自己破産したら税金も支払わなくていいのか? 弁護士が回答します

2019年10月16日
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自己破産したら税金も支払わなくていいのか? 弁護士が回答します

宇都宮市では、税金を滞納した人から差し押さえた財産をインターネットオークションや公売会などで、売却しています。税金を滞納して放置すると、一括請求されたり財産を差し押さえられたりするなどの強硬な措置を取られることがあります。

そこで、今回は自己破産と税金の関係、税金を滞納した場合の対処法をベリーベスト法律事務所 宇都宮オフィスの弁護士が解説します。

1、税金を滞納するとどうなるのか

まずは税金を滞納すると何が起きるかを説明します。税金の種類によりますが、住民税や国民健康保険料などの地方税は、滞納してから数週間から1ヶ月程度で督促状が届きます。口座振替による納入を選択している場合は、翌月に2ヶ月分が引き落とされることもあります。

督促状を放置しておくと催告書という書類が送られてきます。電話による督促は行われる自治体とそうでない自治体があるでしょう。これらの督促を放置していると最終的に預貯金や財産が差し押さえられます。

銀行口座の預貯金や、支払われる給与や退職金も差し押さえの対象です。税金の差し押さえには、通常の借金のような裁判所への申し立てが必要ないため、滞納してから早い段階で差し押さえられるケースもあります。

銀行口座が差し押さえられる場合は、預貯金の残高が滞納している税金の額に満たない場合は、滞納額全額を回収できるまで、差し押さえが続きます。

2、税金も自己破産できる?

税金の滞納額が膨らんでしまい、支払えない状態になると「自己破産」で税金の支払いを免除できないものかと考える方が少なくありません。

しかし、残念ながら税金の自己破産は不可能です。なぜなら、税金は「非免責債権」と位置付けられていて、債務の免責効果が及ばないからです。税金以外にも、健康保険の保険料や養育費、損害賠償なども自己破産で支払いが免除されることはありません。

ただし、税金の支払い義務がなくなるケースがあります。それは、時効が成立したときと、滞納処分が停止されて3年が経過したときです。

●時効が完成すると支払い義務がなくなる
税金の時効は、「3年・5年・6年・7年」の4種類があります。年末調整や確定申告などで期限内に申告を行っている場合の時効は3年です。確定申告であれば、申告書を提出してから3年で税金の時効が完成します。ただし、それまでの期間に督促状などが送付されていれば時効のカウントが一旦停止されてしまいます。

●滞納処分が停止されてから3年が経過すると支払いが免除される
生活保護を受けている、など一定の条件を満たすと税金の滞納処分を猶予してもらえる制度があります。それが3年経過すると税金の支払い義務が免除されます。

原則としてこれらの例外を除いては、税金の支払いが免除されることはないと考えてよいでしょう。

3、税金の支払いが滞りそうになったときにできること

税金の支払いは自己破産などで免除されることはありません。しかし、延滞に対して「放置」さえしなければ、比較的温情をもった対応をしてもらえます。

ここでは税金を滞納しそうになったとき、滞納してしまったときにすべき対処法を解説します。

  1. (1)放置厳禁! まずは連絡すること

    税金を滞納した場合、最もやってはいけないことは督促を「放置」することです。

    放置してしまうと、最終的には財産を差し押さえられてしまいます。たとえ今は支払えなくとも、できるだけ早く連絡を取り、税金を支払う意思があることを伝えましょう。税金は、そのほかの借金とは異なり柔軟な対応をしてくれる自治体や担当者が少なくありません。

    支払えなくなった事情と支払う予定を伝えることで、差し押さえなどの処分を待ってもらえる可能性があります。

  2. (2)現状の収支を把握して支払える金額を計算する

    税金を滞納しそうになった場合は、現在の収入と支出を記録して支払える金額を計算してみましょう。支出を細かく記録することで無駄が見えてきて、税金を支払える余地が生まれるかもしれません。出費の中に借金の返済がある場合は、借金自体の自己破産などの債務整理を検討するとよいでしょう。

  3. (3)分割払いを相談する

    自分の収入が把握できたら、役所で分割払いが可能かどうかを相談しましょう。多くの役所で、税金の分割払いを受け付けています。長期にわたって滞納されてしまい、納税不可能な金額にふくれあがってしまうよりも、少額でも納税を続けたほうが確実に税金を徴収できるからです。

  4. (4)自己破産後は納税の猶予をしてもらえる

    経済的に困難な状況にある場合は税金の支払いを1年間猶予してもらえる制度があります。

    「経済的に困難」の条件は自治体によってさまざまですが、自己破産をしたという事実は、経済的困難な状況と認められる可能性が非常に高いと考えられます。自己破産後も税金の支払いが難しい場合は、役所で納税の猶予を申請しましょう。

4、自己破産以外に借金問題を解決できる方法はある

税金の滞納で悩んでいる方の多くが金融機関などからの借金の返済にも苦しんでいます。借金の返済さえなければ、分割して税金も支払える可能性があります。その場合は借金を整理する方法を検討しましょう。

  1. (1)自己破産

    借金を整理する代表的な方法は「自己破産」です。自己破産を行うと、すべての借金の支払いが免除されるため、税金を支払う余裕が出てくるでしょう。士業や生命保険の募集人、警備員などの一部の職業以外は自己破産をしても影響はありません。返済する余裕がほとんどない方は自己破産を最優先に検討することになります。ただし、家や土地などの財産がある場合は処分されてしまうので注意が必要です。

  2. (2)個人再生

    家や土地などの財産を手放したくなく、一定の定期収入がある方は、「個人再生」を検討しましょう。個人再生とは、土地や家などの財産を手元に残しながら借金を支払える金額に減額する手続きです。裁判所に申し立てをして、それが認められると3年から5年で無理なく返済できる金額に借金が減額されます。

  3. (3)任意整理

    裁判所への申し立てが不要で、それぞれの債権者と交渉して返済金額や金利を減額することを「任意整理」といいます。任意整理では、利息制限法を超えた金利で借り入れをしていた場合に、金利を計算し直して元本を減額することができます。利息制限法を超える金利で借金をしていた方は過払い金の清算を同時に行うことで債務がゼロになる可能性もあるでしょう。
    もっとも、適法な金利で借り入れをしていた場合に、元本を大幅に減額することは難しいといえます。

5、弁護士に相談するメリットとは

税金を滞納している方は、目前の滞納した税金問題や、借金などの対策で頭がいっぱいになり最適な対策を取れないことが少なくありません。役所に連絡をすれば「叱られるのではないか」と問題を先送りしてしまいます。

そして、気づいたときには預貯金の差し押さえなどの措置が取られてしまいます。そうならないためには、なるべく早い段階で弁護士に相談することが大切です。ここでは弁護士に相談するメリットを説明します。

  1. (1)債務整理を依頼すると借金の督促が止まる

    税金以外にも借金を滞納している場合は、弁護士に債務整理を依頼することで、債務整理が完了するまでは、借金を返済する必要もなくなりますし、借金の督促もストップします。つまり、借金のことばかり考える生活から解放されるのです。

  2. (2)借金の返済に充てていたお金を税金の支払いに回せる

    弁護士に債務整理を依頼することで、借金の返済が猶予されます。その結果、税金を支払うことができる可能性が出てきます。

    一般的に、借金の返済が滞った場合の督促より、税金の督促のほうが穏やかです。借金は電話などで頻繁に督促されますが、税金は文書による督促がほとんどです。しかし、税金は借金よりも簡素な手続きで財産の差し押さえが可能なので、早い段階で財産を差し押さえられる可能性があります。

    これまで、借金の返済に充当していたお金を税金の支払いに充当できれば、全額支払えなくても、財産の差し押さえなどの措置が取られる可能性が非常に低くなるでしょう。

  3. (3)複雑な手続きをすべて依頼できる

    債務整理の手続きは、個人再生や自己破産、任意整理などそれぞれに必要な書類が多く複雑なので、個人で行うのは非常に困難です。しかし、弁護士に依頼することによって、あなた自身が法律を勉強しながら手続きをする必要がないだけでなく、スムーズに債務整理が行えます。

    依頼した段階ですべての借金問題から解放されるので、日常感じていたストレスが大幅に軽減されるでしょう。

6、まとめ

税金を滞納して借金問題を抱えている方は、ひとりで悩まずにまずは弁護士に相談しましょう。税金の滞納は自己破産によってゼロにすることはできませんが、借金を整理することで借金の督促や返済が止まり、税金を支払えるようになります。

税金は、役所に相談すれば支払える範囲に分割してもらうことも可能です。まずは、そのほかの借金を整理して身軽になることをおすすめします。そのために行える手続きである「債務整理」は、弁護士に依頼すれば、自分で複雑な書類を記載する必要もありません。面倒な手続きも不要です。

ベリーベスト法律事務所 宇都宮オフィスでは、しっかりお話を伺った上で、あなたにとって何が最適なのかを的確にアドバイスします。借金問題や税金滞納で苦しんでいる方は、まずは税金の滞納や借金問題に対応した実績が豊富な弁護士に相談してください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています