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「撮り鉄」の迷惑行為で問われる罪とは? 実例を交えながら解説

2021年08月12日
  • その他
  • 撮り鉄
  • 迷惑行為
「撮り鉄」の迷惑行為で問われる罪とは? 実例を交えながら解説

鉄道の撮影を趣味とする、いわゆる「撮り鉄」のマナー違反が大きな社会問題として注目されています。

平成28年には、栃木県の第三セクター鉄道である真岡鉄道の線路と並行して植えられている菜の花畑を写真愛好家が荒らしている問題について、真岡鉄道側がSNSで「もう来ないで下さい」と投稿し、賛否両論が集まりました。
令和3年4月には埼玉県内の駅構内で撮り鉄同士がトラブルになり、男子中学生が押し倒されて頭蓋骨骨折の重傷を負う事件も発生しています。加害者も未成年の撮り鉄で、傷害の疑いで逮捕されました。

「もっと近くで撮影したい」「最高のアングルで鉄道の姿をおさめたい」と夢中になっているうちに、思わず迷惑行為をはたらいてしまうケースは少なくありません。鉄道撮影中の迷惑行為で問われる罪について、ベリーベスト法律事務所 宇都宮オフィスの弁護士が解説します。

1、「撮り鉄」とは

鉄道愛好家を呼ぶ際は、嗜好(しこう)によってさまざまな俗称が用いられています。
鉄道の姿を撮影する写真愛好家は「撮り鉄」と呼ばれており、昨今のブームやトラブル事例と相まって、よくも悪くも鉄道愛好家の代名詞として広く知られるようになりました。

鉄道愛好家を指す俗称としては、ほかにも、各地の鉄道路線や車両に乗ることを趣味とする「乗り鉄」、鉄道グッズを集めるのが好きな「収集鉄」、鉄道模型の収集家は「模型鉄」、発車メロディーや構内放送・車内アナウンスの録音を趣味とする「音鉄」などの種類があります。

2、撮り鉄が起こしたトラブルの事例

撮り鉄は、写真撮影を理由にさまざまな迷惑行為をはたらいていることが強く批判されています。
ここでは、撮り鉄が起こしたトラブルの実例を紹介しましょう。

  1. (1)引退した車両を撮影するために線路に立ち入った事例

    撮り鉄が起こす典型的なトラブルが、線路への侵入です。

    令和3年3月には、定期運行を終了した車両の引退回送を撮影するために集まった撮り鉄が線路内に立ち入り、立川駅から日野駅間を運行中の列車が約26分間にわたって停止する事態になりました。

    同年1月には、引退した小田急電鉄特急ロマンスカーの車両を撮影する目的で男子高校生数名が線路内に立ち入り、家庭裁判所送致される事件も起きています。

  2. (2)キセル行為を通報されて報復した事例

    平成27年6月、東京駅から金沢駅までキセル乗車をはたらいたことを通報された腹いせに、通報した少年らに暴行を加えたうえで、デジタルカメラなどを脅し取った撮り鉄の少年らが強盗の疑いで逮捕されました。

    逮捕された少年たちは、「キセル通報は撮り鉄のタブー」という身勝手な動機を供述していたとのことです。

  3. (3)列車内で鉄道部品を盗んだ事例

    西武新宿線の本川越駅構内に侵入し、電車の表示板をすでに廃止された表示に細工した少年が器物損壊、建造物侵入の疑いで逮捕されました。
    「撮影してめずらしいものを他人に見せたい」という欲求から、表示板を廃止された表示に変えたとのことです。
    さらに少年は、電車内から合図灯を盗んだ窃盗の疑いもあり、家庭裁判所に送致されています。

3、撮り鉄の迷惑行為で問われうる罪

撮り鉄が犯してしまう迷惑行為の多くは、犯罪に該当する可能性があります。
線路や駅構内などへの無断侵入、駅係員への妨害行為等で問われる罪を挙げていきましょう。

  1. (1)鉄道営業法違反

    鉄道の線路や停車場などにみだりに立ち入ると、鉄道営業法37条の違反する可能性があります。
    鉄道営業法は明治33年に制定された非常に古い法律です。
    そのため、同法の罰則については罰金等臨時措置法という別の法律が適用され、法定刑は1000円以上1万円未満の科料となります

  2. (2)建造物侵入罪・住居侵入罪

    駅構内は乗車券や入場券を購入することで自由に立ち入ることが可能ですが、運行時間外は入場が禁止されているため、正当な理由なく入場すれば刑法130条前段の建造物侵入罪に該当するおそれがあります。
    また、撮影を理由に許可なく他人の住居の庭に侵入するなどの行為があると、同条の住居侵入罪に該当する可能性があります。

    法定刑は3年以下の懲役、または10万円以下の罰金となります

  3. (3)威力業務妨害罪

    撮り鉄の撮影行為を制止した駅係員に対して暴行を加えたり暴言を吐いたりすると、刑法234条の威力業務妨害罪が成立するおそれがあります。

    威力業務妨害罪でいう「威力」とは、人の意思を制圧するに足りる勢力のこととされており、暴力行為などの有形力に限定されません。
    大勢の撮り鉄で取り囲む、「邪魔をするな」「どけ」などと怒鳴る、などの無形力も「威力」にあたる場合があります。

    威力業務妨害罪の法定刑は3年以下の懲役または50万円以下の罰金です

    なお、駅係員や周囲の客に対して暴力を加えて怪我をさせた場合は、傷害罪にも問われるおそれがあります。
    傷害罪の法定刑は15年以下の懲役または50万円以下の罰金です。

  4. (4)過失往来危険罪

    撮影行為に夢中で線路に脚立などを落としてしまうなど、過失によって鉄道の往来に危険を生じさせた場合は、刑法129条1項の過失往来危険罪に問われる可能性があります。
    法定刑は30万円以下の罰金です

  5. (5)刑事罰以外の責任

    迷惑行為によって鉄道の運行を停止・遅延させた、車両や駅構内の設備を損壊した、駅係員や周囲の客を負傷させたなどの損害を与えた場合は、刑罰のほかにも、民事上の損害賠償請求を受けるおそれがあります。

    ラッシュ時に大幅な遅延を生じさせて多数の乗客に迷惑をかけた、相手に重症を負わせたといったケースでは、多額の請求を受けることも覚悟しなければなりません。

4、迷惑行為で逮捕された場合の流れ

鉄道の撮影中に迷惑行為をはたらいてしまい、警察に逮捕されてしまうと、その後はどのような流れになるのでしょうか?

  1. (1)逮捕による身体拘束

    警察に逮捕され、身体拘束されると、その時点で自由な行動は大幅に制限されます。
    自宅へ帰ることも、会社や学校へ通うことも、家族や友人に電話連絡することも許されません。

    犯行の動機や経緯、自分自身の身上経歴などについて言い分を聞かれたのち、逮捕から48時間以内に検察官へと事件が引き継がれます。
    この手続きを「送致」といい、ニュースなどで言う、「送検」と同じ意味です。

    検察官は、送致を受けた段階から24時間以内に勾留を請求するか、あるいは釈放しなければなりません。

    身体拘束から勾留請求までの72時間は、面会が認められるのは弁護士だけであり、たとえ家族であっても逮捕された本人との面会が認められません

  2. (2)勾留による身体拘束

    検察官の勾留請求を裁判官が認めると、勾留による身体拘束を受けます。
    原則10日間、延長請求が認められるとさらに10日間の合計20日間にわたる身体拘束を受ける可能性があります

  3. (3)起訴されると刑事裁判になる

    勾留が満期を迎える日までに、検察官は起訴・不起訴の最終決定を下します。

    検察官が起訴すれば被告人として刑事裁判を受けることになり、刑事裁判では有罪あるいは無罪の判決、有罪の場合にはどのような刑罰かが決まります。

    一方で、検察官が不起訴処分を下すと、直ちに釈放されます。
    この場合、前歴にはなりますが、刑罰を受けたり、前科がついたりすることはありません。

    検察官が不起訴処分を下す理由には、「嫌疑なし」や、刑事裁判で有罪判決を得るだけの証拠がない「嫌疑不十分」があります。

    また、起訴猶予という理由もあります。これは、有罪判決を得るだけの証拠はそろっているものの、被害者との示談が成立しているなどの諸事情を考慮して起訴しないというものです。

    実際に迷惑行為をはたらいてしまった事実があるのなら、刑事裁判で争っても無罪判決は期待できません
    早期の身体解放や厳しい刑罰の回避を期待するなら、弁護士に依頼して鉄道会社や迷惑をかけてしまった相手との示談交渉を検討すべきです

5、まとめ

「撮り鉄」による迷惑行為が大きな問題として強く批判されているなか、鉄道会社や警察は撮り鉄に対する警戒を強めているため、迷惑行為があれば厳しい対応を受けることになるでしょう。
撮影に夢中であっても、鉄道の運行や駅係員の業務を妨げたり、立ち入り禁止の場所や他人の敷地などに立ち入ったりする行為は犯罪にあたる危険があります。

鉄道の撮影中に迷惑行為をはたらいてしまい、刑事事件に発展してしまった場合は、早急に弁護士に相談しましょう。

逮捕や厳しい刑罰を回避したいと考えるなら、ベリーベスト法律事務所 宇都宮オフィスにお任せください。円満な解決に向けて全力でサポートします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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