婚姻費用をもらえないケースとは? 婚姻費用と養育費についても解説
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宇都宮市が公表している「宇都宮市統計書」によると、令和元年の宇都宮市内での離婚件数は、888件でした。
離婚の話を切り出してすぐに離婚に至る場合もありますが、離婚の話し合いが長引くこともあるでしょう。そのような場合には、離婚が成立する前に別居をすることがあります。別居をすることによって、相手と顔を合わせなくてもよくなるため精神的な負担は軽減しますが、経済的な負担が生じてきます。別居中の生活費については、婚姻費用として請求することが可能ですが、例外的に婚姻費用が認められないケースもいくつか存在しています。
今回は、別居中の婚姻費用をもらうことができないケースについて、ベリーベスト法律事務所 宇都宮オフィスの弁護士が解説します。
1、そもそも婚姻費用とは?
婚姻費用とは、夫婦が婚姻生活を維持するために必要となる費用のことをいいます。婚姻している夫婦には、法律上、扶助義務が定められています(民法752条)。そのため、婚姻を継続している間は、たとえ離婚に向けた話し合いを進めていたとしても、婚姻費用を負担しなければなりません。
離婚をすると決断して、別居をすることになった場合には、お互い別々に生計を立てて生活をしていくことになりますので、収入の少ない方は、収入の多い方に対して、婚姻費用の請求が可能です。
生活費に不安がある状況では、安心して離婚の話し合いを進めることができませんので、別居をすることになった場合には、必ず婚姻費用を請求するようにしましょう。
2、婚姻費用がもらえないケースとは?
婚姻費用は、法律上の扶助義務に基づく請求です。そのため、原則として婚姻費用を請求することは認められます。しかし、以下のようなケースについては、例外的に婚姻費用の請求が認められない可能性があります。
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(1)有責配偶者から婚姻費用を請求する場合
有責配偶者とは、婚姻関係を破綻させる原因をつくった配偶者のことをいいます。たとえば、不倫や暴力などによって、婚姻関係が破綻した場合には、不倫をした配偶者や暴力を振るった配偶者が有責配偶者になります。
自ら婚姻関係の破綻の原因をつくったにもかかわらず、婚姻費用の請求をすることは、権利濫用と考えられますので、このような有責配偶者からの婚姻費用請求は制限されたり減額されたりする可能性があります。 -
(2)すでに離婚が成立している場合
婚姻費用は、婚姻生活に必要となる費用であり、婚姻費用分担請求権は、婚姻中の夫婦に認められている権利です。そのため、夫婦がすでに離婚をしている場合、婚姻費用を請求することは認められません。
もっとも、これは離婚後の生活費を婚姻費用として請求することができないということです。離婚をした後であっても、未払いの婚姻費用がある場合には、請求することができる可能性があります。 -
(3)正当な理由なく別居を開始した場合
夫婦には、法律上、同居義務が課されています。正当な理由なく同居を拒否し、別居を開始したような場合には、夫婦の基本的な義務である同居義務に違反する状態になりますので、婚姻費用の請求が制限される可能性があります。
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(4)同居して生活費を分担している場合
離婚を決断したとしても、すぐに別居をするのではなく、同居を継続しながら離婚の話し合いを進めていくこともあります。同居をして、以前と同様に生活費を分担している場合には、すでに婚姻費用の分担が行われていると評価することができますので、別途婚姻費用を請求するのは難しいといえます。
他方、同居している場合であっても、家庭内別居をしており、生活費を一切もらっていないという場合には、相手に対して婚姻費用を請求することができる可能性もあります。
3、子どもがいる場合、養育費は請求できる?
子どもがいる場合には、婚姻費用の他に養育費も請求することができるのでしょうか。
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(1)婚姻費用と養育費の違い
婚姻費用は、すでに説明したとおり、夫婦が婚姻生活を維持するために必要となる費用のことをいいます。婚姻費用には、夫婦が生活するために必要な衣食住の費用だけでなく、未成熟子の養育費なども含まれています。そのため、婚姻費用とは別に、養育費を請求することはできません。
夫婦が離婚をすると、夫婦間の扶養義務は消滅しますので、婚姻費用を支払う必要はなくなります。しかし、夫婦に子どもがいる場合には、夫婦が離婚をしたとしても、子どもの父親(母親)であることには変わりありません。そのため、離婚によって婚姻費用の支払いが不要になったとしても、子どもの養育費は負担しなければなりません。 -
(2)有責配偶者であっても養育費部分の請求は可能
前述のとおり、有責配偶者からの婚姻費用の請求は、権利濫用にあたり、認められない可能性があります。しかし、権利濫用によって制限されるのは、あくまでも有責配偶者自身の生活費に関する部分です。
有責配偶者が子どもを連れて別居をしている場合、有責配偶者からの婚姻費用請求には、有責配偶者自身の生活費に関する部分と子どもの養育費に関する部分が含まれています。子どもの養育費に関する部分については、配偶者の有責性とは無関係なものとなりますので、有責配偶者であったとしても、養育費部分については請求することが可能です。
4、婚姻費用に関するトラブル、ご相談は弁護士へ
婚姻費用や離婚に関するトラブルでお悩みの方は弁護士に相談をすることをおすすめします。
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(1)夫婦間では婚姻費用の適正額を判断することが難しい
婚姻費用の金額は、夫婦の話し合いで定めることができます。しかし、離婚の争いになっている夫婦では、婚姻費用を支払う側ではできる限り金額を少なくしたいと考えますし、婚姻費用をもらう側ではできる限り多くの金額をもらいたいと考えるのが通常です。このように両者の主張が対立した状態では、話し合いによって婚姻費用の金額を決めるのは困難といえるでしょう。
そのような場合には、弁護士に相談をすれば、適正な婚姻費用の金額を算定してもらえます。婚姻費用の算定は、裁判所が公表している婚姻費用算定表を利用して行うのが一般的ですが、弁護士に相談をすれば婚姻費用算定表から導かれる婚姻費用の相場の金額だけでなく、個別具体的な事情に応じて修正をした金額についても提案することができます。 -
(2)弁護士であれば代理人として交渉をすることができる
離婚の話し合いで揉めている夫婦だと、婚姻費用の金額を定めようとしてもスムーズに取り決めをすることができない場合があります。それは、夫婦だけの話し合いではどうしても感情的になってしまうのが理由といえます。
弁護士に依頼をすれば、代理人として婚姻費用の金額の交渉をすることができます。当事者だけの話し合いでは感情的になってしまう事案であっても、冷静かつスムーズに話し合いを進めることができます。弁護士から具体的な根拠に基づいて、適正な婚姻費用の金額を提示することによって、相手の納得も得られやすいといえるでしょう。
また、弁護士に交渉を依頼することによって、相手と話をしなければならないという負担もなくなりますので、精神的負担も大幅に軽減するでしょう。話し合いで解決することができない場合には、家庭裁判所に婚姻費用分担請求調停の申し立てをすることになりますが、弁護士がいれば調停になった場合も安心です。 -
(3)離婚条件についてのアドバイスをすることができる
婚姻費用の取り決めをすることができた後は、離婚に向けて動いていく必要があります。離婚の話し合いは、離婚をするかどうかだけではなく、親権、養育費、慰謝料、財産分与、面会交流などの離婚条件についても決めていかなければなりません。
これらの離婚条件を定めるにあたっては、法的専門知識が不可欠となりますので、まずは弁護士に相談をするようにしましょう。知識や経験のない状態で離婚条件の取り決めをしてしまうと、本来もらえるはずのものがもらえないなど不利な離婚条件で離婚をしてしまうリスクがあります。
有利な離婚条件で離婚をすることによって、離婚後の経済的な不安も少しは解消されるといえますので、弁護士への相談をおすすめします。
5、まとめ
婚姻費用は、夫婦が婚姻生活を維持するために必要となる費用です。そのため、たとえ離婚を前提に話し合いをしていたとしても、婚姻中であれば、原則として婚姻費用を請求できます。しかし、婚姻費用を請求する側が有責配偶者にあたるなどのケースでは、婚姻費用をもらえないケースもありますので注意が必要です。
婚姻費用の金額や交渉は、専門家である弁護士に任せることによって有利に進めていくことができる可能性があります。婚姻費用や離婚の問題でお困りの方は、ベリーベスト法律事務所 宇都宮オフィスまでお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています