オンライン面会交流とは? メリット・デメリットについて解説
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宇都宮市が公表するデータによると、平成30年中に離婚した夫婦は830組にのぼるとされています。
離婚した夫婦に未成熟の子どもがいるときには、別居する親とも面会して交流を図ることが子どもの成長にとって望ましいと考えられています。しかし、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、直接子どもと別居親を面会交流させることが難しい状況も発生しています。
このような問題に対しては、「オンライン面会交流」を実施することが対処法のひとつとなりえます。しかし実施を判断する前に、慎重にメリットやデメリットを確認しておくことが大切です。
本コラムでは、「オンライン面会交流」のメリットやデメリットについて、ベリーベスト法律事務所 宇都宮オフィスの弁護士が解説していきます。
1、オンライン面会交流とは
まず「オンライン面会交流」について、確認しておきましょう。
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(1)オンライン面会交流とは
オンライン面会交流とは、別居親と子どもの面会交流をオンライン上で行うものです。新型コロナウイルス感染症の影響により、従来どおりの面会交流が難しくなったケースも少なくありません。そのため法務省でも、父母の協議ができるときには、従来の面会交流に代わる一時的な方法として、オンラインや電話などの電子機器を使用する面会交流を提案しています。
オンライン面会交流では、ZoomやSkypeといったWeb会議ツールを使用するなどの方法で、子どもと別居親がお互いの顔を画面上で見ながら話をする形で進められます。 -
(2)コロナ禍のオンライン面会交流の実情
一般社団法人びじっと・離婚と子ども問題支援センターでは、面会交流支援の利用者を対象に令和2年6月にアンケート調査を行っています。
その調査結果によると、オンライン面会交流について利用を検討すると回答した割合は、同居親が31%で、別居親が45%とされています。
同居親も30%程度オンライン面会交流を検討する結果となっていますが、反面、同居親の57%は「オンラインを検討せずに面会交流を中断する」と回答していました。
オンラインを利用したくない理由には、設備がないことや費用がかかること、子どもが小さ
いため子どもだけでオンライン交流は難しいことなどが挙げられています。
またオンラインでの面会交流は主に自宅で行うことになることから、親同士の関係性によっては、自宅の様子が知られることや同居する家族への影響を考えると、強い抵抗感があることも大きな理由と考えられています。
2、オンライン面会交流のメリット・デメリット
オンライン面会交流を検討する場合には、メリットとデメリットの双方を知っておくことが大切です。
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(1)メリット
オンライン面会交流の最大のメリットは、親子が会わなくても、顔を見ながら話ができる点といえるでしょう。
直接会わないので、新型コロナウイルス感染症などの感染リスクを心配する必要がなくなります。
また、直接会わなくて済むということは、直接会わせることが憚られる親子にも面会の機会を開くことができるということです。夫婦間ではモラハラや暴力が問題になるケースなどでは、子どもに対しては暴力を振るっていない場合でも、直接面会は困難になることがあります。そのようなケースでも、面会できることは、大きなメリットといえるでしょう。
そして相手の表情を見ながらその場でやり取りをすることによって、手紙や電話などよりも、直接会う状況に近い形で面会交流が図ることになります。
また場所を問わずに面会交流できることもメリットといえます。たとえば海外赴任などでなかなか会えない場合であっても、オンラインでは、物理的な距離に関係なく定期的に面会交流が可能になります。
そしてオンライン面会交流を活用して定期的に交流を図ることは、別居親が子どもの存在を身近に感じるため、養育費の不払いを防ぐことにつながる可能性もあることでしょう。
子どもにとっても、次回別居親と直接会った際にも、違和感なくスムーズに交流を図る可能性があります。 -
(2)デメリット
オンライン面会交流は、スマホやタブレット、PCなどの電子機器を使える環境にあり、操作できることが前提となります。たとえば「電子機器を持つだけの余裕がない」「知識や経験がなくオンラインの設定ができない」「Wi-Fi環境がない」などの状況では、実現することが難しいといえます。つまりオンライン面会交流を実現しようとすれば、電子機器の購入や環境整備のための費用がかかり、知識や経験なども必要になりうることは、デメリットといえます。
また相手に自宅などを知られる可能性があるという点も、ケースによっては深刻なデメリットになります。
DVやモラハラが原因となって離婚したような場合には、相手に現在居住している場所を特定されないようにしていることも少なくないものです。そういったケースでオンライン面会交流を行えば、画面上の情報から自宅を特定される可能性もないわけではありません。
またすでに再婚している場合などには、新しい家族が同じ家にいる状態でオンライン交流する可能性もあり、やりにくさを感じることもデメリットといえるでしょう。
ただし、利用するアプリによっては、背後の映像をぼかすなどの機能が備わっているものもあります。このような機能を積極的に活用することで、デメリットを解消できる可能性があることもあります。
その他低年齢の子どもは会話での交流が難しく、機器も自分で操作することはできないので、同居親がいないとオンライン面会交流ができないこともデメリットになりえます。
3、オンライン面会交流の取り決め方とは?
オンライン面会交流の実施の有無などについては、父母の話し合いで取り決めるのが原則です。合意できたときには、後日の紛争を防ぐためにも合意内容を書面にしておきましょう。
ただし父母で冷静な話し合いができる状況でない場合には、無理は禁物です。
そういった場合には、家庭裁判所に調停または審判を申し立てたり、弁護士などの専門家に相談してサポートを受けたりしながら取り決める方法があります。
なおオンライン面会交流については、次のような内容を取り決めておく必要があります。
● オンライン面会交流の方法
どのようなツール(たとえばZoom、Skype、スマホのビデオ通話など)を使用するのか、どうやって実施するのか(父母のどちらがルームを開いて招待などをするか)などを決めておきます。
● 実施日時
たとえば毎週日曜日の午後8時から9時までなど、具体的に実施する日時を取り決めておきます。
● オンライン交流する期間
オンライン面会交流を実施できるからといって、今後直接会わなくてよいということではありません。オンライン面会交流は、代替的な方法にすぎないため、期間を定めておくとよいでしょう。
● その他必要な事項
その他にも、オンライン面会交流をするために取り決めておいた方がよい事項があれば、話し合って取り決めておきましょう。
たとえば面会交流は、オンライン面会交流支援を行う特定の団体を利用し、支援者がサポートしながら実施するなどといったことも決めておくとよいでしょう。
4、面会交流を弁護士に相談するメリット
コロナ禍における一時的な代替方法とはいえ、離婚時に取り決めた面会交流の方法を変更することは、父母双方にとって負担になることでしょう。
面会交流の取り決めを変更するときには、父母で話し合うことが基本にはなりますが、関係によっては直接話し合いをすることは避けた方がよい場合もあります。そういった場合には無理をして直接話し合うのではなく、弁護士に相談することがおすすめです。
弁護士に相談したときのメリットは、主に次のとおりです。
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(1)相手と直接話し合わなくてよい
弁護士に相談したときには、弁護士がご相談者の代理人として相手と話し合いを進めます。オンライン面会交流の実施の有無や、実施の方法などの取り決めに関しても、ご相談者が直接相手とやり取りすることなく、話し合いを進められることは大きなメリットといえます。
また、合意内容を離婚協議や合意書といった書面にしてもらえますから、後日の紛争を防ぐことも可能です。 -
(2)面会交流実施時にもサポートを受けられる
オンライン面会交流を実施することになったとしても、ケースによっては同居親もオンライン上で相手とやり取りをしなければならない可能性があります。
しかし弁護士に相談すれば、オンライン面会交流に弁護士が同席するなどサポートすることができます。子どもだけでオンライン面会交流させるのは不安な場合でも、弁護士のサポートがあれば解決策をみつけられる可能性があります。 -
(3)調停や審判になっても安心
面会交流の方法などをめぐって父母の意見が合わなかったとしても、家庭裁判所の調停や審判で解決を図ることもできます。
また、調停等の際には、相手が面会交流を拒絶する可能性があります。その際には、弁護士がオンライン面会による実施等を提案し、面会の実現に向けてサポートを受けることができます。
弁護士はお話をしっかりと伺い、ご相談者のご希望にそった内容で取り決めができるように、裁判所に的確に主張します。その結果、ご希望に近い形で調停や審判手続きを進められる可能性が高くなるでしょう。
5、まとめ
本コラムでは、「オンライン面会交流」のメリットやデメリットについて解説していきました。オンライン面会交流では、画面上から相手に自宅の場所や生活の様子などが伝わる可能性があり、デメリットがあることも理解しておく必要があります。
そのため慎重に実施の有無を検討し、実施するときには取り決めた内容を書面化して明確にしておくことが大切です。
ベリーベスト法律事務所 宇都宮オフィスでも、弁護士が面会交流の取り決めなどを全力でサポートしています。お悩みの際には、ぜひご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています