離婚時に起こりやすい住宅ローンの問題とは? ローンの種類やトラブル解決方法を解説
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「平成25年住宅・土地統計調査」(総務省統計局)によると、栃木県民の持ち家率は70.6%を占めます。
そして、栃木県内の1住宅当たりの敷地面積の平均は375.17平方メートルで、全国で4番目に広い敷地面積を誇っています。
このような統計からも、栃木県内では広いマイホームを購入して生活している方が少なくないことがうかがえます。
マイホームは幸せの象徴である反面、離婚の際には住宅ローンが問題になることがあります。問題を解決するためには、まずどのような種類の住宅ローンを組んでいるかを把握しておくことが大切です。
本コラムでは、住宅ローンの種類を解説しつつ、離婚時の住宅ローン問題の解決方法をベリーベスト法律事務所 宇都宮オフィスの弁護士が解説していきます。
1、住宅ローンの借入先は主に3種類
離婚を考えている方の中には、離婚後も引き続き家に住みたいけれども「住宅ローンに関する手続きは相手に任せていてほとんど把握していない」「住宅ローンを組んだことは覚えていても内容はほとんど覚えていない」という方もいらっしゃることでしょう。
そういった場合には、まずは住宅ローンの概要について理解し、ご自身がどのタイプの住宅ローンを組んでいるのかを把握することが大切です。
具体的には、実際の住宅ローンに関する契約書類をみたり、契約先の金融機関などに問い合わせてみると確実です。
住宅ローンは、借入先で分けると大まかに3種類に分けることができます。
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(1)民間金融機関の住宅ローン
銀行・信用金庫・信託銀行などの民間の金融機関がそれぞれ提供している住宅ローンです。
メリットは、金利や手数料の安い商品やオリジナルの保障を付帯した商品など数多くの商品の中から選ぶことができる点にあるといえるでしょう。 -
(2)公的機関の住宅ローン
会社員で財形貯蓄を行っている方は、公的融資による住宅ローンを勤務先や共済組合などが取扱窓口となり利用できる場合があります。
メリットは、公的融資であるため金利が比較的低水準である点などといえるでしょう。 -
(3)複数の金融機関が融資する住宅ローン
複数の金融機関が融資する住宅ローンには、「フラット35」などの商品があります。
「フラット35」は、住宅金融支援機構と民間の金融機関の共同融資により提供される商品として人気があるため利用されている方も多いことでしょう。
メリットは、長期固定金利を実現している点などにありますが、取扱窓口によって金利や事務手数料が変わります。
2、住宅ローンの金利タイプの種類とは
住宅ローンの金利タイプには、次のような種類のものがあります。
どの金利タイプを選択しているかによって、月々の返済額や返済期間などの返済計画が異なります。
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(1)変動金利型
変動金利型は、市場金利に連動する形で借入期間中の金利が変動するタイプの住宅ローンです。
変動金利型のメリットは、固定金利と比べると金利が低く設定されている点です。しかし金利に応じて最長でも5年おきに返済額が変わるので、当初の返済額より将来の返済額が高くなる場合があります。
なお、変動金利型の商品は、いつでも固定金利期間選択型に変更可能です。 -
(2)固定金利型
固定金利型は、借入から完済までの間の金利が固定されているタイプの住宅ローンです。「フラット35」は、代表的な商品です。
固定金利型には、完済まで金利が一律に設定されているものと期間ごとに段階的に金利が異なるよう設定されているものがあります。
固定金利型のメリットは、返済額が変わらないため返済計画が立てやすく金利上昇のリスクにも備えることができる点です。デメリットは、金利は他の金利タイプよりも高めに設定されている点や市場の金利が下がったときの利益を受けられない点が挙げられるでしょう。 -
(3)固定期間選択型
固定期間選択型は、借入当初の数年間は金利が固定され固定金利期間終了後に改めて金利を選択できるタイプの住宅ローンです。
金利が固定される期間や期間固定金利の利率などは、金融機関や商品の条件などによって異なります。
メリットは、借入期間中に金利を定期的に見直すことができるので、固定金利期間の終了時に金利が下降していれば返済額を減少できる可能性がある点です。デメリットは、固定金利期間の終了時に金利が上昇していれば、返済額が増加する可能性がある点です。
3、住宅ローン問題の解決までの流れとは
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(1)契約状況や不動産の登記を確認
住宅ローンの借入先や金利などの概要が把握できたら、具体的に誰が住宅ローンの債務者や連帯保証人になっているのかを契約書などから確認する必要があります。また、不動産の所有権は誰の名義になっているかについても、登記記録などから把握しておきます。
代表的なケースとしては、「夫が不動産の所有権者であり住宅ローンの債務者であるケース」があります。
そのほかにも、親が不動産の共有者となっているケースや夫婦で住宅ローンの連帯債務者になっているケースなどさまざまなパターンがあります。 -
(2)不動産の価値やローン残額を把握する
不動産をどうすべきか決めるための材料として、現在の不動産の価値や残っている住宅ローンがどれくらい残っているのか残額を把握しておく必要があります。
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(3)不動産をどうするかを決める
離婚後、住宅をどうするのかを話し合い、夫婦間で決める必要があります。
この場合、「離婚とともに家も売却して住宅ローンの残額を支払う」、「夫婦の一方が家に住み続ける」といった選択肢が考えられます。
問題が起こりやすいのは、住宅ローンの債務者や所有者が夫になっているにもかかわらず、離婚した後は妻がそのまま家に住み続けるようなケースです。
続いて、こういった場合の解決策をご説明していきます。
4、離婚後も妻が家に住み続けられるようにするためには
住宅ローンを夫名義で借りており不動産の所有権の登記も夫名義になっているケースで、離婚した後、妻が家に住み続ける場合には、次のような解決策があります。
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(1)妻が住宅ローンを借り換え、所有権者となる
この解決策は、妻に返済基準をクリアできる年収があることが前提となります。
夫名義の住宅ローンの残額について、妻が新たに申し込んだ住宅ローンで一括返済する形で借り換えは行われます。
当然、妻は銀行の審査に通らなければ住宅ローンを借り換えることはできないので、審査を通過するだけの収入が必要になります。
また、不動産名義も所有権移転登記を申請して、夫から妻名義に変更します。
この解決策をとることができれば問題が起こるリスクは抑えられます。しかし、長年専業主婦として夫を支えてきた妻などにとっては、借り換えに必要な安定した収入を得ることが難しい現状があります。 -
(2)住宅ローンや所有権者は夫のまま妻が住み続ける
(1)の解決策をとることができるケースは、そう多くはありません。
そのため、住宅ローンの支払いと所有権は夫のままにしておき、その分養育費の支払いを少額に設定するなどの方法で解決が図られることも少なくありません。
しかし、債務者が居住することを条件とする住宅ローンも多く、夫が離婚で家を去れば銀行から一括返済を求められるリスクがあります。
また、夫の経済状況次第で住宅ローンの返済がストップする可能性があり、夫の返済状況次第で最終的には銀行が設定した抵当権を実行され家を売却されるリスクもあります。
そして、夫がそのまま家の所有権を有しているのですから、他人に売却してしまったり、夫の別の債務の担保にされてしまうリスクもあります。
したがって、この解決策を取る場合には、リスクを避けるためにも離婚時に「強制執行認諾文言付き公正証書」を作成しておくなどの法的な対応が必要になります。
なお、「強制執行認諾文言付き公正証書」を作成しておくことで、将来的に夫が住宅ローンの支払いが滞った場合には、夫の給与などを差し押さえることができるようになります。
5、住宅ローン問題で悩んだときには弁護士にご相談を
離婚時の住宅ローン問題を解決するためは、住宅ローンの契約内容を理解するとともに、不動産の価値を把握する必要があります。
そして、配偶者と話し合って家をどうするのかを決める必要がありますが、配偶者との関係が悪化して、感情がもつれうまく取り決められないことも少なくありません。
そのような場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士であれば、ご相談者に代わって配偶者と交渉することができます。
また、離婚時には、住宅ローン問題だけでなく財産分与などのお金の問題をはじめ、子どもがいる場合には親権や養育費などの問題も取り決めていく必要があります。
弁護士はそういった問題の解決を図ることもできるほか、リスクを回避するためのアドバイスをすることができます。
つまり、離婚時の住宅ローン問題は、弁護士に相談することが最善の解決策ともいえるでしょう。
6、まとめ
本コラムでは、住宅ローンの種類の概要を見ていきつつ、離婚するときに生じやすいトラブルや解決方法について解説してきました。マイホームを保有している夫婦の場合、名義はどうするのか、住宅ローンはどう組みなおすのかなど、調べて取り決めていかなければならないことがたくさんあります。また、住宅以外にも、離婚するときには話し合って決めていかなければならないことはたくさんあります。
現在離婚を考えており、住宅をどうするかもめている、住宅問題をどのように話し合っていけばよいのかわからないと悩みを抱えているようでしたら、一度、ベリーベスト法律事務所宇都宮オフィスまでご相談ください。弁護士が住宅ローン問題をはじめ、さまざまな問題の解決に向けてサポートいたします。
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