住宅ローンの連帯債務を解決したい! 離婚する夫婦が知るべきポイント

2021年02月04日
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住宅ローンの連帯債務を解決したい! 離婚する夫婦が知るべきポイント

宇都宮市の発表によると、令和元年に離婚をした夫婦の数は3181組、前年よりも89組も離婚した夫婦が増加しています。総務省統計研修所が発表した統計によると、平成22年の古いデータではありますが、2人以上世帯のうち、住宅ローンを支払っている世帯は全体の28%だといわれています。離婚を検討している夫婦に当てはめるのは、いささか乱暴ではありますが、単純に計算をすれば4分の1以上の夫婦が住宅ローンを抱えていることになります。

住宅ローンの残債がある場合の離婚は比較的手続き、交渉が複雑になりますので、離婚前にしっかりと把握しておかなければなりません。特に、配偶者との連帯債務で住宅ローンを契約している場合は注意が必要です。そこで、本記事では宇都宮オフィスの弁護士が住宅ローンを連帯債務型で契約しているとき、離婚をする場合に知っておくべきポイントを解説します。

1、まずは確認! 住宅ローンの連帯債務とは?

離婚を検討している方の中には、夫婦の一方だけでなく2人が何らかの形で協力をしてローンを組んでいるケースは少なくありません。夫婦の協力によって契約をする住宅ローンにはさまざまな種類があります。まずはその種類を確認しておきましょう。

ご自身の契約タイプがどのタイプかをご確認ください。

  1. (1)連帯保証型

    連帯保証型とは、夫婦の一方が「主たる債務者」となり、もう一方が「連帯保証人」となるタイプの住宅ローンです。連帯保証人タイプの場合、住宅ローンの支払いが滞った場合は、連帯保証人が返済する義務を負います

  2. (2)連帯債務型

    連帯債務型の住宅ローンとは、夫婦のいずれかが「主たる債務者」、もう一方が「連帯債務者」になります。連帯債務者型の場合、夫婦のいずれもローン全額に対して返済する義務を負うことになります

  3. (3)ペアローン型

    ペアローン型とは、夫婦がそれぞれ住宅ローンを契約する方式の住宅ローンです。住宅と土地の価格の合計が、5000万円だった場合、夫が2500万円、妻が2500万円というようにそれぞれが住宅ローンを契約します。夫、妻ともにローン契約者となりますので、それぞれが返済をしなければなりません

  4. (4)単独契約型

    単独契約型とは、夫婦のいずれかが主契約者となり、保証人は保証会社等を利用するタイプの住宅ローンです。夫や妻、単独の収入で住宅ローンの審査が通りそうな場合はこのタイプを選択することが多いでしょう。

2、連帯債務者が離婚するときにおきること

連帯債務型の住宅ローンを契約している方が、離婚する場合の支払い義務や発生しやすいトラブルについて解説します。

  1. (1)住宅ローンの返済義務はそれぞれにある

    離婚をして夫婦ではなくなった場合も、離婚については第三者である金融機関に対しては、離婚の際の合意の効力は及びませんので、連帯債務契約は無効にはなりません。したがって、住宅ローンの支払いが滞った場合には連帯債務者が返済をする必要があります。

    夫が主契約者で、妻が連帯債務者という場合、夫が家を離れ妻が住み続けたとしても、夫の支払い義務が免じられることは、原則としてありません

  2. (2)住宅ローンの契約を変更せずにいた場合に起こるトラブル

    主契約者である夫が家を出て、連帯債務者である妻が家に残るという選択をした場合、次のようなトラブルに遭遇するおそれがあります。

    ・退去後に相手方の返済が滞った場合に返済をしなければならない
    家を出た夫は主契約者であるものの家には住まないため、妻が住宅ローンを支払う約束をすることになった場合に発生するトラブルは「弁済期徒過による期限の利益の喪失」です。妻の返済が滞った場合は、金融機関から夫、妻ともに請求を受けることがあります。

    いくら夫が、「元妻が支払う約束をしているから、そちらに請求してほしい」と金融機関に主張しても、主たる債務者でもある夫は妻と共に債務を負ったままです。

    ・信用情報機関に住宅ローンの情報が残るため、新規の住宅ローン契約が難しくなる
    住宅ローンの契約を変更せずに離婚をした場合、ローンの情報が信用情報機関に登録されたままですので、家を出た主契約者が新たに住宅ローンを組むことが難しくなることがあります。新たにローンを組もうとすると、再度のローンになるため、審査が通りにくくなるからです。

    また、ローンの返済が滞った場合も、原則として信用情報機関に遅延情報が登録されますので、住宅ローン以外の、クレジットカードやカードローンの契約にも影響が出ることがあります。

    ・ローンの返済と家賃を2重で支払わなければならない可能性がある
    住宅ローンの契約をそのままに夫が家を出て、妻が暮らす家のローンの支払いも夫がしなければならない場合、夫はローンと家賃を支払うことになります。

    離婚後の住まいの規模にもよりますが、二重に支払うことになれば、金銭的負担は増大することになります。

    ・双方ともにローンの返済ができない場合は、家を競売にかけられる
    夫、妻ともにローンの返済ができなくなった場合は、抵当権の実行等により、家が差し押さえられ、競売にかけられると、手放さなければならなくなります。夫が家を出て、妻と子どもが家に残っていると、妻と子どもが住む場所を失うことになります。

    夫婦の収入を合算してローンの返済をしていた場合には、きちんと支払えるかどうかをシミュレーションしておかなければなりません。

    ・離婚後もやりとりをしなければならない
    住宅ローンの契約を変更せずに、離婚をした場合、離婚後も元配偶者と連絡を取らなければならない状況が生じます。

    住宅ローン控除のための書類のやりとり、返済遅延の場合の督促、ローンの借り換えや一括弁済によるローン名義人からの離脱など、離婚後の関わりをなかなか絶つことができないので、双方にとって大きなストレスとなることがあります。

3、連帯債務から抜ける方法

離婚後の住宅ローンに関するトラブルを回避するためには、住宅に住まない側が連帯債務から抜けることです。ここでは夫が連帯債務から抜ける方法を解説します。

  1. (1)住宅ローンの契約を変更

    連帯債務契約の場合、多くのケースで夫が主契約者、妻が連帯債務者となっています。妻を主契約者とし、新たに連帯債務者を設定できれば、夫は住宅ローンを返済する必要はなくなります。

    ただし、住宅ローンの残債務額にもよりますが、妻に返済できるだけの収入がなければ金融機関の了承を得ることは難しいでしょう。基本的には、住宅ローンの契約変更は困難と考えておいた方がよいでしょう

  2. (2)住宅ローンの借り換え

    住宅ローンを、妻名義で借り換えることができれば、夫は借り換え以降に返済する必要はなくなります。この場合、妻が住宅ローンの審査を通過しなければならないので、妻に一定の収入が必要です。また、金融機関によって、借り換えについての審査や条件は異なるので、借換先の金融によって、取るべき手段が変わります。

  3. (3)住宅ローンを一括返済する

    住宅ローンを一括返済して、ローンの残債をゼロにすれば住宅ローンに関するトラブル見舞われることは少なくなるでしょう。ただし、その場合はローンを一括で返済できるだけの資力が必要となります。

    たとえば、住宅ローンの残債が2000万円、夫婦の共有財産として預金が4000万円あれば、財産分与で預金を2000万円ずつわけることになります。妻が、そのお金で住宅ローンを一括返済して住宅の名義を妻に変更しておけば、住宅ローンに関する問題から解放されます。ただ、この場合は、自分の借金を返したことと同視できる行為ですから、できる人は限られるかもしれません。

  4. (4)住宅を手放す

    夫が家を出て、妻と子どもが家に残りたい場合はどうしても住宅ローンの問題が立ちはだかります。妻への住宅ローンの名義変更ができなかった場合の手段として検討しておきたいのは、住宅の売却です。ローンの残債務額よりも、住宅の価値が高い「アンダーローン」の場合には、売却してローンを完済しても、手元に一定の現金が残ります。

    ローンの残債よりも住宅の価値が低い、「オーバーローン」の場合は、住宅を売却してもローンを完済できないため、ローン残債務額については返済を継続しなければなりません。それでも、毎月の負担が軽減されたり、返済期間が短くなったりといったメリットもあります。

4、住宅ローンなどの離婚に関する相談は弁護士へ

離婚時の住宅ローンの取り扱いは、ケース・バイ・ケースで取るべき対応が異なります。連帯債務型の住宅ローンの場合は、契約を放置してしまい、さまざまなトラブルが生じるリスクがありますから、離婚前にしっかりと協議し、取り決めておくことをおすすめします。

場合によっては、ローンの借り換えや、自宅の売却も視野に入れる必要があるでしょう。これらの手続きは煩雑であるだけでなく、当事者では最適な解決方法がわからないことがほとんどです。そこで、債務型の住宅ローンの残債務がある場合には、離婚前に弁護士に相談したほうがよいでしょう。税金について気になることがあるときは、税理士と連携して対応できる弁護士に依頼したほうがよりスムーズに相談を進めることができます。

弁護士であれば、双方の状況を適切に把握した上で、具体的な解決方法を提案することができます。まずはお気軽にご相談ください。

5、まとめ

離婚時の住宅ローンの取り扱いにお困りの方は、ベリーベスト法律事務所 宇都宮オフィスの弁護士にご相談ください。

ベリーベスト法律事務所では、お客さまの経済状況や、住宅の価値、ローンの残債などを総合的に判断した上で、最適な解決策をご提案しております。グループ内には弁護士だけでなく宅建士や、司法書士、ファイナンシャルプランナー、税理士など、不動産やライフプランの専門家や、税金の専門家も所属しております。ワンストップでのご依頼、ご対応が可能です。あなたが今抱えている問題を適切に解決できるよう、サポートします。

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