離婚する場合、ペットはどうなる? 養育費はもらえるのか弁護士が解説

2020年01月29日
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離婚する場合、ペットはどうなる? 養育費はもらえるのか弁護士が解説

財産のことや子どものこと、離婚の際はさまざまな権利の帰属を話し合うこととなりますが、人間だけが家族と限りません。愛犬や愛猫などペットがいる場合には、どちらが育てるのかという点も必ず議題に上がることでしょう。しかし、意外かと思われるかもしれませんが、ペットは人間のように「親権」を争うものではありません。

本記事では離婚する場合のペット引き取りについて、宇都宮オフィスの弁護士が解説します。

1、離婚の際にペットの「親権」は争える?

大切な家族であるペットと一緒に暮らせることは、今後の生活における大きな論点と言えます。しかしペットは人ではないため、人と同じ法律が適用されることはありません。いったいどうやってペットの親権ないし養育権を話し合えば良いのでしょうか?

  1. (1)ペットは「財産」。親権は争えない

    動物愛護法などが存在するものの、そもそもペットと飼い主には親子関係がないことから、ペットの親権を争うことはできません。ペットは人ではなく、法律上は「物」として、財産という扱いになります。

    一応、ペットの名義は引き取った側となりますが、人間の家族とは違い、戸籍に載せることはありません。法律上の親子関係が存在しない以上、裁判などで親権を争うことはできないのです。

  2. (2)ペットを引き取った場合の財産分与について

    ペットが法律上「物」として扱われることから、ペットについては、親権でなく財産分与の問題となります。財産分与とは本来、財産が少ない配偶者が財産を持っている配偶者に共有財産の分配を請求できる制度ですが、ペットはどのように評価すれば良いのでしょうか?

    ペットはペットショップで売買されている関係から、値段は時価で判断されます。最後は総合的な観点から評価されるとしても、時価という基準は覚えておいて損しないでしょう。ちなみに評価額は、成長したペットほど安くなる傾向にあります。

    いずれにせよ、財産を受け取る側の配偶者がペットも引き取る場合、ペットの時価にあたる金額を受け取ったものと扱われることを覚えておきましょう。ただし、ペットを引き取ることがすなわち財産分与で不利な扱いを受けるとは言い切れないのが難しいところです。

  3. (3)ペットの「養育費」はどうなる?

    ペットは財産ですが、餌や遊具、診療など、もろもろの費用がかかるため、「負債」の側面もあります。
    つまり、ペットを引き取るとペットの時価分を得ることになりますが、そのあとにかかる費用を一人だけで負担するのが果たして公平と言えるのか、となるのです。そこで、ペットを負の財産として、ある程度財産分与で融通することが考えられます。

    つまり、人間の子どもでないため、養育費のような決まりや基準はないものの、ペットを育てる費用について自由な取り決めをすることは可能というわけです。

  4. (4)ペットとの「面会交流」をしたい

    ペットが配偶者に引き取られていったとしても、大切なペットに会いたい気持ちはよくわかります。ところがペットの面会交流権については、とくに法律で決められていません。それではどうすれば良いのか、悩みどころに思えますね。

    結論から申し上げれば、夫婦が自由に決めることができます。極端な話、会いたいと思うタイミングで会いにいくことが可能です。むしろ問題となるのは、配偶者同士が二度と会いたくないと考えている場合でしょう。その場合は、配偶者の面会とペットの面会が同じ論点となることが予想されます。

  5. (5)どちらもペットを引き取ることができないなら

    ペットを夫婦の双方が育てているという場合は少なくないと思います。そのため、離婚を理由にペットの世話をすることができなくなる可能性も考えられます。言うまでもなく、ペットを捨てることは論外です。動物愛護法違反となります。

    ペットを育てられない時は、保健所や動物愛護センター、その他動物愛護団体に引き取ってもらいましょう。引き取られたペットは、その団体で飼われるか新しい飼い主の元へ行きます。せっかくですから動物を大切にしてくれるところを探しましょう。信頼のおける親戚や友人に引き取ってもらうのも選択肢のひとつでしょう。

2、離婚の際ペットの所有権はどのように決まる?

前述したとおり、離婚した場合のペットの帰属は財産として決められます。そのためペットの場合は親権でなく、所有権が問題となります。離婚した後のペットの所有権について特別に定めた法律はなく、自由な合意によって決められることが望ましいです。

ここではいざ争いになったとき、どのような判断基準があると公平に近づくのか紹介します。

  1. (1)ペットを買ったのは誰か

    物は、購入した方の所有となります。不動産でも動産でも、実際に使っている方だけで所有権が移転することはあり得ません。ペットの場合も同様で、ペットを購入し市町村に畜犬登録した人が所有者と考えることが前提です。

    しかし、夫婦や家族の場合は、個人よりも家族全体の共有物として購入したことが考えられる上、その後ペットとどのような関係を築いたかも重要な要素になることが予想されます。少なくとも「買ったけど世話は全くしていない」と言う場合は、ペットの引き取りは難しくなるでしょう。

  2. (2)ペットを育てたのは誰か

    ペットの費用は購入費だけではありません。実際に家でペットを育てていたのが誰かも問われます。物と言ってもペットは生き物ですから、ペットの福祉や養育への寄与度を考えるのは当然と言えます。
    ペットにとっては、かいがいしく世話をしてくれる配偶者の方が安心です。そのため調停や訴訟になった時も、所有者だけでなく飼育者としての適格性が問われるはずです。

  3. (3)ペットはどちらになついているか

    むなしい話ですが、たくさん世話をしていてもなつかれない場合があります。なついている配偶者の方がペットの所有権争いにおいて有利となることが考えられます。

  4. (4)ペットを今後も育てることができるのか

    ペットの福祉を考えるなら、過去だけでなく未来を見据えることも大切です。ペットを今後も育てられる配偶者が有利になります。
    たとえば、仕事でずっと家を空けているからペットを世話できない、ペット不可の建物に引っ越すなどと言う場合にペットの所有権を得ても、配偶者・ペット共に不利益です。

    ペットを育てていくだけの経済力も考慮されますが、経済力が不十分である場合は財産分与でペットの飼育費用を融通してもらえる可能性があります。諦めないでください。

  5. (5)これまでの生活を広く考慮して決めよう

    ペットの所有権は、無生物ほど簡単には決められません。夫婦の財産分与については、一切の事情を考慮して決めることが求められているので、総合的な話し合いをしましょう。

3、ペットの帰属を含めた離婚の進め方

離婚にはさまざまな論点がありますが、おおむねは離婚するか否か、財産分与はどうするかと言うところが重要です。ペットの帰属を含め、離婚がどのように進んでいくのか紹介します。

  1. (1)離婚の多くは協議によって解決される

    離婚自体は、お互いの合意で離婚届を書き、証人にも認めてもらえば、役所に届けて終了です。しかし、婚姻関係を解消するだけが離婚ではありません。そもそも、相手が離婚に合意するかどうかもわからない場合もあるでしょう。

    一般的には離婚に際し、離婚協議書というものを作成します。離婚協議書は婚姻解消に基づき、さまざまな権利義務の帰属または新たな権利義務の発生について取り決める契約書です。

    協議離婚の注意点は、お互いに感情をぶつけあわないようにすることです。ペットなど、経済的利益だけで片付けられない問題は離婚を面倒にしやすいので、冷静な協議を心がけてください。

  2. (2)ペットに対する取り決めも原則は自由

    離婚協議書の取り決めは夫婦間の合意によってなされますので、基本的に自由です。財産分与や年金分割、親権や面会交流権など、公序良俗に反したものではないと判断されれば基本的に有効となります。
    ペットに対する取り決めも自由で、養育費について餌の費用だけ、病院の費用だけと言った決め方もできます。

  3. (3)協議がまとまらなければ調停離婚

    夫婦による協議がまとまらなければ、調停による離婚を行います。調停では、有識者である調停委員を交えて話し合いを行います。調停の結果が調停調書として出るので、この調書に合意すれば落着、合意できなければ訴訟に移行することができます。

  4. (4)話し合いの解決が不可能なら訴訟

    話し合いの解決が不可能な場合は、訴訟が唯一の手段となります。訴訟はさまざまな事情を裁判所が判断し、判決として離婚の可否やその他の取り決めがされます。

  5. (5)ペットも絡む離婚問題は弁護士に相談を

    家庭の不和は家の数だけ問題があるものです。ペットが大事なあまりに、所有権については話し合いも感情的になりやすくもあります。そういうときは弁護士に依頼をすることを考えてみましょう。第三者が間に入ることで冷静に話し合える可能性が高くなります。
    また、もし調停・訴訟となった場合、法的な知識も必要になってきます。弁護士であればこうした場合にも、依頼者の代理人として諸手続きの対応等をしてくれます。
    財産分与などについても、不利にならないようにアドバイスなどをしてくれますので、まずは相談から始めてみることをおすすめします。

4、まとめ

家族のように大切なペットでも、法律上は物として扱われます。しかし、ひとつの生命としてペットの福祉が考慮されることも知っておきましょう。
ペットの問題も含め、すっきりとした離婚をしたいなら、ベリーベスト法律事務所 宇都宮オフィスでご相談ください。経験豊富な弁護士があなたをサポートします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています