段差スロープを置くのは違法って本当? 罪に問われうるケース
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自宅の入り口と公道との間に段差を解消するために段差スロープを設置している方もいるかもしれません。
しかし、道路上に段差スロープを設置する行為は、歩行者や道路を走行する自転車・バイクなどの転倒につながる危険な行為ですので、道路法に違反する可能性がある行為です。そのままでは、刑事責任や民事責任を問われるおそれもありますので、直ちに撤去するとともに、適切な方法で段差の解消を行う必要があります。
今回は、道路上に段差スロープを設置することの違法性について、ベリーベスト法律事務所 宇都宮オフィスの弁護士が解説します。
1、段差スロープの設置が違法となる理由
道路上に段差スロープを設置するとどのような問題があるのでしょうか。
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(1)段差スロープの設置は法律違反
段差スロープとは、自宅の敷地内の段差や駐車場と道路の段差などを解消する目的で設置されるスロープです。ホームセンターなどに行くと、「乗り入れブロック」、「段差解消プレート」などさまざまな名称、材質のものが販売されていますので、目にしたことがある方もいるかもしれません。
しかし、このような段差スロープは、設置方法によっては、違法になるおそれがありますので注意が必要です。道路法43条2項では、道路の構造または交通に支障を及ぼすおそれのある行為を禁止していますので、道路上に段差スロープを設置する行為は、道路法に違反する違法な行為になる可能性があります。
また、道路交通法76条3項では、交通の妨害となる方法で道路上にみだりに物件を置くことを禁止しています。段差スロープの設置によって、交通の妨害が生じる場合には、道路交通法に違反する違法な行為になる可能性があります。 -
(2)段差スロープの設置が禁止されている理由
道路法や道路交通法は、道路の安全確保や危険防止などの見地から交通を阻害させるおそれのある行為に関する取り締まりを行う法律です。段差スロープは、設置した本人にとっては、道路から自宅へスムーズな乗り入れを可能にする便利なグッズですが、道路を利用する他の歩行者からすると段差スロープがあることによって歩道が狭くなってしまい、つまずきによる転倒のリスクが生じます。また、バイクや自転車にとっては、乗り上げによる転倒のリスクも生じます。
このように段差スロープの設置は、道路の安全にとって支障をきたす行為であることから、道路法や道路交通法によって設置が禁止されています。
2、段差スロープの設置で責任を問われうるケース
道路上に段差スロープを設置すると、刑事責任および民事責任を問われる可能性があります。
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(1)刑事責任を問われるケース
段差スロープの設置は、道路法43条2項に違反することになりますので、道路法違反として、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられる可能性があります(道路法102条3号)。また、道路交通法76条3項に違反することになりますので、道路交通法違反として、3月以下の懲役または5万円以下の罰金に処せられる可能性があります(道路交通法119条2項7号)。
もっとも、住宅地などでは道路上に段差スロープを設置している家をよく見かけるように、段差スロープを設置したからといってすぐに罪に問われるというわけではありません。たとえば、行政から段差スロープの撤去を求められたにもかかわらず応じなかった場合や段差スロープの設置により第三者に危害が生じた場合に、刑事責任を問われる可能性があります。
実際に、大阪府堺市で発生した事故では、道路上に段差スロープを設置していたことが原因で事故が起きたとして飲食店経営者が道路交通法違反の容疑で検察官送致されたという事例もあります。この事例では、ミニバイクを運転する大学生が道路上に設置された段差スロープに接触して転倒し、車にはねられてしまったというものです。 -
(2)民事責任を問われるケース
道路上に設置した段差スロープによって、歩行者、バイク、自転車などが接触して転倒し、怪我をした場合には、民事責任を問われる可能性があります。段差スロープの設置は、道路法や道路交通法に違反する違法な行為ですので、違法な行為により第三者に損害を与えた場合には、不法行為に基づく損害賠償義務が生じるからです(民法709条)。
段差スロープの設置者は、被害者に生じた以下のような損害を賠償しなければなりません。- 治療費
- 通院交通費
- 休業損害
- 慰謝料(傷害慰謝料、後遺障害慰謝料)
- 逸失利益
被害者に後遺障害が生じた場合や被害者が死亡した場合など、非常に高額な賠償を求められることもありますので注意が必要です。
3、罪を問われたときすべきことと刑事事件の流れ
段差スロープの設置で罪に問われた場合にはどのような対応が必要なのでしょうか。
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(1)罪に問われたときにすべきこと
段差スロープの設置で罪に問われた場合には、段差スロープを直ちに撤去して、違法状態を解消することが大切です。そのまま段差スロープを設置していると、第三者に危害が生じるおそれがありますし、違法行為をしているにもかかわらず反省の態度がないとして情状面で不利な扱いを受けるおそれがあるからです。
また、警察から取り調べや捜査への協力を求められた場合には、素直に応じることも大切です。段差スロープの設置で問われる道路法違反や道路交通法違反は、比較的軽微な罪ですので、直ちに逮捕などの身柄拘束を受けることは少ないでしょう。しかし、任意の出頭を拒否したり、捜査に非協力であったりすると、逃亡や証拠隠滅のおそれがあるとして逮捕されるおそれがありますので注意が必要です。 -
(2)刑事事件の流れ
段差スロープの設置に関して罪に問われた場合には、以下のような流れで刑事事件が進みます。
① 警察での取り調べ
段差スロープの設置に関して罪に問われた場合には、身柄拘束を受けずに在宅事件として捜査が進められることがあります。この場合には、警察から取り調べのために出頭要請がありますので、警察から警察署への出頭を求められた場合には素直に応じるようにしましょう。
② 検察での取り調べ
警察での取り調べがおわると、事件記録は検察官に送られます。メディアでは「書類送検」と呼ばれているものです。検察に事件が送致された後は、検察官から取り調べのために呼び出しがありますので、検察官から呼び出された場合にも素直に応じるようにしましょう。
③ 起訴または不起訴の判断
検察官は、取り調べの結果やこれまでの捜査を踏まえて、事件を起訴するか、または不起訴にするかを判断します。不起訴処分になれば、それで刑事事件としては終了となり、前科が付くこともありません。
④ 正式裁判または略式裁判
事件が起訴された場合には、裁判所の法廷で審理が行われます。ただし、段差スロープの設置に関する罪は、罰金刑が定められていますので、本人の同意があれば略式裁判という書面審理だけの簡単な裁判手続きで済むこともあります。
4、弁護士に相談したほうがよいケース
以下のようなケースに該当する方は、すぐに弁護士に相談することをおすすめします。
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(1)警察から取り調べなどの要請がきたとき
警察から取り調べなどの要請がきた場合には、警察署に出頭して取り調べを受けなければなりません。しかし、ほとんどの方が警察署で取り調べを受けるのは初めての経験ですので、どのように対応すればよいかわからないはずです。取り調べで作成される調書は、その後の裁判の証拠になりますので、適切に対応しなければ不利な判断を受けるおそれもあります。
そのため、警察から取り調べなどの要請を受けた場合には、すぐに弁護士に相談をしましょう。弁護士から取り調べに向けたアドバイスを受けることで、初めての方でも不安なく取り調べに臨むことができます。 -
(2)設置していた段差スロープで怪我をした方から損害賠償請求されたとき
設置していた段差スロープで第三者が怪我をした場合には、被害者から損害賠償請求を受ける可能性があります。被害者との対応や賠償額の計算などは一般の方では対応が難しいこともありますので、専門家である弁護士に任せることをおすすめします。
弁護士であれば、被害者との交渉の窓口になることができますので、それにより精神的負担を大幅に軽減できます。また、弁護士であれば被害者から提示された賠償額が適正なものであるかを判断できますので、不当に高額な賠償金を支払うリスクを回避できます。
5、まとめ
道路上に段差スロープを設置する行為は、道路法や道路交通法に違反する違法な行為です。段差解消をするには、段差スロープの設置ではなく、道路法24条に基づく手続きを行い、歩道部分や縁石などの切り下げ工事を自己負担で行う必要があります。このような適切な手続きによらずに段差スロープの設置で済ませてしまうと刑事責任および民事責任を問われるリスクがありますので注意が必要です。
段差スロープの設置により罪に問われたり損害賠償請求をされたりした場合は、まずは、ベリーベスト法律事務所 宇都宮オフィスまでご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています