期待させるような言動の記録、雇止めに対する反対の意思表示をしたことの記録などをなるべくたくさん集めましょう。

  2. (2)公的機関への相談

    厚生労働省の「無期転換ルール緊急相談ダイヤル」、各都道府県労働局の「無期転換ルール特別相談窓口」、労働基準監督署などの公的機関に相談するのもひとつの方法です。
    もっとも、労働基準監督署は違法な手続きの取り締まりを行っているだけで、雇止めの有効・無効を判断してくれるわけではありません。

  3. (3)弁護士への依頼

    弁護士に依頼すれば、あなたの権利を救済できるかもしれません。雇止めの具体的な解決方法は、「復職」や「未払い賃金の請求」、「解決金の支払い」という手段が考えられます。
    未払い賃金の請求とは、雇止めが無効である場合、雇止めの日(契約者満了日)から請求日までの賃金を請求できるというものです。本来なら契約更新をして給料をもらえていたはずの分を請求することになります。これは、復職することになっても、会社の都合で出勤できていなかったことになるので、その間の賃金も請求できます。
    雇止めを受けて、雇止めには不満であるが、もう職場には復帰したくないというような場合は、使用者が、労働者に、解決金として金銭を支払うという場合もあります。
    基本的な流れとしては、裁判外の交渉、労働審判、最終手段として裁判というステップで進行することが多いです。

5、まとめ

実際には、雇止め法理について正しく理解しないまま泣き寝入りしてしまう方がたくさんいると言われています。
しかし、有期労働契約者の中には、正社員とほとんど同じレベルの業務を行っている方が多いのが実情です。ひとりの労働者として誇りを持ち、しっかりと権利を主張しましょう。
具体的な解決についてお考えの場合は、ベリーベスト法律事務所 宇都宮オフィスにご相談ください。宇都宮オフィスの弁護士があなたの権利のために戦います。

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